新聞を読んでいた家内。
「今村教会、いよいよ耐震補強工事が始まるみたいよ。」
大正2年に完成したこの教会は、老朽化が著しく、建物内は長らく立入禁止となっていた。
耐震補強工事には、20億を超える見積もりが出ているそうな。
国と自治体の補助を差引いても、莫大な負担が教会関係者にのしかかる。
その後、費用捻出の目途が立ったのかどうか。
新聞には、6月から工事が始まる旨と、
ここ数日間だけ、教会内部を一般にお披露目しているとある。
「そんなら、今から行くぞ。」
ブイーーーーン

今村教会。
二本の尖塔を持つ独特のデザインだ。

数羽の鳩が教会をねぐらとしていた。
お前たち、あと半年で工事が始まるらしいぞ。
今のうちに、どこか新しい家を探しとけよ。

何々、
えーっと、、、、

少しでも足しになるようにと、大量のお菓子とコーヒーを買うヤツ。
まあ、釘の何本分かにはなったろうよ。


18時を回ると、正面扉が開けられる事になっている。

ジーーーッ

18時。
鐘の音と共に、扉が開け放たれた。

ほほう。





重要文化財である以上、工法には数々の縛りもあるだろう。
どのような補強がなされるのか。



敷地内にはランタンで飾られている。



仕掛けは簡単。

可愛らしい子供の絵。


クリスチャンらしい言葉。

時節を表す俳句も。
『かうまでも』
この仮名遣いからして、私らより随分先輩かな。
ついでに言うと、きっと大刀洗にも飛来しているのだろう。
コウノトリの絵も。

ランタンを見ていたら、地元の老人(80年配)の話す言葉が聞こえてきた。
「工事は10年かかるげな。その間、教会ば拝めんごとなるな。」
「そうたい。あと10年はどげんかして生きらやこて。」
「ハハハ、ほんなごとな。」
老人達の会話を背中で聞いて、
(その意気たい)
と、小さく頷いた。