「あんたには関係(かんけい)ないでしょ」水木涼(みずきりょう)が珍(めずら)しく不機嫌(ふきげん)に言った。
涼は男勝(まさ)りのところはあるけど、人を傷(きず)つけるような、そんなことをする娘(こ)じゃない。月島(つきしま)しずくは涼の気をそらすように陽気(ようき)に答えて、
「いいよ。私、行く行く!」
神崎(かんざき)つくねはスッと立つと、カバンを持って教室(きょうしつ)から出て行った。それを見送った涼は、
「何かあの娘(こ)、好きになれそうにないわ。私の嫌(きら)いなタイプかもね」
――しずくは涼と川相初音(かわいはつね)と三人で商店街(しょうてんがい)にいた。夕方(ゆうがた)近くなのでけっこう混(こ)み合っている。三人はいろんなお店を周(まわ)りながら、買い物に夢中(むちゅう)になっていた。これ可愛(かわい)いとか、これいいよねぇとか、わいわいと騒(さわ)いでいる。
そんな時だ。すぐ近くで女性の悲鳴(ひめい)が聞こえた。三人がそっちへ振(ふ)り返ると、人混みがザッと引いていく。空(あ)いたところに男が一人立っていた。男は手に刃物(はもの)を握(にぎ)り、男の足元(あしもと)には若(わか)い女性が倒(たお)れている。何故(なぜ)か、その男はしずく達の方を見つめていた。
それは一瞬(いっしゅん)の出来事(できごと)だった。男はしずく達の方へ歩き出した。しずくは「逃(に)げて!」と叫(さけ)んで、涼と初音の背中(せなか)を押(お)した。二人が駆(か)け出した時には、男は目の前まで迫(せま)っていた。しずくは動くことができなかった。男はしずくの首(くび)をつかむと、ショーウインドに押しつけた。しずくは息(いき)ができなくて必死(ひっし)にもがくが、どうすることもできない。男はニヤリと笑(わら)うと、手に持った刃物を振り上げた。
<つぶやき>どこで何が起こるか分かりません。危険(きけん)を感じたらすぐに逃げましょうね。
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