みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0015「突然の再会」

2025-02-02 16:39:14 | 超短編戯曲

   賑やかな居酒屋。会社の歓迎会で十数人が楽しく飲み食いしている。
係長「さあ、吉永さん。(ビールを注ごうとする)君は、いける口かね」
吉永「いえ、私は。(係長のビールを取り)どうぞ。これから、よろしくお願いします」
長田「あっ、係長! ずるいですよ。あの、僕にも注いでもらえませんか?」
吉永「はい。どうぞ(ビールを注ぐ)」
鈴木「吉永さん、そんなに気を使わなくてもいいから。まったく、うちの男どもは、ちょっと可愛い娘(こ)が来るとこれなんだから」
係長「いいじゃないの、鈴木さん。じゃあ、僕は鈴木さんに注いでもらおうかな?」
鈴木「はいはい。こんなおばさんで、すいませんねぇ」(ビールを注ぎに行く)
長田「それにしても、佐々木、遅いですね。何やってんだろうなぁ」
係長「なんか、向こうで引き止められたって言ってたな」
鈴木「佐々木さん、人がいいから。また、世間話に付き合わされたんじゃないの」
吉永「佐々木さんって?」
鈴木「あのね、一週間前から出張でね。あっちこっち、得意先を回ってるのよ」
係長「もう来ると思うんだけどねぇ」
      佐々木が大きな鞄を抱えて入って来る。
佐々木「すいません、遅くなっちゃって。あっ、係長。無事に戻ってまいりました」
係長「ご苦労さん。報告は明日、明日。さあ、まあ、一杯やりなさい(コップを渡す)」
吉永「あの、私が」(佐々木にビールを注ぐ)
      佐々木は吉永の顔を見て驚き、コップを落としてしまう。ビールがこぼれる。
長田「おい、佐々木。何やってんだよ!」
佐々木「あっ、すいません」(慌ててハンカチで拭こうとする)
      吉永がてきぱきとおしぼりで先に拭いてしまう。吉永の顔を見つめる佐々木。
長田「なに見つめてんだよ。こら、佐々木。おまえ、十年早い!」
佐々木「あ、いや…。別に、僕は…」(しどろもどろになっている)
      時間は過ぎて、歓迎会は終わった。最後に残ったのは佐々木と吉永の二人だけ。
佐々木「あの、吉永さん。えっと…、ご、ご出身はどちらですか?」
吉永「私は、ここが地元なんです。二年ぶりに戻って来たんですよ」
佐々木「二年ですか。あの、吉永さん…、えっと…、僕…、あなたに、似てる人…」
吉永「まったく、変わんないなぁ。はっきりしゃべりなよ!」
佐々木「えっ?」
吉永「まだ気づかないの。私よ、相沢真理。一年も付き合ってたのに、忘れるかぁ?」
佐々木「ま、まり! えっ、どうして…。だって、お前、二年前に急にいなくなって…」
吉永「いろいろあったのよ。両親が離婚してね。吉永って、母親の姓なの」
佐々木「でも、どうして僕の会社に…」
吉永「逢いたかったの。ずっと、ずーっと逢いたかったんだから」(佐々木を抱きしめる)
<つぶやき>男とは、いつも女に翻弄されるもの。それでも、男は女に惚れるのです。
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