先ほど、母のようすを見に行ったら、ベッドに横になって布団を頭からかぶっています。「どないしたんや?」と訊くと「しんどい」と言います。体温を測ったところ熱はなさそうですが赤い顔をしています。何か精神的な作用があるのかと思いつつ、様子をあれこれ訊くのですが、「わからん、しんどいねん!」と目をつむったまま顔をしかめて吐き捨てるように言うだけ。
どうしようもないので、いったん時間をおいてまた見に行くことにしました。
30分ほど間をおいて、氷枕を持って母のようすを見に行きました。母はこれまで、しばしば氷枕をすると安心したのです。
母の部屋に入り、「どうや?」と声をかけても、母は返事をしません。呼びかけに反応してまぶたがぴくぴくしているので眠っていないことはわかっています。「大丈夫か?」「しんどないんか?」と何度か呼び掛けても、目をつむったまま顔をしかめます。「氷枕するか?」と訊くと首を横に振るだけ。動きのようすからは体の不調は感じません。何か理由はわかりませんが、反発心が起きたようです(晩ご飯を食べているときまで機嫌良くしていました)。
酒も入っていたからか、私もその態度にカッとなってしまい、「ちゃんと言わんとわからんやろ!」「何とか言え!」と怒鳴りました。それでも母は寝たような顔をして無視します。
その態度に、これまで押さえてきたものが急にあふれてきて、「人が話しかけたらちゃんと返事せんかい!」「ちやほやしてほしいんやったら、ちやほやしてもらえるところに行け!」「そんなんやったらお前の世話なんかしてられん!」と怒鳴りました。
私の声を聞いて、妻が駆けつけてくれました。母は無視をして寝たふりをするばかりです。
私の頭の中には、母への腹立ちが湧き出てきました。
小学校の時、すべきことをせず忘れものばかりしていた私を、ある時、玄関の敷居に座らせて、半ズボンの私の両方の太ももを、掌の跡がつくくらい叩いて怒った母に、「なんで顔とか頭とか叩かへんの?」と訊くと、母が「顔叩いたら世間の人に親が叩いたことがばれるやろ。かっこ悪い」と言い放ったこと。
通知簿が下がったと言って、箒を持って私を叩き、逃げても追いかけ回した母に、大人になってから「やっぱりオレのことを思って叩いたんか?」と尋ねた時に、母が「叩くのは自分の腹が立ったんを晴らすためや。お前のことを思ってとか、そんなん、あらへん」と笑ったこと。
そのほかにも、高校進学の時に「あんな高校、受けるとか言わんといてや、姉ちゃんはええ高校出てるのに、カッコ悪うていらんわ」「息子があんな駅(高校の最寄り駅)の定期持ってるって、恥ずかしいわ!」と言ったこと。
TシャツにGパンで出かけてロックバンドのまねごとをしていた高校時代に「世間の人にかっこ悪い。どんな親かと笑われるやろ!」と言ったこと。
それからも、何かといえば反対ばかりされた母でしたし、悩んでいるときに助けになるアドバイスをもらった記憶もない母です。
早く家を出たかったものの、早く就職したくても当てもなかった私であり、学歴が低いがゆえに仕事で苦労をしながら育ててくれた父の「大学だけは出ておけ」という言葉に従って(単身赴任で家にいなくて父への信頼も持っていませんでしたが)大学受験をしたものの全部落ちて、いい加減だった自分を思い知らされ、「1年だけ浪人させたる」という言葉に甘えて大学進学し、そのおかげで一つの仕事を勤め上げることができましたが、残念ながら母に力になってもらった覚えがありません(生んでもらったことは別にして)。
結局、地元で就職し、家に戻って生活していたんですが、何かにつけて母には反対されたことばかり思い出されます。(こうして書いているうちにも次々と嫌なことを思い出してしまうので、これくらいにします。虐待されていたわけではないんですが、精神的にこういう嫌悪感が育つこともあるのです)
それでも、きょうだいは姉だけで、姉は結婚して他市にいますし、親の面倒を見るのは私しかありません。妻も、何かと母にいやな目を受けましたが、頑張って世話をしてくれています。ホントに嫌悪する気持ちが母にはあるのですが、そういう気持ちを、仕方がないと納得させて世話しています。(息子に自分を介護させるのを考えてしまう母親に、息子が「何のために家族がいるんだよ」と言う、最近の保険のCMがありますが、見るたびにゾッとします。家族は介護のためにいるんじゃない!心情的に受け入れにくい家族もいる!)
そういう思いが、一瞬に湧き出てきて、母に「何でそういう態度をとるんや! 2年間(母が膝の人工関節の手術をしてからの介護期間)、自分のやりたいこともせんと世話してきたんやぞ! お前の世話ばっかりやりたいんとちゃうんやぞ! ええ加減にせえ!」と怒鳴りました。妻が手を引っ張って部屋から出してくれたので、それで終わりましたが、妻が来てくれなかったら、もっと爆発していたかもしれません。
周りが自分のために世話してくれるのが当然と思うのが認知症ゆえなのでしょう。でも、わかっていても、腹の底にあるイヤイヤながらの気持ちが噴き出てしまうようです。
でも、全部ただの言い訳ですね。長々と陰気な話を読んでくださり、ありがとうございました。
自己中心の欲望から逃れられない罪深い自分を情けなく思うばかりです。(でも母は嫌いです(笑))
晩ご飯の写真をあげながら、何の説明もなしですみません。今夜も美味しい夕食でした♪