先日のC級2組順位戦では、ゴキゲン中飛車が4局登場しましたね。
佐藤天彦五段-遠山雄亮四段 ▲3七銀急戦 先手勝ち
川上猛六段 -大石直嗣四段 ▲3七銀急戦 後手勝ち
村田顕弘四段-佐藤和俊五段 丸山ワクチン 先手勝ち
長岡裕也四段-豊島将之五段 丸山ワクチン 後手勝ち
勝率だけ見れば5割ですが、▲3七銀急戦の序盤はどちらも後手が良く見えました。
逆に、丸山ワクチンの2局は先手が良い将棋でした。
丸山ワクチンは、最近▲4七銀型を急がない構想が出てきて(参考図)
先手に手の選択肢が広がってきたようです。
▲3八銀と出れるので、後手も向かい飛車からの逆襲が難しくなっています。
これから再ブレイクするかもしれません。
**********************************************************************
今回は郷田流の思想と題しまして、プロ棋界で流行中の▲3七銀急戦の狙いを見ていきます。
そもそも、▲3七銀急戦はゴキゲン中飛車が登場した頃に指されていた急戦策です。
他の対策が注目を浴びて指されなくなる中で、郷田真隆九段は指し続けました。
そして、独自の研究を加えていき郷田流と呼ばれる様になりました。
初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩▲6八玉
△6二玉▲7八玉△3三角▲6八銀(基本図)
◇郷田流の意思表明
先手の▲4八銀は、急戦なら▲3七銀急戦、持久戦なら居飛穴の含みを持たせています。
△5五歩にすぐ▲2四歩は△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角で、
直前に指した▲4八銀が悪手になってしまいます。
また、▲6八玉△6二玉▲2四歩では、△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△3五角(A図)で、
王手飛車で後手大優勢。
ただし、▲7八玉△7二玉は今度こそ▲2四歩が成立します。
以下△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀(B図)となると、銀に紐が付いていて
△3三角は無効です。△2二飛ぐらいしか受けがなくて1歩損では後手面白くありません。
そこで、△3三角と受けます。
先手は▲6八銀として急戦の意思を見せます。
これで持久戦は無くなり、郷田流の意思表示になります。
先手は▲2五歩を保留する指し方もあり、二枚銀急戦も含みにできますが、
後手もそれを拒む手段があります。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲4八銀△8八角成▲同銀△2二飛
▲7七角△1二飛(変化図)という佐藤(康)新手です。
今回は郷田流の思想と趣旨が違いますので割愛させて頂きますが、
2009.7.4に行われた第3回朝日杯プロアマ戦では、類似局が3局も登場するなど、
大変有力な戦法になっています。
詳しく知りたい方は、角交換振り飛車 応用編 (最強将棋21)を参考にされると良いでしょう。
角交換振り飛車 応用編 (最強将棋21)
この佐藤(康)新手を解説している本はこの一冊だけです。
二枚銀急戦に苦しめられている方には、戦法の引き出しを増やす為に覚えておくといいでしょう。
他にも丸山ワクチンや鈴木大介八段の解説付き棋譜が載っていて良書ですよ。^-^
**********************************************************************
ここからは、従来の▲3七銀急戦(A)と郷田流(B)の違いを見て頂くために、
新旧2つの指し方を同時進行で見て行きたいと思います。
基本図からの指し手
(A)
△7二玉▲5八金右(1-A図)
(B)
△7二玉▲3六歩(1-B図)
◇一手省いて足早に
▲5八金右を省くのが、郷田真隆九段の工夫です。
一長一短がありますが、後手の迎撃態勢が整う前に攻めれるのが魅力です。
郷田流の▲5八金右省略の特徴を以下に示します。
メリット
・1手早く攻める事ができる。
・角交換からの△3九角が無い。
デメリット
・5筋の守りが弱い為、△5六歩と突かれた時に手抜けない。応援が遅れる。
・飛車交換になると△2八飛が王手になる恐れあり。
わかりやすくする為に、ここから後手は△5四銀を目指す方針で進めていきます。
1図からの指し手
(A)
△4二銀▲3六歩△5三銀▲3七銀△5四銀(2-A図)
(B)
△4二銀▲3七銀△5三銀▲4六銀△5四銀(2-B図)
◇銀の進出速度の違い
▲5八金右を省略した効果で、従来に比べて銀が1段早く進出できているのがわかります。
結論から言うと、2-B図の△5四銀は疑問で△4四銀が良く指されています。(テーマ図12)
このテーマ図12を次回以降の課題としたいと思います。
ここでは、以前も紹介した△6二銀引も有力だと思っています。(前回第2図)
2図からの指し手
(A)
▲4六銀△6五銀▲4五銀△5六歩(3-A図)
(B)
▲3五歩△同歩▲同銀(3-B図)
◇先手の主張通る
従来の▲3七銀急戦では▲5八金右が入っていた為、後手の銀の応援が間に合っています。
▲4六銀の瞬間に△6五銀がゴキゲン中飛車独特の捌き。
ここは本譜の進行以外に▲7七銀などもあります。
ここでは割愛させて頂きますが、後手が良くなります。
詳しくはゴキゲン中飛車戦法 (パワーアップシリーズ)を参照されると良いでしょう。
ゴキゲン中飛車戦法 (パワーアップシリーズ)
発行されて9年が経ちますが、今でも使える手筋が載っていますし、
次の一手問題14題と、参考棋譜10本があり充実の内容です。
私が9年前にゴキゲン中飛車を指し始めた思い出の1冊でもあります。^-^
12/12現在、上記リンクから中古で83円で購入できます。(!)
本題に戻り、従来の定跡に比べ郷田流では▲3五歩と攻める事ができます。
郷田流の長所が前面に出ています。
3図からの指し手
(A)
▲3三角成△同桂▲5六銀△同銀▲同歩△同飛(4-A図)
まで、後手良し。
(B)
△6五銀▲2四歩△5六歩▲3三角成△同桂▲5六歩△同銀▲7七角△6四角
▲4六歩△3四歩▲同銀△4六角▲2六飛△1九角成▲3三角成(4-B図)
まで、後手不満の進行。
◇1手の省略で大違い
旧定跡では後手の駒がきれいに捌けています。
4-A図では次に△5五角や△3九角、△4九角といった狙いがあります。
これを全て消すには▲5七歩と受けるしかないのですが、これでは先手悔しすぎますね。
冷静に△5一飛と引けば有効な攻めもありません。
対して、郷田流では4-B図から次に▲4三銀成~▲5三桂といった明確な狙いがあり、
後手の駒も捌けていません。先手有利の展開でしょう。
▲5八金右を省略して、後手の体勢が整う前に攻める…
郷田流の思想が分かって頂けたでしょうか?
大駒の交換に持ち込まれない様に、好機に△5六歩と突かれない様に…と
先手も持ち時間の短い将棋では難しい作戦ではありますがゴキゲン党には難敵です。
今回は以上です。
次回は、テーマ図11か12を紹介したいと思います。
**********************************************************************
マイコミから今月発売の棋書がアップされていましたので、リンクを貼っておきますね。^-^
写真などが掲載されたら掲載したいと思います。
今からどんな内容か楽しみです。^-^
阿久津主税七段の本は、定跡書ではなく感覚を磨くための本の様です。
高橋道雄九段の本は、横歩取り△8五飛戦法の本で、新山崎流も載っているようです。
必ず役立つプロの常識
最新の8五飛戦法
佐藤天彦五段-遠山雄亮四段 ▲3七銀急戦 先手勝ち
川上猛六段 -大石直嗣四段 ▲3七銀急戦 後手勝ち
村田顕弘四段-佐藤和俊五段 丸山ワクチン 先手勝ち
長岡裕也四段-豊島将之五段 丸山ワクチン 後手勝ち
勝率だけ見れば5割ですが、▲3七銀急戦の序盤はどちらも後手が良く見えました。
逆に、丸山ワクチンの2局は先手が良い将棋でした。
丸山ワクチンは、最近▲4七銀型を急がない構想が出てきて(参考図)
先手に手の選択肢が広がってきたようです。
▲3八銀と出れるので、後手も向かい飛車からの逆襲が難しくなっています。
これから再ブレイクするかもしれません。
**********************************************************************
今回は郷田流の思想と題しまして、プロ棋界で流行中の▲3七銀急戦の狙いを見ていきます。
そもそも、▲3七銀急戦はゴキゲン中飛車が登場した頃に指されていた急戦策です。
他の対策が注目を浴びて指されなくなる中で、郷田真隆九段は指し続けました。
そして、独自の研究を加えていき郷田流と呼ばれる様になりました。
初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩▲6八玉
△6二玉▲7八玉△3三角▲6八銀(基本図)
◇郷田流の意思表明
先手の▲4八銀は、急戦なら▲3七銀急戦、持久戦なら居飛穴の含みを持たせています。
△5五歩にすぐ▲2四歩は△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角で、
直前に指した▲4八銀が悪手になってしまいます。
また、▲6八玉△6二玉▲2四歩では、△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△3五角(A図)で、
王手飛車で後手大優勢。
ただし、▲7八玉△7二玉は今度こそ▲2四歩が成立します。
以下△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀(B図)となると、銀に紐が付いていて
△3三角は無効です。△2二飛ぐらいしか受けがなくて1歩損では後手面白くありません。
そこで、△3三角と受けます。
先手は▲6八銀として急戦の意思を見せます。
これで持久戦は無くなり、郷田流の意思表示になります。
先手は▲2五歩を保留する指し方もあり、二枚銀急戦も含みにできますが、
後手もそれを拒む手段があります。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲4八銀△8八角成▲同銀△2二飛
▲7七角△1二飛(変化図)という佐藤(康)新手です。
今回は郷田流の思想と趣旨が違いますので割愛させて頂きますが、
2009.7.4に行われた第3回朝日杯プロアマ戦では、類似局が3局も登場するなど、
大変有力な戦法になっています。
詳しく知りたい方は、角交換振り飛車 応用編 (最強将棋21)を参考にされると良いでしょう。
角交換振り飛車 応用編 (最強将棋21)
この佐藤(康)新手を解説している本はこの一冊だけです。
二枚銀急戦に苦しめられている方には、戦法の引き出しを増やす為に覚えておくといいでしょう。
他にも丸山ワクチンや鈴木大介八段の解説付き棋譜が載っていて良書ですよ。^-^
**********************************************************************
ここからは、従来の▲3七銀急戦(A)と郷田流(B)の違いを見て頂くために、
新旧2つの指し方を同時進行で見て行きたいと思います。
基本図からの指し手
(A)
△7二玉▲5八金右(1-A図)
(B)
△7二玉▲3六歩(1-B図)
◇一手省いて足早に
▲5八金右を省くのが、郷田真隆九段の工夫です。
一長一短がありますが、後手の迎撃態勢が整う前に攻めれるのが魅力です。
郷田流の▲5八金右省略の特徴を以下に示します。
メリット
・1手早く攻める事ができる。
・角交換からの△3九角が無い。
デメリット
・5筋の守りが弱い為、△5六歩と突かれた時に手抜けない。応援が遅れる。
・飛車交換になると△2八飛が王手になる恐れあり。
わかりやすくする為に、ここから後手は△5四銀を目指す方針で進めていきます。
1図からの指し手
(A)
△4二銀▲3六歩△5三銀▲3七銀△5四銀(2-A図)
(B)
△4二銀▲3七銀△5三銀▲4六銀△5四銀(2-B図)
◇銀の進出速度の違い
▲5八金右を省略した効果で、従来に比べて銀が1段早く進出できているのがわかります。
結論から言うと、2-B図の△5四銀は疑問で△4四銀が良く指されています。(テーマ図12)
このテーマ図12を次回以降の課題としたいと思います。
ここでは、以前も紹介した△6二銀引も有力だと思っています。(前回第2図)
2図からの指し手
(A)
▲4六銀△6五銀▲4五銀△5六歩(3-A図)
(B)
▲3五歩△同歩▲同銀(3-B図)
◇先手の主張通る
従来の▲3七銀急戦では▲5八金右が入っていた為、後手の銀の応援が間に合っています。
▲4六銀の瞬間に△6五銀がゴキゲン中飛車独特の捌き。
ここは本譜の進行以外に▲7七銀などもあります。
ここでは割愛させて頂きますが、後手が良くなります。
詳しくはゴキゲン中飛車戦法 (パワーアップシリーズ)を参照されると良いでしょう。
ゴキゲン中飛車戦法 (パワーアップシリーズ)
発行されて9年が経ちますが、今でも使える手筋が載っていますし、
次の一手問題14題と、参考棋譜10本があり充実の内容です。
私が9年前にゴキゲン中飛車を指し始めた思い出の1冊でもあります。^-^
12/12現在、上記リンクから中古で83円で購入できます。(!)
本題に戻り、従来の定跡に比べ郷田流では▲3五歩と攻める事ができます。
郷田流の長所が前面に出ています。
3図からの指し手
(A)
▲3三角成△同桂▲5六銀△同銀▲同歩△同飛(4-A図)
まで、後手良し。
(B)
△6五銀▲2四歩△5六歩▲3三角成△同桂▲5六歩△同銀▲7七角△6四角
▲4六歩△3四歩▲同銀△4六角▲2六飛△1九角成▲3三角成(4-B図)
まで、後手不満の進行。
◇1手の省略で大違い
旧定跡では後手の駒がきれいに捌けています。
4-A図では次に△5五角や△3九角、△4九角といった狙いがあります。
これを全て消すには▲5七歩と受けるしかないのですが、これでは先手悔しすぎますね。
冷静に△5一飛と引けば有効な攻めもありません。
対して、郷田流では4-B図から次に▲4三銀成~▲5三桂といった明確な狙いがあり、
後手の駒も捌けていません。先手有利の展開でしょう。
▲5八金右を省略して、後手の体勢が整う前に攻める…
郷田流の思想が分かって頂けたでしょうか?
大駒の交換に持ち込まれない様に、好機に△5六歩と突かれない様に…と
先手も持ち時間の短い将棋では難しい作戦ではありますがゴキゲン党には難敵です。
今回は以上です。
次回は、テーマ図11か12を紹介したいと思います。
**********************************************************************
マイコミから今月発売の棋書がアップされていましたので、リンクを貼っておきますね。^-^
写真などが掲載されたら掲載したいと思います。
今からどんな内容か楽しみです。^-^
阿久津主税七段の本は、定跡書ではなく感覚を磨くための本の様です。
高橋道雄九段の本は、横歩取り△8五飛戦法の本で、新山崎流も載っているようです。
必ず役立つプロの常識
最新の8五飛戦法
それと、(4-B図)までの手順で▲同銀△4六角が抜けているようです。
ご指摘ありがとうございました。修正致しました。
A図に至る手順中で▲6六歩は確かに後手面白くないかもしれませんね。
ただ、谷川九段は△6二玉~△3三角と進めるので、何かあるのかもしれません。
何はともあれ、先に△3三角が最善みたいですね。
ご指摘ありがとうございました。^-^
金符と申します。棋力はギリギリ有段で、居飛車党だけどゴキゲンを指すこともある感じです。
順序が逆になちゃいましたけど、よろしくお願いします。
それと△6二銀引に対して思ったことですが、いったん▲5八金右としておく手がよさそうに見えます。
後手はとことん軽いので先手は手厚くいきたいかな、と。
居飛車もゴキゲン中飛車も指すと言う事で、
私の記事がどちらの視点からも参考になると幸いです。
△6二銀引ですが、私も最近研究を中断しています。
というのも、最近豊島五段の新構想を披露したようで、
この間の順位戦で遠山五段が採用しているのを見ました。
この方が優秀そうだなと思ってしまったのです。
いずれ紹介したいと思っています。