ゴキ研

ゴキゲン中飛車研究ノート

定跡の基本から最前線まで詳しく紹介。

超速対銀対抗 居飛車持久戦の変化球①【橋本流6筋位取り】

2012年11月04日 22時12分36秒 | 超速対銀対抗
社団戦最終日、3連敗を喫してしまった。

私用があり遅れて来たのだが、第1局はメンバーが足りず
時計が残り5分未満まで進んでいるところに合流して対局開始。

相振りで相手が突っ張った手を指してきたところで、
こちらも咎めに行ったのが失敗で技を掛けられて敗勢となった。

残り時間の少ないところでは自重するべきで、
持ち時間は言い訳に出来ない。

終盤追い上げたが足りなかった。

残りの2局も機敏に動いて優位を築いたが、具体的に良くする順が見出せなかった。

不勉強が祟ったと言うよりない。

これを機に反省して将棋に対する姿勢を改めねばと思っている。

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さて、本来ならば前回の続きで超速対銀対抗の居飛車急戦を取り上げるところだが、
更新をサボっている間に興味深い構想がいくつか出た。

また、9月末には菅井ノート 後手編も発売した。

とても評判の高い菅井ノート 後手編だが、私としては銀対抗の結論に疑問を抱いている。

Twitterでも述べた内容であるが、研究を加えたので忘備録も兼ねて書き留めておきたい。

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲4八銀 △5五歩 ▲6八玉 △3三角 ▲3六歩 △4二銀
▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀 ▲7八玉 △6二玉
▲5八金右△7二玉 ▲6六歩 △8二玉 ▲6七金 △9二香(基本図)



基本図は超速対銀対抗から持久戦へと移行し、振り飛車が穴熊を明示した局面。

このタイミングは居飛車も変化球を繰り出しやすく、
先日も深浦康市九段が工夫を見せて羽生善治三冠に作戦勝ちから破っている。
(2012/10/12 王将戦挑決リーグ▲深浦△羽生戦)

この作戦は手強いので次回取り上げたいと思う。

振り飛車が変化球を避けるなら△9二香に替えて△6四歩という久保新手がある。

菅井ノート 後手編でも取り上げられており、
次に示す作戦に分が悪いと結論付けて△6四歩が勧められている。

基本図からの指し手
▲6五歩(テーマ図1)



このタイミングでの6筋位取りが橋本流。
(2011/7/19 竜王戦決勝T▲橋本△久保戦)

以下、無策に振り飛車が指すと参考図の様になり、▲4五桂を見せられて苦しくなる。



また、菅井ノート 後手編で述べられている様に、
△4二金には常に▲3七桂で△5三金を封じられる。

ここはもう少し駒組みを進めて、居飛車陣に隙が出来るのを待ちたい。

テーマ図1からの指し手
△9一玉 ▲6八銀 △5一飛 ▲7七銀(第1図)



前述の▲橋本△久保戦の進行を参考に、△5一飛と引いて構える。

これにより、後々の戦いにて予想される飛車への当たりを未然に防いでいる。

居飛車が▲7七銀と上がった第1図。

角道を塞ぎ、5五の歩へのプレッシャーから解放されたこのタイミングが動きどころだ。


第1図からの指し手
△5二金左▲3七桂 △3一飛 ▲6六銀(第2図)



第1図では△5三銀から銀の繰換えも一考の余地がある。

▲3五歩には△同歩▲同銀△5四銀▲3四銀△6五銀(A図)などでやれそうだが、
▲4五銀△3二金▲6六銀△2二角▲5五銀(▲2四歩もある)△5四銀
▲同銀右△同飛▲5六歩(B図)で無理そう。



そこで、△5二金左と上がり、次に△5三金を見せて▲3七桂を催促する。

そうして出来た桂頭の弱点を狙い△3一飛と動く。

なお、蛇足だが▲3七桂と跳ねない実戦例は▲橋本△久保戦を参照頂きたい。

▲6六銀と出られた第2図は△4二角が間に合わず、
振り飛車の動きが一手遅れている様だが…。

第2図からの指し手①
△3五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲同 銀 △1五角(第3図)
▲2六銀打△3六歩 ▲3八歩 △3五飛 ▲同 銀 △3七歩成
▲同 歩 △同角成 ▲6八飛 △1九馬 ▲3一飛(第4図)



かなり乱暴だが、銀を犠牲に△1五角(第3図)と出てみる。

(1)▲4六銀は平凡に△3七角成▲同銀△同飛成(C図)で角桂交換ながら龍が出来てまずまず。
▲6八飛には△3九龍~△5九銀と絡んでどうか。

(2)▲2六銀は△同角▲同飛△3七飛成(D図)で飛車の逃げ場が難しい。
▲2九飛は△3八龍が王手飛車だし、▲1六飛は△2七銀、▲4六飛には△5四桂だ。



しかし、本譜▲2六銀打に続く▲3八歩が最善の受けで、第4図は振り飛車側が攻め手を欠いている。

もう少し工夫を加える必要がある様だ。

第2図からの指し手②
△3五歩 ▲同 歩 △1五角(第5図)



△1五角(第5図)はTwitterで強豪に指摘された手だ。

先に銀損するよりもこちらの方が含みが多い。

ここで居飛車に考えられる手は①▲1六歩と②▲2四歩、③▲5五銀左あたりが有力か。

順に考えてみたい。

第5図からの指し手①
▲1六歩 △3五銀 ▲1五歩 △4六銀 ▲同 歩 △3七飛成(第6図)



▲1六歩には、角を犠牲に飛車を成り込む。

先程述べたC図に似ているが、4七に空間が空いているのが異なる。



第6図から▲6八飛なら△3九龍▲2二角△1九龍▲1一角成△4七桂(E図)と設置できる。



この変化は振り飛車も戦えると思う。

第5図からの指し手②
▲2四歩 △3五銀 ▲2三歩成△4六銀 ▲3二と △同 飛
▲2一飛成△3一歩 ▲4六歩 △3七飛成(第7図)



▲2四歩は突き捨てておく事で後に飛車を走れる様にしている。

ここは構わず捌き合いを目指す。

▲3二とはハッとする手で、△3七銀成ならば▲2二飛成で大変な事になるが、
冷静に△同飛と応じて▲2一飛成に△3一歩の底歩が固い。

▲4六歩は次に▲4一銀の割り打ちが生じているので、ここは△3七飛成と飛車を先に成り込む。

第7図からは▲1六歩としても、△3八龍と王手で龍を入れば馬として生還できる。

こうなればもちろん振り飛車が優勢だ。

第5図からの指し手③
▲5五銀左△3五銀(第8図)



この▲5五銀左が最も難解。

△3五銀(第8図)に対する応手が3通りが考えられる。

①▲3八歩
②▲2九飛
③▲1八飛

これら変化を調べてみる。

第8図からの指し手①
▲3八歩 △3六銀 ▲5四銀 △4七銀成▲2二角成△3六飛
▲4五銀 △2六飛(第9図)



▲3八歩は△4六銀▲同銀の時に桂馬に紐を付けている意味がある。

ここは△3六銀と刷り込んで△4七銀成で飛車を潜り込むスペースを作る。

以下、飛車交換が確定した第9図は振り飛車が十分に戦える。


第8図からの指し手②
▲2九飛 △4六銀 ▲同 銀 △3七角成▲3二歩 △4七馬(第10図)



▲2九飛はあらかじめ飛車への当たりを緩和した手だ。

後手は単純明快に3七へ数の攻めを敢行する。

△3七角成を▲同銀では△同飛成が△3八龍の王手飛車で先手になるので▲3二歩が継続手。

しかし、△4七馬(第10図)と寄る手が飛車取りになる。

以下、飛車を渡すと居飛車陣は弱いので▲4九飛と逃げるが、
△3八馬▲5九飛△3二飛▲4一銀(▲3三歩は△4二飛で続かない)△3六飛(F図)で
振り飛車に分のある戦いだと思う。



第8図からの指し手③
▲1八飛 △3六銀 ▲5四銀 △4七銀成▲2二角成△3六飛(第11図)



▲1八飛も飛車への当たりを緩和した手で、▲2九飛と異なり△3八龍と入られる手が無い。

しかし、今度は△3六銀と刷り込む手があった。

じっとしていると、△2七銀成で飛車に当たる。

角道が止まっている居飛車は飛車の捌きを押さえる手段も無く、△3六飛が間に合った。

こうなるとやはり振り飛車が指せる分かれだ。

なお、第2図に遡って▲3五同歩では▲3五同銀も考えられる。

第2図からの指し手③
△3五歩 ▲同 銀 △1五角 ▲2六銀 △3六飛 ▲1五銀 
△3七飛成▲6八飛 △1四歩(第12図)



△3五歩に▲同銀が居飛車の工夫。

これを△同銀と取っては▲同歩△1五角▲2六銀で失敗する。

先に△1五角で居飛車は痺れる。

▲2六銀の受けには軽く△3六飛と走って△3七飛成が実現する。

第12図は銀を殺して実質二枚換えの計算。 捌けて振り飛車が十分。

以下は、▲5五銀△1五歩▲4四銀△同歩▲同角△3九龍(G図)で振り飛車が優勢。



最後は△3九龍と入らないと▲2六角打があるのでご注意頂きたい。

G図は角の利きが無くなれば△5五桂が痛烈だ。

以上の研究により、橋本流6筋位取りは久保流△6四歩を強要する下地にはなっていないと考察する。

次回は、居飛車持久戦の変化球②として阿波流端角を取り上げたいと思う。

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