五高の歴史・落穂拾い

旧制第五高等学校の六十年にわたる想い出の歴史のエピソードを集めている。

学生狩始まる

2012-08-11 04:06:34 | 五高の歴史

昭和12~3年頃になると、社会の特権的存在として社会的に絶縁されて何も社会の批判的なことも蒙らなかった五高生に対し社会の眼が注がれ始めた、 

いわゆる学生狩である。これをなさしめた者には学生自体の堕落にあった。剛毅木訥を誇った五高生はカフエーに遊び麻雀に耽るのが常であった。寮の弁論大会、座談会等ではしばしばこのことが論争されたが、経験主義をもってこれを擁護し学生の品位をかざして時局を説いてはこれを否定した。

この時代の学生は退廃的な享楽的な傾向に流れていたことは否めないことであった。この傾向が頂点に達したのがまさに「非常時」であった。緊縮が要求され確信が望まれ、これらの享楽に対して弾圧が加えられたのは当然である。

五高生に対して警戒の目を向けていた警察や憲兵隊等の当局は学生狩という表面的な現象で五高生全体への反感をつのらせていた。

この時の寮報第三号には「去る二月末以来引き続き行われている不良学生狩りの結果は今さらのように世人をして学生の堕落に眼を醒らしめたとある。この問題の根源は実に遠く且つ深きものがあろう。これは単に学生の無ならずインテリ一般の浮動性無目的性乃至思想の混迷性などに帰しるのである。

しかし沈滞乃至未来の希望を阻まれたインテリの選ぶ唯一の途があのデカダンス、エロイズムであろうか、それらは2者択一的関係のあるものであろうか、そのいずれも否である。

これまで「世論を知る」という茫洋な言葉を口にして退廃の生活にまことしやかなこじつけをする人が多かったのではないか」と、ともあれ孤高独断高踏は五高生活には許されない時代に突入して行ったのである。



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