「で、あたしが酔(よ)っぱらいに絡(から)まれてるとこ助(たす)けてくれて。でも、お礼(れい)も言えなかったの」
「あんた、何で一人でそんなとこ歩いてたのよ。気をつけなきゃダメじゃない」
「でも、人けのない所(ところ)じゃないと、どんな人だか分からないじゃない」
「なに考えてんの? あんたの方からストーカーを誘(さそ)ってどうすんのよ」
「だって…。そんなに悪い人じゃないと思うわ」
「ストーカーに良い人なんていないわよ。もう、二度とこんなことしないで。いい」
「うん。でもね…、あたし分かっちゃった気がする。たぶん、あたしを助けてくれた人よ」
「もう、何がよ?」
「だから、あたしのことずっと見てる人。だってその人、何となく見覚(みおぼ)えがあるもの」
「えっ、そいつがストーカーってこと?」
「きっとそうよ。今度(こんど)見かけたら声をかけてみようかなぁ」
「ダメよ、そんなこと。何されるか分かんないでしょ」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。それに、助けてもらったお礼を言わないといけないし」
「だったら、私も一緒(いっしょ)に行く。私から言ってやるわ。大事(だいじ)な親友(しんゆう)に付きまとうなって」
「やめて。そんなことしたら、もう会えなくなっちゃうわ。彼って、シャイなだけなのよ」
「だから――。まさか、あんた、その人のこと……。絶対(ぜったい)、やめなさいよ」
<つぶやき>危(あぶ)ないことはよしましょう。でも、世の中悪い人ばかりじゃないと信じたい。
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