みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1484「本妻と複妻」

2025-01-19 16:25:52 | ブログ短編

 僕(ぼく)が家(いえ)に帰(かえ)ると、とんでもない光景(こうけい)が目に飛(と)び込んできた。妻(つま)と、僕の愛人(あいじん)だった女が一緒(いっしょ)にいるのだ。まるで昔(むかし)からの友人(ゆうじん)のように…。この二人はいつからの知(し)り合いだったんだ? まさか、愛人の方(ほう)から妻に近(ちか)づいたのか?
 きっと、僕から別(わか)れ話をしたからその腹(はら)いせに…。何て女だ! ちゃんと手切(てぎ)れ金(きん)を充分(じゅうぶん)に渡(わた)して、納得(なっとく)したじゃないか。それを…こんなことまでして…。まさか、僕との関係(かんけい)を妻にばらすつもりなのか? もしそうなったら、離婚(りこん)ってこともあり得(え)る。
 僕は平静(へいせい)をよそおって妻に訊(き)いてみた。二人はどういう知り合いなのか。すると妻は、高校(こうこう)のときの後輩(こうはい)だと…僕に紹介(しょうかい)して、「陸上部(りくじょうぶ)で一緒だったのよ」
 これは衝撃(しょうげき)だった。僕は愛人の経歴(けいれき)などまったく興味(きょうみ)がなかったから…。ちゃんと確(たし)かめればよかった。こんなつながりが妻とあったなんて…。まさか、それを承知(しょうち)で、こいつは僕に近づいたのか? でも、何のために?
 愛人は、僕とは初対面(しょたいめん)って感(かん)じで接(せっ)してくる。僕は必死(ひっし)に動揺(どうよう)を隠(かく)した。大丈夫(だいじょうぶ)だ。妻は、そういうことにはうとい方だから、気づくことはないだろう。きっと…。
 三人で食事(しょくじ)をしているあいだ、僕はこれから何が起(お)きるのか戦々恐々(せんせんきょうきょう)だった。愛人がとんでもないことを言い出さないかとビクビクしていた。おかげで料理(りょうり)の味(あじ)などまったく分からなくなっていた。これは拷問(ごうもん)だ。僕は最後(さいご)まで耐(た)えることができるのか?
<つぶやき>まるで副菜(ふくさい)のようにつまみ食(ぐ)い。いけませんよ、ちゃんとバレてますから。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする