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【11/22レンタル開始】『シン・ウルトラマン』を10倍楽しむ!

2023年12月10日 | ウルトラ関連



『シン・ウルトラマン』を10倍楽しむ!


 2022年5月13日に劇場公開された『シン・ウルトラマン』。

 観客動員数は295万人を超え、累計興行収入は44億円を記録し、社会現象にもなって空前の大ヒットとなりました。

 11月22日(水)にBlu-rayのレンタルが開始され、連日ほぼ貸出中と人気のようなので、オマージュ演出を中心した本記事を再紹介させて頂きます――。






 冒頭シーン



【オープニング】

 怪しいBGMとともにマーブル状の模様が流れる映像。

 『シン・ウルトラマン』では、シン・ゴジラ⇒シン・ウルトラマンになっており、2つの作品の世界に繋がりがあることを示唆しています。






【6体の禍威獣】

 『シン・ウルトラマン』の冒頭、立て続けに登場する6体の禍威獣は、『ウルトラQ』(1966年)に登場した怪獣です。

 BGMは「ウルトラQメインテーマ」で、『シン・ゴジラ』オマージュが散りばめられています。



【ゴメス】

 ウルトラQ第1話「ゴメスを倒せ!」で、トンネル工事現場から現れた古代怪獣。

 目のアップから登場する演出も同じです。ゴメスがゴジラを改造したものであるため、シン・ゴジラの3DCGを元に描かれています。






【マンモスフラワー】

 ウルトラQ第4話「マンモスフラワー」に登場した現代に蘇った太古の巨大吸血植物。マンモスフラワーが倒されるのは、シン・ゴジラを倒した東京駅前です。






【ペギラ】

 ウルトラQ第5話「ペギラが来た!」、第14話「東京氷河期」に登場した冷凍怪獣。南極に現れたペギラは東京に上陸し、口から冷凍光線を吐いて東京の街を氷漬けにしました。

 口から吐く光線で東京の街を殲滅させるのは、シン・ゴジラそのものです。






【カイゲル】

 ウルトラQ第24話「ゴーガの像」に登場した貝獣。『ウルトラQ』では“ゴーガ”という名前でしたが、“カイゲル”に変更になっています。

 カイゲルは、「ゴーガの像」のサンプルストーリー「生きていた化石」での名前です。




 蒲田くんの上陸地点と同じ蒲田駅前だけあって、ゴーガのシルエットや前方に突進していく動き、カメラアングルにオマージュ演出が見られます。



【ラルゲユウス】

 ウルトラQ第12話「鳥を見た」に登場した古代の巨鳥。普段は文鳥サイズですが、捕食する時に巨大化して動物や街を襲いました。

 メフィラスが文鳥を使ってベーターシステムのテストをしたかもしれないこのシーンは、有翼化して飛翔するシン・ゴジラ第5形態に因んでいるようです。






【パゴス】

 ウルトラQ第18話「虹の卵」に登場した地底怪獣。

 パゴスの怪獣スーツはネロンガに改造され、最終的にガボラとなりました。これは、パゴス、ネロンガ、ガボラを“同族の禍威獣”と呼称するモチーフになっています。

 屹立状態で倒されるのも、シン・ゴジラと同様です。






【初登場と初変身】

 『ウルトラマン』の主人公・ハヤタ隊員役の黒部進がウルトラシリーズに初登場したのは、ウルトラQ第8話「甘い蜜の恐怖」。

 試験場の研究員役で、林の中でのシーンで白衣の姿でした。





 『シン・ウルトラマン』の主人公・神永新二がベーターカプセルでウルトラマンに初変身するシーンも同じく林の中で、白衣という姿です。

 ちなみに、この時の変身シーンを動画サイトに投稿したアカウント名「驕頑弌繧カ繝ゥ繝」は、「遊星ザラブ」の文字化けです。





 ウルトラマンが降着した時は銀色一色でしたが、神永と融合した後のウルトラマンは赤と銀のカラーリングになっています。

 初代ウルトラマンの赤は血流をイメージしていると言われており、外星人に人間の血が流れたことを現しているのではないでしょうか。



 ネロンガ編


 
【ロケ地】

 ネロンガ編のロケ地は、群馬県中之条町と山梨県見延(みのぶ)町

 樋口真嗣監督によると、『ウルトラマン』に出てくるような懐かしい原風景的な場所であることが選定理由だそうです。(一番最初の避難シーンのみ中之条町 )

 ロケ地の詳細は、こちらを参照下さい。





 劇中でのヘリコプターによる禍特隊の現着は、ウルトラマン第3話「科特隊出撃せよ」でのビートルでの科特隊の現着を彷彿とさせます。

 なお、田村班長が話す「Pファイブ」とはPermanent5のことで、国連安全保障理事会の常任理事国である米、英、仏、露、中国の5カ国のこと。

 また、「符丁(ふちょう)」とは、同業者や仲間内でのみ通用する言葉で、隠語ともいいます。



【台詞のオマージュ】

 対策本部テント内で「となると…お手上げです」という滝の台詞があります。

 これは、第3話 でのアラシ隊員の「姿なき怪物か…これはお手上げですね」という台詞のオマージュと思われます。






【子供を助けるシーン】

 神永が逃げ遅れた子供を助けに行くシーンは、ウルトラマン第23話「故郷は地球」でのハヤタ隊員による同様の行動のオマージュです。






【真実と正義と美の化身】

 劇中で、ウルトラマンの姿を初めて見た浅見分析官が「綺麗…」と呟くシーンがあります。
 
 これは、庵野秀明氏が成田亨氏が描いた『真実と正義と美の化身』を初めて見た時、「この美しさを何とか映画にできないか」と思ったエピソードに因んでいると思われます。


       



【大胸筋バリアとAフレーム】

 ウルトラマンがネロンガの雷撃を胸で受けるシーンは、第3話での同様のシーンのオマージュです。

 開いた足の間からローアングルで対象物を映す“Aフレーム”と呼ばれる撮影手法も同様に用いられています。






【スペシウム光線】

 ウルトラマンが、ネロンガに対してスぺシウム光線を放つシーン。





 この時の打ち方は、ウルトラマンのスーツアクターの古谷敏氏がウルトラ巡礼の旅で行っているスペシウム光線講座での打ち方に準じています。

 腕の位置は少し違いますが、『ウルトラマンパワード』のメガスぺシウム光線も少し入っています。





 また、劇中のスペシウム光線の作画は、『ウルトラマン』でスペシウム光線の作画をした飯塚定雄氏によって描かれています。

 この時のウルトラマンのマスクは、Aタイプのデザインになっています。(目の角度、耳の大きさ、口元の形などに特徴が見られます)






【セブンオマージュ】

 ちなみに、浅見分析官が初登場するシーン (BGM:Early Morning From Tokyo (シン・ゴジラ)」では、通行人の会話で物語が進みます。
 
 これも、セブン第8話のワンシーンのオマージュとなっています。
 




 ガボラ編


 
【ウルトラスピンキック】

 劇中で、ウルトラマンが空中で回転しながらガボラを蹴り上げるシーンがあります。

 これは、帰ってきたウルトラマン第11話「毒ガス怪獣出現」や第26話「怪奇!殺人甲虫事件」などで見られるウルトラスピンキックです。

 ただ、回転時の動きやBGMは、ウルトラマン第39話「さらばウルトラマン」のゾフィーのウルトラスピン時のものが使用されています。





【ガボラとの戦い】

 核廃棄施設を背にしたウルトラマンがガボラに襲われるシーン。

 ガボラのドリルを左右にかわすアクションは、ウルトラマン第24話「海底科学基地」のグビラとの戦いのシーンのオマージュ演出です。





 ガボラをジャイアントスイング後に投げ飛ばすシーンもありますが、同じ四つ足怪獣としては、ウルトラマン第15話「恐怖の宇宙線」のガヴァドンBとの戦いで見られます。





 なお、ガボラが出現する場所は、山梨県の長潭橋(ながとろばし)から見える山です。

 山腹から出現するのは、ウルトラQ第18話「虹の卵」で登場する同種の地底怪獣であるパゴスの出現シーンのオマージュなのかもしれません。



【パワードガボラ】

 ガボラのデザインは、『ウルトラマンパワード』に登場するパワードガボラがモチーフになっているようです。






【緑トラマン】

 また、ウルトラマンは、エネルギー消耗時に体の赤いラインが緑になりますが、これはミラーマンをモチーフにしているようです。

 ちなみに、成田亨 氏は「エネルギーが切れかけたら、目の色を弱めるとか、顔の色をライティングで青くするなどできないか」と提案していたそうです。
            


 ザラブ編



 禍特対室に登場するザラブの服装は、ウルトラマン第18話「遊星から来た兄弟」の冒頭に出てくる時のものが再現されています。

 また、第18話では友好の証として放射性物質を含んだ霧を晴らしましたが、劇中ではPCのデータを復元させています。

 なお、ザラブのデザインは、成田亨氏のデザイン画に近い形になっています。






【シャットダウン】

 劇中では、ザラブが禍特対室に入室すると同時に、電子機器が全てシャットダウンします。

 第18話でも、ザラブ星人が指令室に入室すると同時に指令盤から火花が飛びます。これは、原子発電機付きの携帯用電子頭脳の影響でした。

 劇中のザラブは、アプリをインストールしたスマホが電子頭脳の役割を果たしています。






【台詞やBGMの再現】

 劇中で、ザラブが神永の車中で「好奇心は身を滅ぼす」「眠ってもらおうか、ウルトラマン」などと言うシーンがあります。

 この台詞も第18話でのビートル内部でのシーンをトレースしており、動きやBGMにもオマージュ演出が見られます。





 なお、Amazonプライムビデオの日本語字幕で鑑賞すると、神永が眠らされた後、(何かを潰す音)という字幕が入ります。この時、追尾用の特殊インクを足の裏につけた模様。

 なお、謎の男・加賀美 (鏡=ミラーマン?) は、神永マンと、ベーターカプセルのスイッチを触った浅見分析官にしか見えていないという説もあるようです。



【スぺシウム133】

 劇中でザラブが発する「スペシウム133」という言葉は、イデ隊員が開発したスペシウムを光線に変換して発射する「マルス133」がモチーフ。(133は架空元素スペシウムの原子番号)

 マルス133は、ウルトラマン第16話「科特隊宇宙へ」で初登場します。






【外星人か人間か】

 劇中で、浅見分析官が神永マンに「あなたは外星人なの?それとも人間なの?」と問うシーンがあります。

 これは、ウルトラマン第33話「禁じられた言葉」のワンシーンのオマージュです。

 メフィラス星人の「貴様は宇宙人なのか、人間なのか!」という問いに、ハヤタ隊員は 「両方さ。貴様のような宇宙の掟を破る奴と戦うために生まれてきたのだ」と答えています。






【屋内での変身シーン】

 劇中では、神永マンが建物を破壊しながらウルトラマンに変身するシーンがあります。第18話でも同様のシーンがありますが、ちょっと地味です。



【にせウルトラマンとの戦い】

 特撮シーンを撮影していたウルトラマンのスーツアクターの古谷敏氏。

 にせウルトラマン の頭に軽くチョップをするシーンで、相手との距離感を間違えて思い切り仮面に手刀を当ててしまいました。





 小指を骨折したと思ったほどの痛さで、全力で痛みを堪える人間的な動きになってしまいましたが、監督の意向で使われました。

 この一連の動きと、その前後のザラブ星人との戦いがBGMも含めて再現されています。

 ちなみに劇中では、ウルトラマンのチョップが頭に当たった瞬間、にせウルトラマンの頭の形が一瞬、ザラブの頭の形になります。



【庵野監督のお気に入り】

 「ウルトラの揺り籠」(2003年) に収録されている座談会で、庵野秀明監督は“ザラブ星人が一番のお気に入り”と明かしています。

 “知的生命体を滅ぼすのが仕事”というウルトラマンと正反対な存在に魅力を感じるそうで、劇中の台詞にも活かされています。






 メフィラス編







【ヒロインの巨大化】

 劇中での浅見分析官の巨大化は、第33話の 巨大フジ隊員のオマージュで、ロケ地は丸の内仲通りの二重橋スクエアビル付近。

 巨大化前に、主人公とヒロインが行方不明になるのも同じです。






 空からメフィラスの声が響き渡るのも、第33話のオマージュ。

 メフィラスの暴力を嫌悪する性格や、怪獣を操って地球に対して軍事的圧力をかける作戦もトレースされています。






【帰マンオマージュ】

 メフィラスのベーターボックスが起動する時の光とBGMは、『帰ってきたウルトラマン』で主人公の郷秀樹の変身時のものです。






【メフィラスと神永マン】

 ブランコでのシーンは、ウルトラマンレオ第25話「かぶと虫は宇宙の侵略者!」のクリーン星人とジロウ少年のシーンのオマージュなのかもしれません。

 河岸(かし)を変えるために、店内BGMに「日本沈没」(1974年) の挿入歌『小鳥』が流れる居酒屋を訪れたメフィラスと神永マン。





 メフィラスが鼓腹撃壌(こふくげきじょう)の世づくり計画を吐露したこの居酒屋は、浅草にある「浅草一文本店」です。

 なお、『小鳥』の曲中にある「たとえ小さな命でも」という歌詞が、神永マンの「私は、この弱くて群れる小さな命を守っていきたい」という台詞に活かされています。



【実相寺監督オマージュ】

 上述の“日本的な建物の中でウルトラマンと宇宙人が話し合う”というシチュエーション。

 これは、ウルトラセブン第8話「狙われた街」で、畳の部屋でモロボシ・ダンとメトロン星人が話をするシーンのオマージュと思われます。






【政府の男】

 政府の男が発する「ゼロサム状態」とは、一方が利益を得た場合、もう一方が同じ分だけ損することで、プラスマイナスゼロの状態になることをいいます。

 また、「リエゾン」とは仲介、橋渡しのことです。






【実相寺オマージュ】

 メフィラスとウルトラマンが工業地帯で戦うシーンも、セブン第8話のオマージュでしょう。

 ウルトラマン第33話での戦場は森ですが、実相寺監督オマージュということで、工業地帯に変更したと思われます。

 ただ、劇中では日没間際ではなく、15時半頃の時間帯での戦いになっています。





 ただ、樋口真嗣氏が特技監督を務めた『ガメラ大怪獣空中決戦』では、ガメラとギャオスは最終決戦をコンビナートで行っています。

 カメラワークも似ており、もしかするとセルフオマージュをしているのかもしれません。






【匂いのスキャン音】

 ウルトラマンが浅見分析官の匂いをスキャンする音は、ウルトラマン第1話「ウルトラ作戦第1号」で、ハヤタ隊員が赤い球に取り込まれるシーンのものが使われています。

 ネロンガ戦でスぺシウム光線を発射する直前の音、ベータボックス起動中の音、ゾーフィと神永マンの対話の際にも使用されています。



【八つ裂き光輪】

 「ベーターボックスを持って、さっさとこの星から立ち去れ」(CV:高橋一生)

 劇中では、両者が後ろに下がってからウルトラマンが八つ裂き光輪で攻撃を始めますが、ウルトラマン第33話「禁じられた言葉」でも同じです。





 メフィラスがウルトラマンを蹴り上げたり、ウルトラマンがメフィラスを一本背負いするアクションも同様です。

 また、メフィラスの光線を白刃取りで受け止めるシーンは、ウルトラマン第31話「来たのは誰だ」でのケロニア戦のオマージュです。





 劇中では、メフィラスのグリップビームとスペシウム光線のぶつかり合いになりますが、第33話では光線を放つ直前にメフィラスが戦いをやめています。

 「(戦うのを)よそう」という台詞や、足元から消えていくのも同じです。





 ゾーフィとゼットン編



【宇宙人ゾーフィ】

 劇中では、“ゾーフィ”というウルトラマンに似た外星人が登場します。

 これは、児童誌『ぼくら』の付録などに掲載されたゼットン星人とゾフィーの情報が混在したキャラクターです。

 この情報は、マスコミ配布用の円谷プロの公式資料に書かれていた誤情報で、“ゼットンを操って大暴れする”という設定がゾーフィ編のモチーフになっています。


            


 金と黒のカラーリングは、成田氏が「ウルトラマンG」の企画段階でデザインした“ウルトラマン神変 (しんぺん) ”がモチーフ。

 1996年の成田亨特撮美術展で発表されたヒーロー「ネクスト」も、金と黒のカラーリングになっています。






【リピア】

 劇中でゾーフィが神永マンに対して、「リピアー。いや、この星に合わせ、ウルトラマンと呼ぼう」と言います。

 これは、『ウルトラセブン』第48話「史上最大の侵略(前編)』でセブン上司による「340号。いや、地球での呼び名に従ってウルトラセブンと呼ぼう」という台詞のオマージュです。





 ちなみに、“リピア”とはヒメイワダレソウという花で、“誠実”、“絆”、“私のことを思って下さい”などの花言葉を持っています。

 生命力の強さから雑草避けの効果があり、“庭の守護者”と呼ばれており、ヒマワリの30倍のセシウム吸着効果もあるそうです。

 しかしこの花は、既存の生態系に甚大な被害を及ぼす恐れがあるとして、生態系被害防止外来種リストに掲載されています。






【天体制圧用最終兵器ゼットン】

 ゼットンの“ゼットォン”という声は、ウルトラマン第39話 (最終回)「さらばウルトラマン」に出てくるゼットン星人の声です。

 ハヤタ隊員にマルス133を打たれ、消滅する際の断末魔として発しています。





 なお、ゼットンの“ポポポポ・・・”という機械音は、『ウルトラマン』のゼットンでも鳴っており、生物ではなく機械のような印象を受けます。



【イデ隊員オマージュ】

 劇中で、滝が自分の存在価値を見失って自暴自棄になるシーンがあります。

 これは、ウルトラマン第37話「小さな英雄」で、「ウルトラマンさえいれば、科特隊は必要ない」と塞ぎ込んでしまうのイデ隊員のオマージュとも受け取れます。






【ウルトラマンは神ではない】

 劇中で、神永がレポートの中で「ウルトラマンは万能の神ではない」と述べています。

 これは、映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」(2006年) で、ハヤタ隊員がミライ隊員に言った台詞のオマージュです。

 「我々ウルトラマンは決して神ではない。どんなに頑張ろうと救えない命もあれば、届かない思いもある。大切なのは、最後まで諦めないことだ」






【微かに笑え あの星のように】

 『シン・ウルトラマン』の主題歌である米津玄師の「M八七」に、“微かに笑え あの星のように”という歌詞があります。

 これは、ウルトラマンの口元のデザインのモチーフである“アルカイック・スマイル”のこと。

 ウルトラマンのデザインを担当した成田氏は、口元をアルカイック・スマイルにした理由を自著の「特撮と怪獣 わが造形美術」でこう述べています。





 「本当に強い人間は、戦う時に微かに笑うと思うんですよ」

 常に無表情だった神永マンがゼットンに戦いを挑む直前、微かな笑みを浮かべて禍特対本部を出ていったのは、そういった意味合いがあるのでしょう。

 (USBを黙って机の上に置いたのは、浅見分析官から注意されたコーヒーのマナーの件を間違って理解している?)






【宇宙空間での最終決戦】

 宇宙空間でのゼットンとウルトラマンとの戦い。

 これは、映画「大決戦!超ウルトラ8兄弟」(2008年) でのウルトラ8兄弟の最終決戦のシーンを彷彿とさせます。






【1兆度の火球】

 ゼットンの“1兆度の火球”は、元々は大伴昌司氏が少年誌に掲載したゼットンの解剖図に記載した非公式の設定でした。





 しかし、そのインパクトから子供達の間に広く浸透したため、公式設定になったようです。

 ちなみに、ゼットンから放たれる砲弾は、後半は全て最終回のゼットンが発射する赤い怪光線になっています。






【ダイナオマージュ】
 
 劇中で、ウルトラマンが並行宇宙に飛ばされそうになるシーンがあります。

 これは、今年25周年を迎えたウルトラマンダイナ第50話「最終章Ⅱ 太陽系消滅」と、第51話「最終章Ⅲ 明日へ…」のクライマックスシーンのオマージュと思われます。





【ウルトラマンの死】

 光の星への送還命令を拒否し、掟を破った罰として自らの命を神永に託して死を選ぶ決断をしたウルトラマン。

 その決断を尊重し、ベーターカプセルのスイッチを押してウルトラマン本体と神永との繋がりを分離するゾーフィ。

 (この時、逆ぐんぐんカットのウルトラマンは、神永と融合する前の銀色に戻っています)





 そして、主観映像でのラストシーンへと繋がります。

 神永の目から、ゼットンが空から消えていること、(ガボラを倒した後のように) 禍特対の仲間達が無事であることを確かめるウルトラマン。

 そして、信頼できる相棒 (バディ) となった浅見分析官の声を聞き終えると同時に絶命。

 彼は、「行ってらっしゃい」と見送ってくれたバディの「おかえり」の声を最期に聞きたかったんだと思います。

 「我々のために限界までいてくれたのか」という田村班長の言葉が思い起こされます。




 なお、暗転は絶命してウルトラマンの意識が途切れたことを意味しており、星になったウルトラマンへの鎮魂歌として『M八七』が静かに流れ続けます――。

 ただ、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』のラストシーンを彷彿とさせる演出なので、解釈は観る人に委ねられているともいえます。

 ちなみに、曲の最後のバスドラムの音はウルトラマンの心音で、音の途切れ=死を表しているように思います。



【金城哲夫氏の本懐】

 ウルトラマンの最終回 は、最初はウルトラマンが自らの命をハヤタに託して絶命する設定でした。

 しかし、「ウルトラマンが死ぬ」という噂を聞いた子供たちから円谷プロとTBSに「ウルトラマンを殺さないで!」という声が殺到し、金城哲夫氏が現在の脚本に変更したそうです。

 つまり、本来のカラータイマーが無いデザインと、最後にウルトラマンが死ぬ本来の最終回の設定に立ち返ったのが、『シン・ウルトラマン』なのです。


         



 禍特対本部



【壁時計】

 禍特対本部の壁時計は、科特隊指令室の時計のデザインがモチーフになっています。また、設置位置が部屋の右上ということで、科特隊の指令室と同じです。






【電話の着信音】

 禍特対本部の電話の着信音が、科特隊指令室の固定電話&流星バッジの通信音になっています。

 なお、禍特対本部の電話が一斉に鳴りだすシーンは、MAT (帰ってきたウルトラマン) や、TAC (ウルトラマンA) の通信音も混ざっています。






【滝のデスク周辺】

 滝明久のデスク周辺には、『マイティジャック』のMJ号や、『宇宙大作戦』のエンタープライズ号などの様々なミニチュアが置かれています。

 『サンダーバード』のサンダーバード1号から5号、ジェットモグラやファイヤーフラッシュ号、高速エレベーターカーなどの玩具や食玩などもあるそうです。





 ちなみに、禍特対の集合写真の並びとポーズは、『ウルトラマン』の科特隊を意識したものになっています。

 なお、生物学者の船縁が発する“独立愚連隊”とは、1959年製作の戦争アクション映画で、クズ兵士が集まった危険な任務にあたる部隊のことのようです。



【テトラポッド】
 
 神永の机上のテトラポッドの置物。

 これは、ウルトラマン第34話「空の贈り物」で象徴的な“テトラポッドと科特隊”のシーンがモチーフになっていると思われます。






 その他



【実相寺アングル】

 前衛的な撮影手法と演出で、“鬼才”と呼ばれた実相寺昭雄監督が多様したカメラアングル。

 画面の手前に物を入れ込んで、その奥に被写体を撮影するなめショットや、パース(遠近感)の効いた映像などが特徴です。






【マルチバース】
 
 劇中で出てくる「マルチバース」とは、宇宙は1つしかないという「ユニ(一つの)バース」に対して、宇宙は複数(マルチ)あるという考え方で、多元宇宙論ともいわれています。



【野生の思考】

 神永マンが読んでいる本の内容がヤバいそうです。ちなみに、神永マンが本のページをめくるスピードは、物語が進むにつれて速くなっています。






 編集後記



 “禍威獣や人間と対話可能な異星人が人間社会に現れ、人間を生物兵器に転用できる技術が登場したら、人や世界はどう動くか”

 『シン・ウルトラマン』は、上記のテーマを5つのウルトラマンのエピソード(※)をつなぎ合わせて、一つの物語にまとめられています。

 ※第3話「科特隊出撃せよ」、第9話「電光石火作戦」、第18話「遊星から来た兄弟」、第33話「禁じられた言葉」、第39話「さらばウルトラマン」

 また、作品中に『シン・ゴジラ』や、他のウルトラ作品に因んだオマージュ演出も散りばめられています。

 つまり、『シン・ゴジラ』とは作品の作り方が根本的に違うので、『シン・ウルトラマン』に徹底的なリアリズムを求めることは酷かと思います。


【メフィラス構文と神永マン】

 『シン・ウルトラマン』の公開とともに、劇中でメフィラスが発する言い回しが「メフィラス構文」としてSNSで空前の人気となりました。

 また、ウルトラマンと融合した神永新二が“神永マン”と呼ばれて、こちらもSNSで二次創作漫画が賑わいました。

 作品の設定や登場人物、劇中で話される台詞で遊べるのも、『シン・ウルトラマン』の魅力だったと思います。

 また、『シン・ゴジラ』や『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』などのウルトラ作品を観ておくと、より楽しめる作品になっています。

 “作品のことを深く知るのは、人を見下したり、知識自慢をして優越を誇示するためではなく、作品をより深く楽しむためである”

 私の好きな言葉ですーー。






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