星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

坂東薪車の会@国立文楽劇場

2012-08-19 | 観劇メモ(伝統芸能系)
ツイッターより 

薪車さんの会19日。万雷の拍手にカーテンコールあり。幕が開くと
ちょこんと一人で真ん中に座礼している薪車さん。上手に歩いて座礼、
下手に向かう途中で、連獅子の相方、猿弥さんに促されて花道に。
嬉しそうな顔を客席に見せた後、2方向に座礼。
戻って後ろのお囃子、鳴り物の皆さんにも。猿弥さんに礼した後、ふ
たりハグ。最後に猿弥さんと並んでもう一度深々と座礼。口上はな
かったけれど、拍手のなか笑顔笑顔の感動的な力テコでした。


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夏休み文楽特別公演 第3部「曽根崎心中」@国立文楽劇場

2012-08-04 | 観劇メモ(伝統芸能系)
ツイッターより 

曾根崎心中、また酔わせていただきました。官能的。あの照明の
せいでしょうかね。ラスト、あんなに引っ張ってたっけ?もしか
したら違う結末が見られるのかと期待してしまった。前回と同じ、
外国人にもわかるほうの結末、モヤモヤしないほうだった。

万雷の拍手に、客席壮観(o^^o)

曾根崎心中の帰りの電車から打ち上げ花火が見えてる。いまは
もっと情緒のある花火が見たい気分。

お初徳兵衛、直接手をつなぐんじゃなく、破れ編み笠でつないで
るところがいじらしくて、心中らしくて、なんかキュンときた。

単に長さの問題じゃないです。日本的情緒、余韻を優先するか、
全員がコンセンサスのとれる結末にするか。私は片方しか見たこ
とないんですもん。


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夏休み文楽特別公演 第2部@国立文楽劇場

2012-08-04 | 観劇メモ(伝統芸能系)
2012年は劇場でいえば文楽劇場によく通った。演目・作品名に漢


ツイッターより 

文楽を最初に見たのがサマーレイトショーで、伊勢音頭と蝶の道行
だった。当時、見てわかりやすくてなんて面白い! と思った伊勢
音頭よりも、いまは義太夫でしっかり聴かせてもらえる演目のほう
が好き。不思議やな~。今日も床前!
嶋大夫さん、かっこよかった!文楽2部。玉手御前、右に懐剣、左
に盃、のとこ。上半身立ち上がり、口をゆがめて絞り出す声。隣席
の若い女の人もこの演目でいっぱい泣いてはった。並んで泣いた。
年齢じゃないね。感じる心は。
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文楽素浄瑠璃の会(国立文楽劇場)

2012-07-07 | 観劇メモ(伝統芸能系)
ツイッターより 

素浄瑠璃よかったねー!またお会いしましょう。
(以上、ツイートより)
住大夫さん、咲大夫さん、英大夫さん、三者三様。
それぞれの持ち味が存分に発揮された素晴しい舞台。
たっぷり聴かせていただき、堪能いたしました。
「入間詞長者気質 持余屋の段」は落語にもなりそうなお話。
ふだん人形ありで観ている舞台と比較してその違いを味わったり、
逆に人形がないからこそ楽しめる話芸のような演目が聴けたり。
素浄瑠璃の魅力にどっぷりつかった貴重な機会でした。


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投影と踏襲~文楽と落語・舞踏のあやしい関係~(2)

2012-03-24 | 観劇メモ(伝統芸能系)
第二部は凝った構成だった。
まず、舞踏に関するレクチャー。
続いて、文楽「日高川入相花王 渡し場の段」を人形なしで上演
し、それを舞踏手が引き継ぎ、舞踏のパフォーマンスを披露。
最後に人形を入れて「日高川~」をもう一度見せる。
文楽と舞踏のコラボが感覚的に楽しめる演出にワクワク。




第二部 舞踏の源流・文楽

<講演 土方巽と芸術家たち>

建畠 哲(詩人・京都市立芸術大学学長)

文楽ファンの人たちといっしょに「舞踏」の映像を見て、土方巽
の話を聞く。かなり奇妙な感覚だった。

その日に見る映像に関して男性(お名前わからず)の解説が入る。
最初の映像は1968年の「肉体の反乱」から若き土方巽のずいぶん
挑発的でエロティックな舞台。つづく1970年代の映像は「疱瘡譚」
から。病や肉体的弱者の体の動きに着目したパフォーマンスという
ことだった。(白塗り、肌の露出、局部の誇張、空中移動、等々が
あるかと思えば、躍動とは対局にある奇異な身体表現もある。私が
持っているDVDは1973年の「夏の嵐 燔犧大踏鑑」なので、それ以
外の舞台映像が見られたのがウレシかった。)
伝統芸能との関係でいえば、音楽に義太夫や津軽三味線を使用した
ことがあった、とのこと。

彼の最後のパフォーマンスに間に合ったという建畠哲さんによれば、
人類は「土方巽を見たか否か」の2種類に分かれるそうだ♪
当時の熱狂的な観客の目線や熱気が話の端々から伝わってくる。
土方は三島由紀夫、細江英公、横尾忠則、澁澤龍彦、高橋睦郎ら
ジャンルを越えた芸術家、文化人たちと交流があったという。
細江英公と土方巽のコラボ写真集『鎌鼬』(かまいたち)からの
写真も数枚紹介された。

1965年に横尾忠則がデザインした暗黒舞踏の公演「バラ色ダン
ス―A LA MAISON DE M. CIVECAWA」のポスターもあった。
こちらで見られます )
それまでの横尾忠則の作風が一変するきっかけとなったポスター
だと聞く。二人の出会いによって生まれた時代の落とし子的作品。
CIVECAWAとは澁澤龍彦のことだそうで、公演の出演者の中には
大野一雄・大野慶人の名前も見られる。
建畠さんの高尚な解説を勝手に噛み砕いてメチャクチャ平たく言
うとこうなるだろうか?
文楽は<人形>に人間を憑依させることによって人間以上に生々
しい存在になる。一方、土方の舞踏はオブジェとしての体、不自
由な肉体を意識することより結果として生々しいものを表現して
みせた。文楽と舞踏、そこに通じるものがあるのではないか。
(舞踏はいわば、自分で自分の体を人形の体のように客観的に扱っ
た、ということだろうか? 間違っていたらすみません。。。)

「舞踏」の表現の根本にある理論を「文楽」と結びつけて説明し
てくださったおかげで今までわからなかったことが感覚的にわかっ
たような気がする。


<創作と新演出による「舞踏と文楽のコラボレーション」>

●日高川入相花王 渡し場の段(人形なし)
 
浄瑠璃:豊竹英大夫 三味線:鶴澤清友、鶴澤清公
出演:桐竹勘十郎 ほか


舞台上に床が置かれ、浄瑠璃と三味線による出語り。
やはり、手摺や書割等のないシンプルな舞台。
下手から3人の人形遣いが全員黒衣姿で登場してくる。
黒ずくめで人形を持たないので、黒い長袖の先の露出した肌色
だけが目立っている。

人形を脱いで露になった勘十郎さんの左手、裸の指にゴクリ♪
一瞬、なんだか見てはいけないものを見てしまった気がした。
(やっぱり秘密クラブかもしれない。)
が、すぐにSな気持ちが打ち勝って、そこから先はほとんど舐め
るように見ていたと思う。
あ、これか。これなのか。
見てはいけないものを見てしまったー!という感覚は、白虎社
(舞踏集団)を初めて観た時の衝撃と興奮に通じる。
ところが、そんなヘナチョコな思いはすぐに吹き飛んだ。
勘十郎さんはじめ3人の人形遣いによる本物の力というか、伝統
芸能の持つ圧倒的なエネルギーに打ち砕かれた。

勘十郎さんの左手は胴串を握った形をしている。親指が上方に
開いて、人差し指は細やかに滑らかに動き、握り方がゆるんだり
ギュッとなったり。あとの3本はピタリとくっつき人差し指と連
動して動く。
初めのうちは<指>だと思っていたのに、その手はいつのまに
か性別を帯び、感情を見せ、所作を知り、意志を持っていた。
ときおり艶かしいんである♪
それは恋に胸を焦がす若い女そのもの。激しい情念と強い意志
で思いを遂げようとする女が目の前にいるようだった。

左遣いの手は動きが静かな時と、忙しく動いている時がある。
いろいろと仕事があるのだと人形付きで見てわかった。
足遣いは下にいて中腰だったりしゃがんだり、両手をシャカ
シャカさかんに交差させたり。
面白いのはこの3人がくっついたまま動くということ。ある場面
では横長の舞台の隅っこに固まっていた。主遣いと左遣いの体の
間を足遣いがくぐり抜けた時は一連の群舞を見ているようだった。
人形がなくても、3人がある法則にしたがって1つの有機体とし
て動いていることに今さら感動する。
うん、三位一体だ。
3人が舞台から通路に出てきたときが大コーフン!
わわ、泳いでるやんっ♪ 川が見えるやん~。

------自分用メモ------
足遣いの動きを見て思い出したこと。
下からゲンコツが勢いよく飛び出し、手がそそり立つ時がある。
(女性がすわった時の足遣いの手だと、昨年9月の勘十郎さんの
講演で説明された記憶がある。)
2007年に観たNODA・MAPの「THE BEE」の舞台で報道陣がマ
イクを暴力的に突き出すシーンがこれにそっくりなんである。
調べたところでは、勘十郎さんが初めてエア人形に挑んだのは
おそらく2005年、大阪倶楽部での上演がはじまりのようだ。
その後、何度か披露の機会があったわけだし、野田さんはこの
エア人形をかなり早い時期に見たことあるんじゃないだろうか?
------------------------

「髪も逆立ち波頭抜き手を切って渡りしは怪しかりける」
エアー人形の上演が終わり、舞台上の姫の息づかいが聴こえてき
そうなタイミングで、下手から剃髪の男が静かに登場。
赤の着物に藍の袈裟懸け・・・え! 安珍?と思わず息をのんだ。
人形遣いがそっと下手に引っ込む。


●浄瑠璃で舞踏を舞う 「病める舞姫」より
作曲・演奏:豊竹英大夫 三味線:鶴澤清友
振付・出演:由良部正美
 

文楽の余韻が残っている。
由良部さんの舞踏は安珍イメージで引き継がれた。

「言っておきたいことがある。もっと大事なことがある。
ずるずるずるっとだまされる。みすみすわかってだまされる。」
土方巽の言葉はなんて挑発的なんだろう。
今回はじめてそう思った。
舞い手。語り。2007年に観たものと同じなのに感じ方が違う。
とても義太夫っぽい。演出が違うせいだろうか。
(舞踏に合わせて語り、演奏するのはどういう点が違いますか?
音楽と比べて浄瑠璃は舞いやすいですか?ってアフタートーク
で聞けばよかった~。素朴な疑問すぎてとても聞けなかった。)

安珍は袈裟懸けを脱ぎ、赤い着物風の衣装だけになった。
由良部さんの手はつねにふわふわ、ひらひら動き、それは土方巽
の重力のある言葉にあえて逆らっているようにさえ見える。
ソフトだけれどその動きは明らかに挑発的だ。
花道代わりの中央通路までゆっくり歩み出て、観客の視線を集め
舞いながらまた舞台にもどる。白塗りの裸足のアシが艶かしい。
目の前にあるのは由部さんの所有物ではなく、客観的なうつわ。
そこに何かが宿っているのだ。
人形でもない、歌舞伎舞踊でもない、浄瑠璃の舞踏。
レクチャーのおかげか演出のせいか、不思議な観劇だった。

※プロフィールを見てビックリ。由良部さんはもと東方夜總会
(白虎社)の人。私が観たのは独立後の「身体の裏側2」だ。


<日高川入相花王 渡し場の段>
浄瑠璃:豊竹英大夫 三味線:鶴澤清友、鶴澤清公
出演:桐竹勘十郎 ほか


舞台には床と、この日初めての舞台セットが。
エアー人形だけだと思っていたので、もう一度同じ演目が人形で
観られると知って感激♪ やっぱり文楽はええなあ~。

さっき人形なしで動きを見ていたので、見方が違ってくる。
エアーの時に勘十郎さんの左手が何かを投げたように見えたのは、
人形が髪を振り乱しザンバラになった瞬間。後ろから前へ首を振っ
た動きだったんだー。
左遣いさんは姫の衣装を着替えたり、仕掛けを触ったり、いろい
ろお仕事があるんだね。よ~くわかりました。
足遣いさんはトーゼンながら見えませ~~~ん。
エアーでは通路が川になったが、文楽の舞台では浅葱色の幕を使っ
てアッという間に川ができる。姫が蛇になったり戻ったりしながら
泳いでゆくところはやっぱり面白い。
最後に正統派の文楽で終わったせいか満足。心地よい達成感♪

<アフタートーク>
勘十郎さんは人形があるほうがずっとラク、人形なしのほうが汗を
かく、と言っておられた。数年前に人形なしで観たいと言われた時
はけったいなこと言うなあと思ったけれど、人形なしでやると3人
それぞれの関係性がよくわかっていい。自分も正面で観てみたい、
とのこと。

大野一雄、土方巽の言葉を引用して「形が先か、魂が先か」という
質問に答えて。
英大夫さんは、考えてやるものではなく、気がついたら言葉が出て
いるような状態じゃないとお客様には伝わらない、と。
勘十郎さんは若い頃はひたすら形を勉強していたけれど、今は性根
をどう入れるかについて考えている、と。
由良部さんはどちらも結局同じことである、と言われたと思う。主
体であり客体であるのが踊りの醍醐味、と。
清友さんは、決まったことを繰り返しやるだけ。そのつもりでやって
いたら、今日は(英大夫さんが)違うことをやったりする、と笑いを
とっておられた。

最後に。
こんな凄い催しを企画してくださった伴野久美子さんにあらためて
ありがとうございました!


●関連の観劇メモ
現代詩を浄瑠璃で語る 観劇メモ (2007/8/29)
「現代詩を語り、舞踏を舞い、キリスト劇を演じる」観劇メモ
(2007/12/25)
4月文楽公演「桂川連理柵」観劇メモ (2008/5/5)


●舞踏に関するおもな記事
山海塾「金柑少年2005」観劇メモ (2005/10/4)
神戸チキンジョージのアンダーグラウンドな夜 (2005/11/18)
Kazuo Ohno Festival 2005と大野一雄さんのDVD (2005/12/2)
精華演劇祭は19日まで (2006/3/9)
山海塾「時のなかの時ーとき」観劇メモ (2006/3/19)
山海塾「遥か彼方からのーひびき」観劇メモ (2006/5/26)
第6回朝日舞台芸術賞グランプリは山海塾 (2007/1/11)
「大野一雄フェスティバル2007」まもなく開催 (2007/10/4)
山海塾「降りてくるもののなかで ー とばり」(2011/3/6)

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投影と踏襲~文楽と落語・舞踏のあやしい関係~(1)

2012-03-24 | 観劇メモ(伝統芸能系)
公演名  投影と踏襲~文楽と落語・舞踏のあやしい関係~ 
日時    3月17日(土)
       第一部 12:30~14:45  
       第二部 15:00~17:00
       アフタートーク
会場    ジーベックホール(神戸ポートアイランド)
 

文楽のこういう催しには過去に2回参加させて頂いたことがある。
今回は勘十郎さんによるエア人形のパフォーマンスも観られる!
というので、この日を心待ちにしていた。

神戸のジーベックホールは定員300名の小さな劇場。文楽関係の
催しなのにロビーにはある人物のモノクロポスターが2枚掲げら
れている。
1枚は髪は長く、頬はこけ、眼だけは鋭く、まるでどこかの教祖
のような風貌をした男の写真。もう1枚は、和服姿で髪を後ろに
束ねた男が晩年の阿部定の横にちょこんと正座して撮った写真。
それが「舞踏」の創始者、土方巽だった。

雀松さんが冒頭の挨拶で「ようこそ、秘密クラブへ」と笑いをとっ
ておられたが、開演前からアヤシサじゅうぶん120%超え~♪




第一部 上方の芸 落語と文楽のあやしい関係

<落語・文楽それぞれのワークショップ(体験)>
初っ端。桂雀松さんが出囃子ではなく、文楽の野崎詣りの三味
線で登場。落語の約束事や楽しみ方についてお話された。
上方落語と文楽は昔から関係が深く、文楽をモチーフにした噺
がけっこうあるそうだ。そのために雀松さん自身も義太夫のお
稽古をしているとのこと。
で、義太夫がわかりにくいのは言葉を伸ばすからで、日本語は
伸ばすとすべて母音になる(実演入り)。だから結局母音しか
思い出せないのだと、言い当てられて笑ってしまった。

文楽のワークショップでは、希大夫さんが文楽について解説。
語りの一部を観客全員で一斉に語る体験をさせていただいた。
~あーらわれーいでたるー たけちーいぃ みつぅぅひでっ!~
「みつぅぅ」までは隠れていて「ひでっ」で姿を現す。その感じを
声で表現するのだ。
発声してみてわかった。「会話」以外の語りは伴奏や効果音に
もなるのでうまく音程がとれないと聴く人がツライ。
短い時間だったけれど初めての体験は楽しかった。

三味線ワークショップは清公さん。客席から二人が選ばれて舞
台上で体験レッスン。お二人とも二の糸だけを弾くことができ、
ほめられていた。ちなみに、若手の人が弾いておられる三味線
は猫ではなく犬の皮。力のあるうちは固いものを使うのだそう。

<落語 どうらんの幸助>
出演:桂雀松

文楽の桂川連理柵「帯屋の段」を題材にしたオハナシ。
いやー、笑った笑った。
二人の男が他人からタダ酒をせしめるくだりから始まり、いっ
たいどんなふうに「帯屋」につながるのかと思いながら聴いて
いたら、ナルホロ~。そういうオチですか♪
それにしても落語のネタに使われるくらいだから、作られた当
時は文楽がいかにポピュラーだったかがわかるし、正式な
演目は知らなくても「お半長」といえば老若男女がわかる。
落語と文楽の深くてアヤシ~イ関係とは、上方ならではの素敵
このうえない関係のことだった。

<文楽 桂川連理柵 帯屋の段>
浄瑠璃:豊竹英大夫 三味線:鶴澤清友
人形(長吉):桐竹勘十郎 ほか


舞台上にしつらえた床には、英大夫さんと清友さん。
三味線から語りへ、そこに登場したのは丁稚の長吉。
え! そうきますか~。チャリ場の長吉にズーム・イン。
もう何が可笑しいって、いきなり青ッパナですよ。2つの鼻の
穴からツーと2本の青洟が伸びてきて、長吉が洟をすするたび
にズルッと穴の中に吸い込まれる。
ツーツー&ズル♪ ツーツー&ズル♪
これ、以前に観た時は全然気づかなかった。
いやん、文楽人形楽しすぎるやん!

この時、床のお二人は舞台奥に。舞台前方には手摺も書割もな
く、人形遣いの3人の姿がまるまる見えていた。
私たちをツーツー&ズルで笑わせながらも、勘十郎さんはポーカ
ーフェイス。しかも、全身の動きはときおり舞を舞っておられる
ように見えることにしばし感動・・・。


舞台転換のため少しの待ち時間があり、そのままダーッと
第二部に突入。誰一人帰ることなく全員通しで臨むようだ。
ムム、アツイぜ!
つづきは(2)へ。
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「秀山祭三月大歌舞伎」昼の部(印象メモ)

2012-03-17 | 観劇メモ(伝統芸能系)
公演名    秀山祭三月大歌舞伎
劇場     南座
観劇日    2012年3月11日(日)
座席     3階1列


先週南座に行ってきたので、さらっと印象だけ。
秀山祭が南座で観られるなんてね~♪
吉右衛門さんも、このたび襲名の又五郎さんも、関西であま
りお目にかかることのできない役者さんたちだ。

昼の部は「御浜御殿綱豊卿」も「熊谷陣屋」も仁左衛門さん
の舞台を拝見し、いっぺんに好きになった演目。
違う役者さんで観るとどう違うのだろうか。
綱豊卿が2回目になる愛之助さんはどう見えるだろうか。



元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら) 御浜御殿綱豊卿

徳川綱豊卿:愛之助   富森助右衛門:錦之助
中臈お喜世:壱太郎   中臈お古宇:隼人
御祐筆江島:芝雀    新井勘解由:歌六


いやいやなかなかどうして。
「御浜御殿綱豊卿」は私、やはり好きな舞台だと思った。あ
の隙のない台詞の応酬にやっぱり引き込まれ、気がつくと涙
涙。二人の心情がよく伝わってきた。
戯曲の年齢設定がどうなのかは知らないが、一見、逆のよ
うに思える配役なのに、富森助右衛門を演じる錦之助さん
と綱豊卿の愛之助さんの組み合わせは意外にもバランスがよ
かった。永楽館で味わった感動再び、だ。
新井勘解由といる時の綱豊卿が大きく見える。愛之助さんが
落ち着いているし、そう見せる歌六さんもうまいのだろう。


猩々(しょうじょう)

猩々:翫雀   酒売り:種之助   
猩々:種太郎改め 歌昇


一見、連獅子のようだけど、もちろん衣装も踊りの内容も
違う。最初に出てくる種之助さんも、そして歌昇さんも
ビジュアル的に麗しい。そして二人を見守るような翫雀さん。
あれ?この役、どうして又五郎さんじゃないんだろう。



一谷嫩軍記  熊谷陣屋(くまがいじんや)

熊谷次郎直実:吉右衛門    源義経:歌昇改め 又五郎
堤軍次:種太郎改め 歌昇    藤の方:壱太郎
亀井六郎:種之助       片岡八郎:米吉
伊勢三郎:隼人        駿河次郎:吉之助
梶原平次景高:由次郎     相模:芝雀
白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清:歌六


やはり違っていた。
義太夫狂言のこってりした味がよく出ているのが松嶋屋。
播磨屋さんのほうはもう少しさらりとした印象だ。
大きく違うのは、最初から陣屋に相模がいること。
首実検の場面の直実の妻への対応のしかた。
そして、花道の直実の台詞。
弥陀六の台詞が乗り地ではない、等。

ただ、やり方は違えど、大薩摩が入って最後にゆっくり時間
をかける直実の引っ込みは大きな見せ場。吉右衛門さんらし
い表現で、深くやるせない悲しみが伝わってくる。
義経を演じられた又五郎さんも好印象。
たっぷり味わった。

来週もう1回観劇予定。

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二月花形歌舞伎(松竹座)夜の部

2012-02-26 | 観劇メモ(伝統芸能系)

公演名    二月花形歌舞伎
劇場     松竹座
観劇日    2012年2月5日(日)と18日(土)
座席     3階


夜の部は初めてではない演目が2つ。
2週間ぶりの2月18日、舞台は確実に進化していた。
「すし屋」のほうは出演者全員の呼吸、間がぴったり合っており、
その分愛情や苦痛、悲しみが深く感じられた。
「研辰の討たれ」のほうは客席と舞台が完璧に一体化。観客が手
を叩いて喜ぶ爆笑喜劇になっていてビックリした。

平日は手がグッタリ。ほんとに毎日数行ずつしか書けないので、
ナントもう公演が終わってしまうよ~~~(泣&笑)。



義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) すし屋

いがみの権太:愛之助   弥助実は三位中将維盛:染五郎
梶原平三景時:獅童    娘お里:壱太郎
若葉の内侍:米吉     弥左衛門女房お米:吉弥
鮓屋弥左衛門:歌六


<あらすじ>
下市村の釣瓶すし屋は連日大勢の客で溢れている。店を営む弥左
衛門は、その昔、助けてもらった平重盛への旧恩から、その子息
の維盛を使用人の弥助として匿っている。しかしこれが源頼朝の
重臣の梶原景時に知れ、維盛の首を差し出すように命じられてい
た。一方、弥助に恋していた弥左衛門の娘のお里は、ある晩訪ね
てきた親子が維盛の御台所若葉の内侍と、一子六代である事実を
知り三人を逃がす。しかし、弥左衛門の息子で放蕩者の権太はそ
の想いを裏切り、維盛詮議に来た景時に、褒美欲しさに維盛の首
と縄にかけた内侍親子を突き出す。怒った弥左衛門は思わず権太
を刺すが、その時若葉の内侍と六代が現れる。驚く弥左衛門達に
権太が明かす、隠された真実とは...

(歌舞伎美人 サイトより抜粋引用)

谷太夫さんの出語りが一気に義太夫狂言の世界へと誘う。
ええやん、ええやん~♪
浅草の舞台を観ていないので、愛之助さんの権太はこれが初見。
しかも上方版といえば、2回の巡業で拝見した仁左衛門さんのお
手本権太がつねに目の前にちらつく。
とはいえ、上方一(ファン目)のセクシー大腿筋&上腕二頭筋の
持ち主♪ 風貌的には愛之助さんの権太はイメージぴったり。

開幕4日目に観て気になったのが、鎌倉方に差し出した若葉の内
侍と六代君(実は権太の妻子)との別れの場面。「下市村茶店の
場」がないので妻子への想いはここですべて見せるしかない。
前回は「褒美の金たのんまっせー!」と舞台中ほどで叫んでおり、
本当に褒美が目的かと思わされたが、今回はちゃんと花道まで走
り出て褒美のことを叫びながらも、二人の背中を見送る途中で膝
からガクッとくずおれ、泣いていた。もう断然このほうがいい!
立ったまま涙があふれていた仁左衛門さんとも若干違う表現だ。

権太の最期。皆に見送られつつ、手は前で合掌し、寄り目のまま
何度もヒクッ、ヒクッとなりながら幕切れとなったのが前回。
今回は寄り目でヒクッヒクッとなりながらも、幕が閉まりかける
と光の中で権太の表情がやわらいでいるのが見えた。いい顔だ。
言いたいことを伝えることができた安堵の笑み、だろうか。忠義
の証、父への愛情・・・すべて入り混じっているのかもしれない。
余韻のある権太の幕切れにようやく満足~♪

染五郎さんの弥助は優男風だがぴしっと通った気品があり、他の
演目で見せるコミカルな所作との切り替えが見事。弥左衛門と二
人、主従関係が入れ替わる場面にも納得。出演者中、染五郎さん
が一番起伏の激しい1日だと思うがそこが見応えにもなっている。

壱太郎さんのお里は弥助LOVEなそぶりがほんとに可愛い。前回は
夫指南の場面でまだ遠慮があるように見えたが、18日にはお手本
を演じる時と、自分に戻って恥じらう時の落差がくっきり。面白
みが増していた。権太の最期の場面でも情の細やかさを感じる。

吉弥さんはいつもの艶っぽさを完全に消して権太の母になりきっ
ており、小悪党の息子の嘘にころっと騙されるところに、母親な
らではの弱さ、断ち切れない無償の愛情が伝わる。

父親としての想いと忠義の心を複雑に絡めながら、一番泣かせて
くれるのが弥左衛門の歌六さん。18日はさらに権太への愛情、孫
への想いが強く感じられた。やっとほめてもらえると嬉しそうに
振り返る権太を刺すタイミングも、権太が真実を明かしてゆく場
面での受け入れ方も、愛之助さんとの呼吸がぴたっと合って安心
して泣ける。





研辰の討たれ (とぎたつのうたれ)


守山辰次:染五郎    平井九市郎:愛之助
平井才次郎:獅童    八見伝介:亀鶴
小平権十郎:松也    宮田新左衛門:宗之助
中間市助:薪車     湯崎幸一郎:錦吾
粟津の奥方:高麗蔵   平井市郎右衛門:友右衛門
吾妻屋亭主清兵衛/僧良観:翫雀


<あらすじ>
粟津城中の侍溜りの間には、泰平の世をもてあます大勢の若侍が
所在なげにしていた。その中には、殿様や家老の刀を研いだのが
縁で、先ごろ町人から侍に取り立てられた研屋の辰次もいた。う
まく取り入り侍となったものの、根っからの町人根性は抜けず、
媚びやお追従を並べたてる辰次に、周りの侍たちは我慢を堪えて
いた。聡明な家老の平井市郎右衛門は、余りに鼻持ちならないの
で、皆の前で辰次を激しく罵倒し、唾をはきかけ去っていく。悔
しくてならない辰次は、市郎右衛門を待ち受け、だまし討ちで斬っ
てしまう。平井の長男九市郎と次男の才次郎が駆けつけ、敵討ち
を恐れる辰次は逃げ去り、九市郎と才次郎は敵討ちの旅に出るの
であった―

(歌舞伎美人 サイトより抜粋引用)

「野田版 研辰の討たれ」は私を歌舞伎に引き入れたお芝居。
初めて松竹座の敷居をまたいだ思い出深い演目だ。勘三郎さんの
人気もあり、またチケットの買い方もわからず、満席の劇場の
3階3列辺りで見たと思う。
(あの時は3階席で見ても楽しい演出があった♪)
面白いな~!なんて面白いんだろう、これが歌舞伎というものな
のか、それならもっと見たい、と心に決めたのだった。
なので歌舞伎版オリジナルがどれほど面白いのか、またあの時、
自分が見たものは歌舞伎だったのか演劇だったのか、そんな検証
をするのも今回の観劇の目的だったりする。

さて、ここで問題です。
「野田版と歌舞伎版の違い。粟津城の家老、平井市郎右衛門の直
接の死因は何だったでしょう?」
正解は、野田版では脳卒中。辰次の仕掛けたからくり殺人人形を
見て仰天、そのまま息絶えたのを、死因がそれでは家名に傷がつ
くからと辰次に斬り殺されたことにしたのが敵討ちの発端。
(辰次は脳卒中のことは知らずに敵討ちによって死んでしまう。
そこがあのホロリとさせる余韻につながるのだと思う。)

今回の歌舞伎版では辰次が直接殺めていた。落とし穴の横に取っ
てあった大きな石で頭を殴打し、その後何度か刀で斬っていた。
なので、敵討ちといえども、しょせんただの人殺しじゃないか!
という意味合いは野田版のほうが強く、歌舞伎版では辰次に同情
の余地はないように思えた。

ということで、最後の芝居的落としどころはあまり気にせずテン
ポのよさ、ばかばかしさを楽しむことにした。
本水をつかったり、今でいうリフトのような篭が登場したり、目
を見張る演出もある。(そのために犠牲になる場面転換の待ち時
間と回数の多さは改善希望。)

媚びへつらいながら、たとえみっともないと言われようが、死ぬ
のが怖い~!と言ってしまう辰次の醜態を、染五郎さんが面白可
笑しく演じている。2週間の間に命乞いの場面は進化してかなり
しつこくなっているように感じた。

平井兄弟の九市郎役の愛之助さん、才次郎役の獅童さんは、辰次
を追いかけて客席を走り回ったり、息を切らして台詞が言いづら
くて笑ってしまったり。そんなこんなもすべてひっくるめて巧み
に(?)客席を巻き込むことに成功している。
18日はあまりの可笑しさに別の意味の拍手が何度も起きていた。

2月5日はカーテンコールがあったが、18日にはなかった。
楽日はどうなるのだろう?

コメント (2)
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二月花形歌舞伎(松竹座)昼の部

2012-02-09 | 観劇メモ(伝統芸能系)
公演名    二月花形歌舞伎
劇場     松竹座
観劇日    2012年2月5日(日)
座席      3階

ビギナーな私が言っても全然意味ないのだけれど。
たしかに今まで見たことない、こんな歌舞伎♪ 今月の松竹座。
昼夜通しで見てとにかく笑った笑った。ほんまに楽しかった。
で、思った。これも紛うことのない歌舞伎やわ~。
アッタリマエやん! 歌舞伎役者さんたちがやってるんやもん。
どこよりも先に大阪で見せてもらえてありがとう!

「二月花形歌舞伎」グッズの紹介が歌舞伎美人に >> こちら
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慶安の狼(けいあんのおおかみ)丸橋忠弥

獅童:丸橋忠弥     愛之助:野中小弥太
染五郎:由比正雪    亀鶴:田中格之進
松也:石山平八     薪車:内藤主膳
宗之助:本吉新八    錦吾:廓念
高麗蔵:忠弥妻節    竹三郎:忠弥母藤
友右衛門:金井半兵衛  歌六:牧野監物


<あらすじ>
徳川三代将軍家光の治世、多くの大名家を取り潰した結果、天下
は俄浪人達で溢れていた。本郷の居酒屋「柳屋」には槍術の名手
丸橋忠弥と由比正雪の門弟達浪人の姿があった。そこへ、旧友の
野中小弥太がやって来て、忠弥を藩へ推挙していると話すが、
忠弥はそれを固く断る。実は忠弥は由比正雪達と幕府転覆の計画
をたてていたが、計画に邪魔となる小弥太を殺せと要求されてお
り、苦悩していた。いよいよ計画が決行されようという時、忠弥
は酒に酔って計略を大声で豪語する。そんな忠弥の軽率さに忠弥
配下の本吉が危惧の念を抱き、異を唱えだした。悩む正雪だった
が計画の為に、本吉に忠弥を撃つことを許すのであった。

(歌舞伎美人 サイトより抜粋引用)

幕開き前の重厚でレトロなテーマ音楽。ムム、何かが違う。
あの逆伝説の「吹雪峠」から一変。まさかの硬派芝居にビックリ。
獅童さんの丸橋忠弥、えらいカッチョイイ。旧友をつねに気にか
ける野中小弥太役は愛之助さん。幕府転覆の首謀者、由比正雪役
には染五郎さん。亀鶴さん、松也さんは昼の部の注目ユニット。
ナンデそうなる?的青春群像劇が切なくて。ハラハラはらり(涙)。
大がかりなセットの立ち回り、3階から観るときれいだった。



                   
「鳰の浮巣(におのうきす)」より
大當り伏見の富くじ(おおあたりふしみのとみくじ)

                  
染五郎:紙屑屋幸次郎   愛之助:信濃屋傳七 
獅童:黒住平馬      亀鶴:芳吉
松也:喜助        壱太郎:幸次郎妹お絹 
米吉:新造雛江      宗之助:千鳥
薪車:男衆虎吉      吉弥:仲居頭おとり
竹三郎:熊鷹お爪     翫雀:鳰照太夫
歌六:雪舟斎       神官・小春:千壽郎
          

<あらすじ>                    
元は質屋佐野屋の若旦那であった紙屑屋幸次郎は、潰れた店を再興
しようと一生懸命働いているが、遊女の鳰照太夫に出会ったことで
見惚れてしまい、うっかり犬を踏みつけ脛を噛まれるような始末。
今では鳰照太夫のことで胸がいっぱい。幸次郎の妹のお絹は借金の
為に島原の茶店で働いており、黒住平馬という侍が横恋慕し強引に
口説こうとしている。そんなある日、幸次郎は一攫千金を夢見て、
伏見稲荷の富くじを買うことにした。その富くじが何と大当たり!
しかし本当の札は手違いで紙屑籠と一緒に川に捨ててしまっていた!?
どうする幸次郎!!

(歌舞伎美人 サイトより抜粋引用)

ノリノリ染ちゃん、エンターテイナー魂炸裂だ~。ちょびっとアヤ
ウイ上方言葉も突き抜けた感があるのは『東京の人間がやる上方の
お芝居』(ぴあインタビューより)を貫いているせいだろうか。
「いま」ネタ、歌舞伎ネタなどギャグや小芝居が満載で、とにかく
休むヒマもないぐらい出演者一丸となって徹底的に笑わせてくれる。
鳰照太夫のぷにゅぷにゅキャラは、もう翫雀さんしか考えられない♪
愛之助さんの信濃屋傳七はシブくて素敵。竹三郎さんの台詞の可笑
しみ、亀鶴さんのメイク、小春ちゃん♪と〇〇(川の生き物)等々。
システィーナ歌舞伎の阿国を彷彿とさせる壱太郎さんの踊りも♪
とにかく楽しくて楽しくて、笑った笑った~!!



幕見席はどの演目も2,500円なり。
この日はたくさんのファン仲間にお会いできウレシかった~。
ハヌルさんとは昼後、夜後もおしゃべりを楽しみました♪
夜の部はまた後日。
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初春文楽公演@国立文楽劇場(1月後半昼の部)

2012-01-29 | 観劇メモ(伝統芸能系)

公演名    初春文楽公演
劇場     国立文楽劇場
観劇日    2012年1月21日(土)



義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
 道行初音旅
 河連法眼館の段


いやー、大興奮。
「道行初音旅」では幕が開くと見渡すかぎりの桜。床の皆さん
の裃まで桜になっている。歌舞伎ならただ華やかさに気をとら
れているところだが、今回初めて歌詞が気にとまった。
~忠(ちゅう)と信(まこと)の武士(もののふ)に~、とか
~雁と燕はどちらが可愛い・・・花を見捨つる雁金ならば~
<雁金>が「河連法眼館の段」の冒頭に再び出てくるところとか。

「河連法眼館の段」の切は人形と床の双方がものすごいパワーで、
深い悲しみに包まれた舞台に途中から涙が止まらなかった。
歌舞伎だとどうしても役者の魅力や仕掛けに気をとられがちだけ
れど、狐の存在感や子狐の親への思慕、という点ではとても純度
の高い「義経千本桜」の世界を味わえた気がする。
勘十郎さんの狐忠信はアスリート並みの運動量を伴うケレンで目
を惹き付けつつ、一方で「狐火は(親を想って)身を焦がす炎」
であることを繊細な動きで見せ、胸がキュウウンとなった。
(ケレンでは鼓を破って出てくるシーンから宙乗りまで。感情表
現では狐のポーズをしながらの身悶え、人間なのに突然後ろ足で
頭を掻く仕草等、文楽でしか見ることのできない狐忠信♪)


壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)
 土佐町松原の段
 沢市内の段
 山の段


去年の浅草の「壺坂観音霊験記」と違って、お里が観音様にお詣
りする場面から始まった。
沢市さん、納得したのかと思いきや、あんなことをするとはねー。
途中、お里が沢市を探しながら上から覗き込むところで、床を見
ると嶋大夫さんも前かがみの姿勢になっていた。
・・・・・・じつは義経千本桜に力が入り過ぎたせいか、途中か
ら全く記憶なし。。。ごめんなさい~。
でも、最後はにっこりほっこり。後味よく劇場を出た。

●MSN産経フォトに「義経千本桜」の写真あり >> こちら
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初春文楽公演@国立文楽劇場(1月前半昼の部)

2012-01-22 | 観劇メモ(伝統芸能系)
松の内に文楽劇場に行くのは初めて。
1月前半昼の部はこの3演目だった。
お正月らしいおめでたい演目。大河ドラマにかけたものなど。
菅原伝授は・・・松竹梅だから?(えへ。)
チケット窓口に行くとこの日は「全席売り切れ」になっていた。
(かなり記憶が薄れているのが残念・・・。)



公演名    初春文楽公演
劇場     国立文楽劇場
観劇日    2012年1月8日(日)


七福神宝の入舩(しちふくじんたからのいりふね)

龍の頭がいきなりヌウッとこっち向いて上がってきたかと思うと
くるり~と左を向いた。船だった。
辰年だから龍なのか、そもそも七福神の乗る船が龍なのか?
おなじみの七福神が船の上で祝宴を開き、各自芸を披露してゆく。
寿老人は三味線、布袋さんは腹鼓! 大黒天は胡弓(この時は床
をしっかり拝見、奏者は鶴沢寛太郎さん)、弁財天は琵琶を演奏。
福禄寿が長い頭を活かして(ろくろ首みたいに)角兵衛獅子の真
似をした時は声に出して笑ってしまった。恵比寿はエビで鯛を釣っ
た? 毘沙門天は?(完璧に忘れた!ごめんなさ~い。)
最後に真ん中の仕切りが割れて人形と人形遣いさんが出てこられ、
手ぬぐい撒きが始まった。まるでお人形が撒いているみたい~♪
3列目だったけれどこちらには全く飛んでこなかった。
のんびりおおらかでおめでたい演目だった。


菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
 茶筅酒の段
 喧嘩の段
 訴訟の段
 桜丸切腹の段


車曳と寺子屋以外の段を見るのは文楽、歌舞伎ともに初めて。
後日談がようやくわかったものの、私には相変わらずよくわから
ない苦手な演目。
三つ子のお父さん、四郎九郎の古希のお祝いから始まるので、お
めでたい話かと思いきや・・・お父さんがかわいそうすぎる!
三つ子の父として菅丞相から「白太夫」の名前までもらったのに。
庭の松、梅、桜の木が三兄弟と呼応するように不吉なことが起き
たり、祝いにかけつけたのは嫁三人だったり、遅れてきた息子たち
が次々と別れを願い出るようなことばかり言ったり・・・。
勘当を願い出た松王丸を追い出し、今度は桜丸の切腹。
そんなことを受け入れてしまう、いや、受け入れざるをえない父の
気持ちって、立場ってわかりづらい。感情移入ができない。
こんどは菅丞相とこの親子との関係がよくわかる前段のお話を見な
くてはと思う。

蓑助さんが遣われる桜丸。歌舞伎で見るようないかにも女形、とい
うような所作ではないが、動きはやはり細やかで柔らかい。松王丸
は剛胆な印象だった。


卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)
 平太郎住家より木遣り音頭の段

京都の三十三間堂は後白河上皇が建立、造営には平清盛が当たった。
なるほど~これは大河ドラマがらみだな。
有名なお寺の由来にこのようなエピソードがあったとはね。いわば
「芦屋道満大内鏡 葛の葉」の植物版。初めて知るあまりに不思議で
悲しいお話に涙涙であった。

平太郎とお柳の夫婦は前世は梛(なぎ)と柳の木であり、枝を交え
た夫婦だった。この枝を伐って夫婦の仲を裂いたのが蓮華坊という
修行僧で、蓮華坊は白河法皇の前世の姿だった。梛と柳と蓮華坊の
濃ゆ~い因縁により、後の世に再び夫婦が引き裂かれることに。

白河法皇は頭痛持ちで、熊野大権現のお告げによると、柳の梢にあ
る前世の髑髏を納めれば頭痛が治るとのこと。そこに三十三間堂を
建立するために柳の大木が伐り倒されることになった。
驚き、涙するお柳。自分は柳の精だと夫に言う。柳が伐り倒された
ら平太郎とも子供のみどり丸とも別れなければならないと。

お柳さん、髑髏を持ってましたねー。昔、自分たちを引き裂いた憎
らしい蓮華坊の髑髏をときどき苦しめてたんだろうか?
お柳さんが形見に髑髏を差し出し、フッと消えた。
(ここが一番の見せ場。大木が倒れた瞬間だったのか~。)

次の場面では伐採された大木が人夫たちに引かれて運ばれるところ。
これがビクとも動かないので夫と子供が呼ばれる。平太郎が旗振っ
て木遣りの音頭をとり、ちいちゃいみどり丸が綱を引くと木が動き
出した・・・う、ナンダカナア~。
(平太郎もみどり丸も元気ないし、悲しい。)
途中から津駒大夫さんの声に同調しっぱなし。
この話を後世に伝えるためにこの物語ができた、という意味の語り
もあったが、ほんとに文楽向きの演目だと思った。
「北野天神縁起絵巻」なんかも文楽でやっていただきたいものだ。

数日後、京都の平等寺で偶然この話を聞いてビックリした。
(三十三間堂の棟由来についてはここが詳しい。)
コメント (2)
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永楽館大歌舞伎 バスツァーと「引窓」

2011-12-29 | 観劇メモ(伝統芸能系)
PCが壊れた10月以降、観劇メモをほとんど書いていない。
毎年書いていた永楽館のことだけでも思い出し書きしてみる。
いまごろだけど。

今年はバスツアーが画期的にバージョンアップした年。
おかげで日帰りでの昼夜2回観劇が実現♪うれしくってチケット
2枚取ったものの、肝心のバス申し込みを忘れていた私、帰
りのバスがすでに満杯に!!!!!
うぇーん夜をあきらめるしかないよ~~~~と大騒ぎしていたら
またまたナントカしてもらえたんですねー ♪ ありがたや~。
これです、私が出石マジック!と呼んでいるのは。
聞くところによると、バスツアー用には大型バスを手配されたよ
うで、帰りの新大阪行きのバスには予約なしでも乗れたくらい
この対応のすばやさにはほんとに感謝感謝。
なお、バスツアー申し込み先着30名には愛之助さんのサイン
色紙が永楽館館長から手渡されるというプチセレモニー付きで、
着物姿の館長さんが素敵♪とツイートしたところ、またたく間に
男前♪ イケメン館長♪ いう噂が広まりすっごく楽しかった~!
1日中雨降りだったけど、気持ちはハレバレ

この日はpuspitasariさんと現地で合流。昼の部と夜の部の間
にカフェ&おしゃべりをたっぷり楽しんだ。一人歩きではわから
なかった出石の町の魅力をプチ発見。
ありがとうございました!
ツイッターで知り合ったpenjuroさんとは幕間にご挨拶♪ なん
と帰りは同じバスだったよ~。おつかれさまでした!




観劇日    2011年11月5日(土)昼の部・夜の部
劇場     出石永楽館
座席     1階 昼:花道横・夜:最前列

双蝶々曲輪日記 
一、  引窓  一幕

 
南与兵衛 後に南方十次兵衛:愛之助 
女房お早:壱太郎   三原伝造:隼人
平岡丹平:當十郎   母 お幸:吉弥
濡髪長五郎:錦之助


芝居小屋の観劇の魅力はなんといっても一体感である。
出演者と観客、観客どうし、劇場と観客、そのどれもがチームの
一員といってもいいと思う。
今年さらに感じたのは、いまリアルタイムで物事が進行している
かのような臨場感・接近度。おかげですっかり話に入り込み、身
内のように笑い、思う存分泣いてしまった。
以下、有名な演目なのであらすじ等は省き、出演者の印象だけメ
モしておきたい。(台詞はネットの床本で再チェック。)

<愛之助さんの十次兵衛>
なにしろにわか仕立ての武士なのだ。母者人、女房、今帰った、
と時代がかった所作と言い回しのすぐ後に、コロッと町人言葉
で母と妻に話す十次兵衛。去年と同様、今回も我當さんに習っ
たという愛之助さんだが、この落差はうまく見せていた。
人相書きの場面での台詞、十次兵衛と与兵衛の口調の切り替え
にも優しい与兵衛の心情が伝わってきた。
賜ったばかりの十手やら縄を念入りに嬉々として手入れする様
子には、代官に任ぜられた喜びがあふれ出て、見ているこちら
も楽しくなった。

平岡と三原が帰った後、お早に「長五郎とやらを捕らえるのは
本気か?」と聞かれ、この役目を仰せつかった理由の一つは
「関口流の一手に覚えがある」からだ、と十次兵衛が説明する
台詞がある。この時、愛之助さんが顔の右横に右手を出し、
手裏剣を投げるポーズをしているのに気づいた。それこそ後
場面で「濡髪、捕った!」と高頬のホクロを取り落とす時の
ポーズではないのぉ。
これまで何度か「引窓」を見たけれど、路銀を投げつけてホク
ロを取り落とす場面だけは、ありえへん!と思っていただけに
これで腑に落ちた。むしろ十次兵衛に関口流の心得があるから
こその話の展開、演出だと納得した次第。
(ただ、ネットで検索しても、関口流が手裏剣の流派であると
はどこにも書かれていないが・・・。)

手水鉢に一瞬映った姿に、十次兵衛がハッとして2階の濡れ髪の
ほうに目をやる場面。気づいたお早がすばやく引窓をピシャリ!
優しいはずの十次兵衛の険しい顔、お早の体を張った敏捷な
きに緊張感が高まる、まさに引窓がらみの大きな見せ場だ。
「こりゃなんとする女房」「もはや日の暮れ」と答えるお早に
「はて面白し、面白しーーーーーっ!」と返す十次兵衛の声の
大きさ、台詞回しにはいかにも不可解で合点がいかないという
想いがこめられており、それこそ面白い味わいがあったと思う。

そして、やっぱり母者人、お幸との人相書きのやりとり。
「母者人、あなたなぜものをお隠しなされます」
「鳥の粟を拾ふやうに溜め置かれたその銀・・・」
ここのくだりで十次兵衛、というか与兵衛は本当にこの母親の
ことが好きなんだと思えて、涙がダ~~~。
濡髪にそれとなく山越えの道順を教える場面もまた泣けた。

<壱太郎さんのお早>
眉を剃ってお歯黒ではあるけれど、どう見ても玄人っぽさの残
る妻であり、嫁である。(とはいえ、壱太郎さんは可愛らし
し、まだどうしても若さを隠せない感じ。)
新町の郭言葉がなかなか抜けないのを姑に指摘されるが、腹を
立てることもなく、あっけらかんとした明るい性格で、むしろ
姑想いのいい嫁だなとも思う。

壱太郎さんはどなたに習っておられるのか、情の細やかさが感じ
られるとてもいい女形さんだなと今回初めて思った。
(今までは舞踊を拝見することが多かったので気づかなかった。)
姑といっしょに放生会の準備をする甲斐甲斐しい姿もよかったが、
お幸が濡れ髪の髪を剃り落とす場面が特によかった。
たとえば、鏡を用意する時にはぁ~と息を吹きかけ、鏡を磨いて
いるところ。鏡を出してから、濡れ髪の真横に自分の顔を持って
いき、ごく自然にさりげなく鏡の見え方をチェックして鏡の向き
を調整しているところ。
一見どうでもいいようなことだけれど、世話物ではこういう積み
重ねがリアリティを感じさせ、芝居全体に命を吹き込んでいくの
だと思う。これは歌舞伎でも現代劇でも同じじゃないだろうか。
これは自分が以前からやりたかった役、と口上で話されていたが、
私は好きですよ、壱太郎さんのお早。

(ここまで書いて1カ月以上たってしまった。記憶がアヤシイ。)

<吉弥さんのお幸>
昨年はお俊を演じてとても艶っぽかったのに今年はついに(笑)。
嫁であるお早と放生会の準備をしたり、父の職を継いで武士となっ
十次兵衛のことを喜んだりしている時は、シャンとした頼りがい
のある武家の母親のイメージ。そこから一転、十次兵衛の捕える
相手が実の息子であるとわかってからの不振な行動、台詞の一つ
一つに気持ちがこもっていて、涙なくしては全く見られなかった。
2回続けて見て、2回ともダダ泣き。
あの場面は小屋じゅうが泣いていたと思う。
十次兵衛に対しては遠慮と気遣い。「なさぬ仲」という言葉が
これほど重いとは。
長五郎に対しては実の親ならではの無条件の愛と、何がなんでも
きて欲しいと願う気持ちが強く伝わってきた。
父親譲りの高頬のホクロの台詞にも、母親自ら髪を剃ってやる
ときも涙。ホクロはできない、とお早にやらせようとするところ
だけは笑ったけど。
吉弥さんにはあまり老け役はしてほしくないけどこれはハマリ役。

<錦之助さんの濡髪長五郎>
こんなきれいな顔の濡髪長五郎は初めて見た。
母親に「死ぬことだけが男じゃない」と言われた時の目をつむっ
て観念した顔もフォトジェニックだった。
母にこんなこと言われた日にはツライヨね~、男なら。
さっきはオトコマエ~と見とれていたのに、その目がみるみる
充血していき真っ赤になり、そのまま目の端に涙がたまってあ
ふれそうになっているのを見て、私のほうが先に涙があふれた。
「剃りやんす落ちやんす」の台詞がしばらく耳に残っていた。
今回は錦之助さんの濡髪が見られて本当によかったと思った。
ええもん見せていただいた~♪
この芝居の後が口上でよかったと心底思う。だって、口上の時
面白すぎる錦之助さんを先に見ていたら、その余韻できっと
これほど泣けなかったのに違いない(笑)。


楽しすぎた口上のことも、もう一つの演目「茶壺」のことも書き
たかったけれど今年の永楽館はこれぎり~。
コメント (2)
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吉例顔見世興行 昼の部 南座

2011-12-16 | 観劇メモ(伝統芸能系)
劇場     京都南座
観劇日・座席    2011年12月10日(土)3階10列
          2011年12月23日(木・祝)1階15列     



寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)

工藤左衛門祐経:我當   曽我十郎祐成:孝太郎
曽我五郎時致:愛之助   大磯の虎:吉弥
化粧坂少将:壱太郎    八幡三郎:萬太郎
近江小藤太:亀鶴     鬼王新左衛門:進之介
小林妹舞鶴:秀太郎




南座顔見世で曽我ものを観れば年の瀬だな~って思うようになった♪
「寿曽我対面」は私には2回目。
見た目にパア~ッと華やかなのが顔見世らしくていい。
前に見た舞台では口上入りだったせいか前後が省略されていたような。
最初に大名たちだけで登場したり、友切丸が見つかったと新左衛門が
駆け込んでくる場面はなかったように思う。
以下、筋のおさらいを兼ねてメモしておこう。

集まってきた大名たちが一言ずつ述べ定位置に着く。
市松格子が上に折りたたまれると「松嶋屋っ!」と大向こうの声。
我當さんだ。舞台中央上段に現れた工藤に視線が集まる。
工藤祐経以下、勢揃いの図。みなが工藤に祝辞を述べてゆく。
強烈な個性の梶原親子は延郎さん、松之助さん。
工藤のもとで立ち働く家臣は小藤太が亀鶴さん。三郎が萬太郎さん。
大磯の虎は吉弥さん。最高位の太夫にふさわしい絢爛な衣装を纏い、
色気も品位もあるオトナの女。(キレイ~。衣装おもそ~。)
一方の化粧坂少将は壱太郎さん。可愛らしさを漂わせながらも、華
麗に咲き誇る若々しい花だ。(カイラシ~。)二人並んで両手を広げ
た後ろ姿はほんに贅沢な眺めだった。
ひときわ目を引く姿は秀太郎さんの小林妹舞鶴。気が強そ~!
女武道の舞が凛々しく、カッコイイ。

工藤が階段を下りて高台に着く。
いや、その前にいったん前方に出てお礼と、祝宴開催の挨拶をする
のはこのタイミングだった?(イヤホンガイドによれば、客席への
挨拶も兼ねているとのこと。)
舞鶴のとりなしで工藤に会うために花道をやってくる曽我兄弟。
なよやかな十郎は孝太郎さん、細やかな動きが女性的。
血気盛んな五郎は愛之助さん、万事が十郎と対照的な荒事の所作。
五郎は長袴の中でも足の親指を立てていいるのだと、これまたイヤ
ホンガイドの解説。愛之助さんもそうしていた!(に違いない。)
愛之助さんのむきみ隈、顔見世ではもうおなじみになったね。

二人の服装が貧相だの、汚いだの、祝宴の面々ブーイングの嵐の中、
若造二人をきちんともてなす工藤の態度が気持ちいい。仇討ちを察知
するや、祝宴は祝宴としてその場を納める工藤の度量、大人の振舞。
(見方を変えれば大人が子供を丸め込んだようにも見えるけど。)

五郎は五郎で隙あらば工藤を討とう討とうとする。
腰を落とした体勢でジリジリと力足で工藤に接近していくところ、
それを観ている私も力が入る。五郎の後ろから留めの体勢でついて
ゆく十郎もすごい。
五郎、工藤からの盃を三宝から取る前に三宝をメリメリッ!
(1階で観たときは本当に音が聞こえたっ♪) 
化粧坂少将からお酒を注いでもらい、飲み干すのかと思いきや、
エエイと盃を後ろに投げ、三宝を両手で掴んでグシャグシャに。
(ヒャ~、乱暴者だぁ。)十郎に制され、見得をきめた両手は
三宝の破片を握ったままだった~。

工藤がたしなめるように言う。
曽我家が紛失した友切丸が見つかるまでは大願成就は叶うまい、と。
悔しがる兄弟。そこへタイミングよく友切丸が見つかった~!と
刀を持参する新左衛門は進之介さん。
(これで松嶋屋親子そろい践み。にざ様以外。)
いざ仇討ち・・・と迫る二人に、富士の狩場のお役目が終わるまで
は無理、と工藤。悔しがる兄弟にポンと投げる紫色の袱紗包み。
そこには狩場の通行手形が!

工藤が皆の前で、自分が討たれる約束をするところ、「実盛物語」
で太郎吉に約束する実盛にチョット似ているね。
最後は舞鶴、五郎、十郎に虎、少将が加わった富士山の見得。
(1階で観ると5人の背景に富士山の絵がピタッとおさまっていた。)
気持ちハレバレ後味よく、なかなか見応えのある舞台だった。

なお、この舞台「寿曽我対面」は1月6日にNHK Eテレで放送!


お江戸みやげ(おえどみやげ)

お辻:三津五郎  おゆう:翫雀  常磐津文字辰:竹三郎
阪東栄紫:愛之助  お紺:梅枝  市川紋吉:吉弥
角兵衛獅子兄:萬太郎 鳶頭六三郎:権十郎 女中お長:右之助
 

あらすじ
梅のほころぶ湯島天神。結城紬(つむぎ)の行商人で、倹約好きの
お辻とおおらかなおゆうは、江戸土産に境内の宮地芝居を見物する
ことにします。そこで人気役者の阪東栄紫に心奪われたお辻。栄紫
にはお紺という恋人がいますが、養母常磐津文字辰はお金欲しさに
娘のお紺を妾奉公へ出そうとしています。これを聞いたお辻は、初
めて惚れた男のために全財産を投げ出して二人を助けます。栄紫を
見送ったお辻は、お礼にもらった栄紫の片袖を嬉しそうに握りしめ
るのでした。数々の名作を残した川口松太郎の作品で、性格の対照
的なお辻とおゆうのやりとりが楽しい心温まる人情物語。
(歌舞伎美人より「四月大歌舞伎」のあらすじを勝手に引用)


              
「江戸唄情節」「遊女夕霧」などの川口松太郎の作。やはり、まず
原作が素晴しい。(「遊女夕霧」の感想はこちらこちら。)
録画映像で観た芝翫さんのお辻と、富十郎さんのおゆうがことのほ
かよかったので今回も楽しみにしていた演目だ。
「遊女夕霧」でも新潟のお国訛りが魅力的だったように、このお話
もお国訛りが人情劇をより味わい深いものにしている。
また「江戸唄情節」(三味線やくざ)と同じく、興行・芝居の世界
に生きる人々の描写が細かいので、その中に入ってゆくファン代表
としてのお辻さんに安心して身を委ねられ、まるで我が事のように
喜んだり、切なくなったりできるのだ。
三津五郎さんのお辻婆。ふだんは立ち役で見慣れているからか田舎
訛りで登場した時から面白そう!というニオイを発している。
翫雀さんのおゆうは言わずもがな。見るからに微笑ましい二人組だ。
本物のお金持ちのお大尽じゃなく、働きづくめでやっとのことで貯
めたお金を好きな役者に会うために使う、それがどういうことか。
私たち歌舞伎ファン・芝居ファンにはわかりすぎる。
また、全財産を好きな役者とその恋人のために使う。その気持ちを
アホやなあ~とは思うけれど馬鹿だとは思わない。片袖を胸に抱い
て「これが私のお江戸みやげ」という台詞には拍手拍手。
栄紫の去っていった後を目に涙をためながら見つめていた三津五郎
さんのお辻婆に私も涙・・・。うらやましいよ、お辻さん。

そうそう、愛之助さんはお辻が一目惚れする役者の役。
物腰の柔らかな、いかにも女が掘れそうなええ男なんである♪
(当然のことだがここでは愛之助さんじゃなく、ちゃんと栄紫とし
て存在している。お辻を安心して応援できるのはそのせい?ウヒ!)


隅田川(すみだがわ)
斑女の前:藤十郎    舟長:翫雀



舞踊。ごめんなさーい! 気を失ってました。
昼食後だし、イヤホンガイドの清元の解説が耳に心地よいし、前夜
は睡眠不足だし・・・・・・抵抗できませんでした。
そんな私と仲間の皆さんのために、大晦日はNHK Eテレでこの南座の
「隅田川」と「実盛物語」を放送してくれます。ありがたや~♪


与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
木更津海岸見染の場
源氏店の場


与三郎:仁左衛門      妾お富:時蔵
鳶頭金五郎:三津五郎    和泉屋多左衛門:左團次
蝙蝠安:菊五郎




ニザ様の与三郎をようやく生で見る事ができましたよー。
与三郎とお富、この二人だけはビジュアル重視。
ぜったいに、いい男、いい女でなければいけません。
大人の艶気漂うにざ様&時蔵さんコンビ、ほんまによろしーなー。
あの浜辺の出会い、視線と視線が絡み合い、よろけ合い、離れてゆ
く花道と本舞台。
お富さんがいうあの台詞「いい景色だねえ」が早く聞きたくて。
時蔵さんは「いい」で与三郎に定めた視線を、さっと客席に移して
「景色だねえ」の部分を意外にもかろやかに言ったのだった。
玉三郎さんと同じ言い方だけれど、さらに明るい調子で。
その軽やかさが客席に移って、観客もつられて笑ってしまう感じ。
それもありだな~と思った。

源氏店の場の与三郎。
相手がお富だと気がつき、屋敷を値踏みした後、立ち上がって懐手
のまま一歩、一歩近づくあの場面。(脚ながっ!)
「待ってました!」の声が四つ、五つかかった。
じっと固唾をのんで見守る私たち。
「御新造さんぇ、おかみさんぇ、お富さん、いやさ、お富!
久しぶりだぁなあ」「そういうお前は?」「与三郎だ」
一瞬にして緊張感が走り、その後の名台詞。
いちいちカッコよすぎる与三郎♪

菊五郎さんの蝙蝠安。
仁左衛門さんが与三郎をやるなら、ということで幸運にも見られた。
二枚目な菊五郎さんだけど、もう見事にだらしない蝙蝠安になって
おられた。女物の長い着物をひきずって着ている姿やら、多左衛門
に全く頭のあがらないナサケナイところまで。
与三郎と蝙蝠安の二人がほんとにイイ感じなんである。
とくに、お富の家から出た後、オカネをめぐって花道で掛け合いす
る場面が好き!
大歌舞伎の二枚目スター二人が、こんなチンピラな役をこんなに楽
しそうにイキイキ演じているなんて。それを客席から眺めて笑って
いられるなんて、ほんと歌舞伎ってすごいワ。

多左衛門の左團次さんは、いかにも大店の旦那。信頼できる人物と
いうイメージでピッタリ。
だけど今の今までお富の兄であることをどうして黙っていたのか?
この兄妹にどんな過去があったのか? それを考えだすと、一度全
部通しでやってほしい、と思えてくる。
赤間別荘の場も今回は抜けていたし、あの唐突なハッピーエンドに
も実は続きがあることがわかった。(←イヤホンガイドでね~。)
仁左衛門さんの与三郎で、いつか通しでお願いします。


●このブログ内の関連記事
新春浅草歌舞伎 第2部「与話情浮名横櫛」観劇メモ
「与話情浮名横櫛」と3人の団十郎。
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第三回システィーナ歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」(2)

2011-11-23 | 観劇メモ(伝統芸能系)


●第二部
<第一場 フラメンコ>

再び小島さんの舞踊。
こんどは上下ブラックの衣装。下はやはりロングスカート。
花柄の大きなストールを背中に広げて歩いてくる。
ステップ、手拍子、そして今回はストールを広げたまま回す。
マタドールが牛に向かって布を翻しているようにも見える。
そのストールを地面に放置し、苦悶の表情に。
まるでその後の阿国の苦悩を暗示するかのように・・・。
ストールを回す速さや地面への置き方、観客を煽るようなステップ
が12日と13日では少し違っていた。やはりそのつどライブにわき起
こる感情を大事にしておられるのだろうと思う。
またまた引き込まれてしまった。

<第二場 イスパニア カルデロンの家>
日本に残してきた息子、友市のことを思い、寂寥感に襲われるカル
デロン。想いを馳せるうちに次第にダンスの動きになってゆく。
衣装はマタドールのような短めシルエットのジャケットとパンツ。
背筋を伸ばし、ステップも手の構えもマタドールを思わせる振り付け。
さっきの小島さんのダンスが感情の赴くまま流れるように変化して
ゆくのに比べ、カルデロンのダンスは力強く、句読点のはっきりした
ダンス。ソロでは特に、怒りをぶつけるように大きな音を立てるステッ
プが印象的だった。>> 写真はここ

前方花道から幼い友市が現れ、二人でフラメンコの連れ舞になる。
カルデロンが昔、友市に踊りを教えた時の回想シーンらしい。
伊礼さんは洋服、吉太朗くんは着物で同じ振りをする。父を見なが
らうれしそうに目をキラキラさせて踊る友市。途中から拍手が起きた。
最後に二人でポーズを決める。
この父子のフラメンコ、13日に見た時は涙があふれてしまった。

<第三場 北野神社境内 芝居前(鞘当)>
観劇時にはわからなかったけれど、場面タイトルにある「鞘当」を
調べてみたらこの場面は『浮世柄比翼稲妻』(うきよづかひよくの
いなづま) のパロディであることがわかった。二人の男が一人の
女を争う鞘当という言葉はナルホドここから来ているのか~。

本来の「浮世柄~」では本花道から不破伴左衛門が、仮花道から
名古屋山三元春が登場するそうだが、このホールでは五右衛門が奥
の花道から、そして名古屋山三その人が前方花道から登場する。
この場面はちょっと艶っぽい長唄だった。
二人とも深編笠をかぶり、五右衛門は黒地に「雲に稲妻」(不破伴
左衛門の衣装と同じ)、山三は縹色地に「雨に濡れ燕」の衣装。
花道から交互に台詞を言い合い、目の前まできたらお互いの笠の紐
を解き、二人の顔が露に。
五右衛門役の愛之助さんといい、山三役の吉弥さんといい、そろい
もそろってナンテええ男なんやろ~♪♪♪な場面。
(と言いつつ、五右衛門の黄色の足袋になにげに目がいくワタシ。)

「阿国を譲ってくれ」と五右衛門が山三に申し出る。
それはできない、と山三。
二人が喧嘩になりかけた時に阿国が駆けてくる。
(喧嘩仲裁役の<留め女>も「浮世柄~」に登場するらしい。)
二人の男のどっちを取るかと問われて答える阿国の台詞にホッコリ。
「濡れ燕と雷、どちらをとってもいずれのご見物衆にも申し訳ない」。
続けて成駒屋にちなんだ台詞があったらしく拍手が起きていた。(私
にはわからず。)
「それなら楽屋で」という台詞が観客にウケていた。芝居上ではなく
実際の楽屋に3人並んだ光景を思い浮かべ、私も笑ってしまった。

五右衛門と山三、お互いの刀を入れ替えても鞘にぴたりと納まるこ
とに二人が驚く。それならお前も明智の血筋か、と。
どうやらそれが明智家に伝わる二つの刀、○○丸と○○丸(←失念!)
共通の敵は秀吉であることを確かめ合う二人だった。

<第四場 北野神社境内 阿国の定舞台>
阿国の一座が踊っているが最近は誰も興味を持ってはくれない。
なせだろう?と悩む阿国。
そこへ五右衛門がやってくる。「どうしたそんな顔をして。阿国ら
しくないではないか」と話しかけると、「あれほど人気のあった念
仏踊りもいまでは誰も見てくれない。芸の道は難しい」と打ち明け
る阿国。「それは芸の壁だ」と五右衛門は父のことを語り始める。
自分には芸のことはわからないが、昔、父から習ったイスパニアの
踊りがある。それは「魂の踊りだ」。
「魂の踊り?」と言葉をなぞり、真剣に五右衛門を見る阿国、それ
なら一度踊って見せてもらえないだろうか?と懇願する。
俺に踊れるかなあと不安げな五右衛門、じゃ踊るから「笑うなよ」
と、阿国に言っているのに、ここは観客たちが笑ってしまう。
13日は「笑うなよ」の前の「じゃ踊るから」の台詞に観客たちが
反応し大拍手。「二人しかいないのに大勢いるような気がする」と
いう愛之助さんのアドリブにどっと客席が沸いた。

いいか? こうして、こう。こうやって、こうだ。
両手を上げ、掌と指を動かすフラメンコ独特の手の動き。そこに足
の踏み込みがついてゆく。うわ~、すっごい新鮮!ステキステキ。
それを真似て必死についてゆく阿国。
五右衛門の衣装のまま踊る愛之助さんのフラメンコは摩訶不思議。
顔の静止のしかたが見得っぽかったり、阿国と半歩ずれて足を鳴ら
すところが歌舞伎の踊りに似ていたりして、フラメンコと歌舞伎は
は似てるかも?とだんだん思えてきた。
お互いの顔を見ながら回ったりするうちに、やがて二人の踊りがピ
タッとそろってくる。フラメンコで歌舞伎で、洋で和で、ハーフで
ダブル。短いけれど二人が踊る場面、なんて素敵。なんて楽し♪

五右衛門に教えてもらったフラメンコを取り入れ、ついにオリジナ
ルの踊りを完成させた阿国。一座全員、舞台で初披露~♪
歌舞メンコというのか、演奏がフラメンコギターじゃなくて三味線
やら和楽器だし、今まで見たことない振付。とにかくカブいてカブ
いてカブきまくっている。
この時の壱太郎さん、本当に踊りに魅入られイッちゃった人という
感じでどこまでいくんだろうと思った。見ているこっちまで体が熱
くなった。はあ~、もう鳥肌モノでした!
(今回見たフラメンコはどれもスペインのサクロモンテの洞窟で見
たフラメンコとは全然違う感触だったけれど、どれもそれぞれに感
情を揺さぶり、昂りをもたらしてくれる素晴らしい踊りだった。)

<第五場 南禅寺参道>
捕り手たちが集まってきている。ついに追いつめられた五右衛門。
照明が落とされ、闇の中でじっくり味わう大薩摩にぞくぞく~。
五右衛門はどこ? どうなる? という期待感がいやでも高まる。

<第六場 南禅寺山門>
あそこだよね~と予測はついているくせにドキドキ。
パッ!と浅葱幕ではなく会場が明るくなり、出たっ!
きゃーっ、舞台前方の入り口上のバルコニーだよっ!!
黒のベルベット風の着物に金爛どてらをはおった五右衛門。ふてぶ
てしく、さも気持ちよさげに高い所から私たちを見下ろしてる!
(キャーキャー、かっこいい。)

絶景かな 絶景か~な~~~~~
春の眺めは値千金とは小せえ小せえ
・・・・・・・・・・・・
はてうららかな眺めじゃなあ~~~~~


遠い場所にいるのに、愛之助さん、ものすごく大きく見えるよ。
弁天小僧でもそうだったけど、贔屓の役者さんがこういう名台詞
を口にするのは本当にゾクゾクする。お腹に響くええ声~♪
フラメンコもだけど、やっぱり今回の愛之助さんの一番はこれだね!

ふと見ると白鷹ならぬ、白鳩。しかも伝書鳩! 鳩を引き寄せ、託さ
れたいた文を読んでみると、なんと五右衛門の父からだった。
(うお~っ。ツッコミどころではあるけれどガマンガマン・・・)
>> 写真はここ
南蛮船の出港があるからそれに乗ってイスパニアに来い、と。
頷く五右衛門。しかし、周りには捕り手が迫っている。
絶体絶命、と思いきや名古屋山三が加勢に現れた。
五右衛門は礼を述べ、印を結んで姿を消した。
(五右衛門が右手で何かを投げ、舞台奥の壁画に十字架が投影された
のはこの場面だったか、つづら抜けの後だったか? )
続いて阿国が登場。五右衛門に扮装し、我こそ五右衛門と名乗る。
山三が阿国に「手はず通りに」というと「合点じゃわいなあ」とおなご
の言葉で答えてしまうのが可愛い。てゆうかバレバレ。
阿国一座の女たちがやってきて捕り手の道をふさいだり、しばらく
立ち回りが続く・・・。

<大詰 日本脱出>
【11月12日夜バージョン】
波の音がして、舞台奥の花道横に船が現れる。
(けっこう大きな船だよ) >> 写真はここ
捕り手から逃げおおせたらしく、舳先に立つ五右衛門、悠然と立つ
姿がえらい大きく見える。(8月の好色一代男を一瞬思い出す。)
六十四州のこの日本に六尺近い五右衛門が体を休める場所はない。
かくなるうえは海の向こうへ出る、天竺、ジャガタラ・・・いざ父の
待つイスパニアへ、と。
(うう、ウルウル。なんてスケールの大きい!)

【11月13日昼バージョン】
船出のシーンではバルコニーから再登場の五右衛門。
同じ台詞がゆっくりと会場全体に響き渡る。
船は見えずとも海を背にした五右衛門の姿が皆には見えていたと思う。
(前日から演出変更があったが、私はこれを見て胸いっぱいに。2日分
の感動がじゅわ~っ、じゅわ~っと・・・。)

●カーテンコール
【11月12日夜バージョン】
暗転のあとのカーテンコール。四方から大きな拍手が♪
(最後までほんまにぶったまげた。ありがとう、ありがとう。)
スタッフも含め、すべての関係者の皆さんに拍手と感謝♪
拍手が手拍子へ、手拍子が拍手へ、何度も何度も。
が、出演者が次々再登場するもなぜか愛之助さんの姿が見えず。
ざわざわ胸騒ぎ・・・説明が何もないままタイトルロール不在の
カーテンコール終了。素晴らしい舞台だった。
ただ一つの不安を除いては。

(心配と騒ぎが拡大しないようにとの配慮か、結局、この夜は
公式発表一切なし。噂と情報が飛び交う中、私たちは騒がず、
ツイートでは暗黙の了解でそのことに触れないようにした。ただ
なかなか眠れないので夜遅くまで語り合ったけど。)

【11月13日昼バージョン】
出演者が順番に舞台中央に現れ、その中にようやく愛之助さんの姿
を見つけ、またまた胸いっぱいに。やっぱり出演者全員そろうのが
あるべきカーテンコールの風景なんだと。あっちこっちに顔を向け、
何度も振り返り、満面の笑顔で何度も手を振ってくださる愛之助さん。
(昨日の落とし物を今日拾ったような安堵感がこみあげた。)
出演者全員に万雷の拍手と手拍子♪
前日は愛之助さんがいないことに気をとられ失礼してしまったが、
拍手が続く中、出演者たちが手を伸ばした先には生演奏されていた
方たちの姿があった。邦楽と洋楽のコラボも本当に素晴らしかった!
ほんとうに素敵な舞台をありがとう・・・。
新しい可能性に挑戦するシスティーナ歌舞伎がこれからも続いて
ゆかれますように!


●このブログ内の関連記事
~第三回システィーナ歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」(1)



注射を打ったので指が動く間に一気に書き上げた。
もう当分は長文レポは書かない。キッパリ!
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第三回システィーナ歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」(1)

2011-11-19 | 観劇メモ(伝統芸能系)
初めて見てぶったまげました。
システィーナ歌舞伎の名前の通り、カタカナ文化と日本文化が混じ
り合った不思議な舞台。歌舞伎の荒唐無稽なところを自在に取り入
れながらも伝統美はたっぷり味わえて、しかもどこを切ってもエン
ターテインメント精神にあふれた、贅沢で素敵な公演だった。
出演者どうしの異種格闘なのはもちろん、場面ごとに切り替わる音
楽も賛美歌、長唄、フラメンコ、義太夫、バロック音楽・・・とい
うフツウでは考えられない取り合わせ。なのに妙にマッチしてるん
ですよーこれが。
ふと目をやれば、あの藤間勘十郎さんが効果音の鐘や太鼓を叩いて
いたりしておられるのが楽しくて♪

システィーナ礼拝堂の一部を模したホールはつねに壁画が見えてお
り、見上げれば天井画!
舞台はアリーナスタイル。つまり中央に舞台がドーンとあって、私
たち観客はそれを四方から取り囲むようにすわっている。アリーナ
奥と前方にはそれぞれ花道がつき、サイドからは階段ですばやく出
入りできるようになっていた。
天井画や壁画は上演中ずっと視界に入ったまま芝居が進行してゆく。


以下、感想&備忘録。場面タイトルはプログラムから引用。
それを見ながら思い出して書いたので、タイトルと内容が一致して
いるかどうかは不明。

第三回システィーナ歌舞伎
新作歌舞伎 和と洋のコラボレーション
GOEMON 石川五右衛門
~片岡愛之助宙乗りにて つづら抜け相勤め申し候~


劇場     大塚国際美術館 システィーナ・ホール
観劇日    2011年11月12日(土)夜 11月13日(日)昼
座席     椅子席



<スタッフ・キャスト>
作・演出:水口一夫
石川五右衛門:片岡愛之助   出雲の阿国:中村壱太郎
友市(子供時代の五右衛門):上村 吉太朗
石田局:上村吉弥       豊臣秀吉:石田太郎
カルデロン神父:伊礼彼方
特別出演:小島章司(フラメンコ舞踊家)

<あらすじ>
五右衛門は、明智光秀の重臣四王天但馬守の娘、石田局とイス
パニアの神父カルデロンとの間に生まれた混血児。ところが、
時の権力者、秀吉の出した切支丹禁止令・伴天連追放令によっ
て父は追放。母は秀吉のもとへ呼ばれるが目の前で自害する。
成人して天下を騒がす大盗賊となった五右衛門は、父と母の共
通の敵である天下人、秀吉への恨みを晴らすべく、その機会を
虎視眈々とうかがっている。
ある時、秀吉の命で聚楽第へと連れ去られた出雲の阿国。いや
いや舞を披露する阿国を救出したのが五右衛門だった。その後、
阿国が芸に行き詰まったときに、五右衛門は子供の頃に父に教
わったフラメンコを伝授する。二人の間に芽生える恋心。しかし、
阿国には名古屋山三 という大事なひとが。
とはいえ、秀吉の捕手に追われる身となった五右衛門には恋を
成就させる時間もなく。
やがて、南禅寺の山門の上に立つ五右衛門の姿が。そして、つ
いに父の待つイスパニアへと船出するのだった。




●第一部
<プロローグ 京都大聖堂>

会場の照明が落とされるとすぐ賛美歌が聴こえてきた。
ホール奥の壁画に十字架のシルエットがくっきり投影されている。
冒頭から厳かで清冽な空気が満ち、期待が高まる。

<第一場 大聖堂礼拝堂>
四方から大聖堂にポツポツと集まってくるキリシタンの老若男女たち。
(群衆の衣装は、黒のTシャツ&パンツ&小さな編笠だけで表現。)
舞台奥から現れたのはイスパニア人のカルデロン。伴天連の神父だ。
一段高くなった中央の舞台で行なわれているのは、神父と信者たちと
のいつものミサの光景なのだろう。
(カルデロン神父役の伊礼彼方さん。きれいなお顔でしかも小顔。
が、布教の使命に燃える若き神父はいかにも過ちを犯しそうな素敵
オーラを発しているぞ♪)

賛美歌が日本語の歌に変わる。(長唄の方が唄っておられるのだろ
うか、恨みがナントカって、詞も曲調も歌謡曲っぽい。)
ほらほら、言わんこっちゃない。
着物姿の妖し気なご婦人が登場。人目をしのんで来た風情ありあり。
頭には白の総レースのベール、手にはロザリオを持ち、思い詰めた
表情でひざまずき、祈りを捧げる。
苦悩をにじませた白い横顔が美しい。
(吉弥さん、お祈りをしている姿は息を飲む美しさだった。着物の下
半分には明智の家紋である桔梗の花が描かれている。)

この女性こそ明智光秀の重臣四王天但馬守の娘、石田局。
彼女に「神父さま」と呼ばれて驚き、うろたえるカルデロン神父。聖
職者の身でありながら自分は罪を犯した、悪魔に魂を売った、忘れて
ほしい、もうここには来ないでほしい、と頑に彼女を拒絶する。
秀吉を恨むことよりも神の教えを信じるようになったのは神父様の
おかげ。そして、いま私のお腹にはあなたの子供がいる、と石田局。
するとカルデロンはさらに驚き、こんどは愛ある眼差しで彼女を見つ
め、近づいて抱擁する。心が通じ、喜び合う二人。
最後にいっしょに十字を切り、カルデロンは石田局の体を気遣いつ
つ、二人手を取り合って大聖堂を後にする。

<第二場 南蛮寺の片隅 カルデロン住居>
ここで裃をつけて純也さんが登場。
とざい、とーざい!(隅々まで響き渡る声が心地いい。)
続けて口上。
以上が石川五右衛門の出生にまつわる発端であります。カルデロン
は神父をやめて通訳となり、親子三人仲良く暮らしておりました。
「それから7年が経ったのでございます」と口上を結ぶ。
(舞台奥と手前に向かってそれぞれ座礼して退場。)

秀吉の家臣が二人登場し、「切支丹禁止令」のお触れを出して回る。
カルデロンの住まいにやってきた家臣たち、伴天連のカルデロンに
国外追放を命じ、そのうえ秀吉の命として石田局を聚楽第へと召す。

聚楽第へ参内する前の親子3人の場面。
友市はイスパニア人とのハーフなので赤毛。そのことでいじめられ
る上に一人ぼっちにするのは耐えられない、と父が言う。
秀吉の命で親子が別れねばならないことを友市に話す母、石田局。
ここ、別れの場面は義太夫狂言で、たっぷりの見せ場。
(会場の土地柄、人形浄瑠璃の「傾城阿波鳴門」を思い出した。)
なんといっても友市を演じる吉太朗くんがたまりません。
声といい仕草といい、健気で父や母を慕う表情のかわゆらしいこと。
母子の別れは本当に見応えがあった。
母は友市に「秀吉は敵。明智の血を引く者としてお前がいつか敵を
とってくれ」と語ってきかす。さらに自害する覚悟であると話す母
に、死んでくださるな母上、とすがる友市。
出てゆく母の前に回り両手をそろえて引き止める姿のいじらしさ。
子を振り切って出ていく母親の後ろで、エエエエエという我が子の
泣き声が。両手で耳をふさぎながら逃げるように走り去る石田局。
この場面、吉弥さんは本当に泣いておられた。

父子の別れの場面は独特だ。
出てゆく前にカルデロンは友市に伴天連の秘術「空中飛行」を授け
る。(くうちゅうひぎょう、と言っていたのでこの漢字であろうと
思う。当然、その後のつづら抜けを想定しての前振りと思われる。)
父と子、両手を取り合って顔を見交わし、義太夫狂言の見本のよう
な別れの表現もある。(外国人の顔立ちの伊礼さんがこれをやるの
で奇妙な感覚におそわれつつも、なぜか見いってしまう。)
「強く生きていってくれ」と言う父に「お帰りはいつですか? それ
なら私もいっしょに行きとうございます」などと返す友市が不憫で
泣ける。振り切って出てゆく父。
友市はその場に倒れ込み、しばらく伏せた状態でいる。

<第三場 バロックの輝き>
光が射し、ゆっくり目を上げ起きる友市。
荘厳なバロックの演奏が聴こえている。
光のほう(舞台前方)を見上げ「あ、父上!」と。
「はい、いつまでもお帰りを待っています」「イスパニアはどんなと
ころでございますか?」などと、頬を輝かせ父に話しかけている。
(キュンとくるいいシーンでございます。)

友市と入れ替わりで、フラメンコ舞踊の小島章司さんが登場。
ん? フラメンコギターと歌も生演奏なのか。素晴らしい!
ダンサーは上下白の衣装で、男性だが下にはスカートをまとっている。
歌舞伎の女形をダンスに取り入れた演出なのではないかと思う。
長い髪を後ろに束ね、男性なのに時おり女性の顔に見えたりするのは
メイクのせいか、照明ゆえか。もの悲し気な歌と呼応するダンサーの
悲壮感ある眼差しに、気持ちが引っ張られてゆく。手拍子の連打が、
強い踏み込みのステップが、見ている私の気持ちをかき乱す。
芝居に直接絡むのではなく、イメージとしてのダンスが場の空気を熱
く、より濃密なものにしてゆく感じだ。

<第四場 聚楽第>
聚楽第の部屋。秀吉が家臣たちを従えて座している。
そこに呼ばれて入ってくるのは石田局・・・。

舞台前方の花道を女性が歩いてくる。
能の舞を見せる趣向のようだ。
上半身が鱗紋になった着物、顔には般若のお面、手には打ち状。
(『葵上』後シテ鬼相の六条御息所の衣装だと思うが、「八大竜王」
という台詞があったので演目わからず・・・。)
<2013/2/10追記>2013年の再演で能「春日龍神」だと判明!
舞いながら秀吉に向かって進み、打ち状を突きつける。親の敵である
ばかりか、夫と自分にまでこんな仕打ちをしたにっくき秀吉!と言わ
んばかりに。(ここ、演奏との相乗効果でかなりスリリングな場面。)
途中で足がふらつくので、様子がおかしいと家臣がお面を取り去ると、
石田局の口から血が吹き出ていた。陰腹していたのだ。顔色も青い。
「自害しおったか」と家臣たちが騒ぐ中、秀吉に近づき、この柔肌は
自由にはさせぬ、と秀吉に一太刀浴びせようとする。
が、家臣たちに止められ、ついに倒れ、こと切れる石田局。
(ふう~、激しい。けどカッコイイわ、石田局さん。片岡十二集にあ
る「石田の局」も見たくなった。)

「聞きしにまさる美しい女だ。このままいうことを聞いておれば一生
悠々と暮らせるものを。ばかなやつだ!」と秀吉が吐き捨てる。
(石田太郎さん、いい声。歌舞伎の発声とは違うが、ばかなやつ、と
大きくゆっくり言う響きに天下人の威厳がある。)

会場の照明が消え、緑色の火の玉がフワリ、フワリ。
浮かび上がる顔は石田局。魂はまださまよっているのか。
死んでも秀吉のことは決してゆるすまじ、という強い意志を感じる。
(やはり六条御息所か?)

<第五場 ややこ踊り>
見物衆の前で踊る10人ほどの若き女たち。
出雲の阿国とその芸人一座たちはすっかりまちの人気者なのだ。
ここからはショータイム。群舞は華やかだし、壱太郎さんは若さの中
にも色気が漂い、私も見物衆の一人になった気分。
(阿国の初期の頃の踊りは「ややこ踊り」と呼ばれていたらしい。)
そこへ秀吉の一行が通りがかり・・・。
しばらくしてなんと阿国が連れ去られてしまった!!!

傘をかぶった男が奥の花道から登場。黒の衣装で傘を取ると、赤毛~♪ 
(やっとだよ。ひゅうひゅう、待ってました、松嶋屋っ。にしても赤毛
の五右衛門なんて初めて。ついつい頭に目がいってしまう。)
「母を奪い、女を盗み、秀吉は大泥棒」。
(はは、笑っちゃう。大泥棒の石川五右衛門に言われてらぁ~。)
「この友市が五右衛門と名をあらためての盗っ人稼業。秀吉に報わんが
ため」。(名乗りの台詞回しはお腹に響く低い声でゆっくり。ちょこっ
との登場ですごい存在感。愛之助さん、堂々とした大泥棒ぶりだわ。)

<第六場 秀吉の寝所>
秀吉に見染められ連れてこられた阿国、すでに聚楽第にいる。
嫌々参内した阿国はバシッとひとこと。
「芸は売っても体は売らず!」
(石田局にも同じようなことを言われてたよね> 女好きの秀吉!)
その言葉に秀吉は笑い出す。「実に面白い女だ。では踊れ。舞え!」

阿国が舞っている途中に乱入者あり。
舞台奥から登場したの赤や緑のド派手衣装の赤毛男。
阿国に向かって「石川五右衛門、盗賊さ。驚かなくていい。秀吉の鼻
をあかしたいだけだ」と。ここからは救出劇。
捕り手が集まってきて五右衛門との派手な立ち回りが始まる。
12日夜と13日昼の部ではここの演出が変更になっていた。
(理由は後述。最後の最後に。)
捕り手たちの上に乗ったり、捕り手たちが高く掲げたハシゴの上で
見得を決めた後、ピョンと舞台に飛び降りたりしていたのは12日。
13日はハシゴの上に腰をかけてポーズを決め、ハシゴをそっと下にお
ろしてから足をついていた。花道の出と引っ込みも、13日は極力花道
を使わず直接出入りするやり方に変更されていた。それでも13日に初
めて見た人には全く違和感のない演出変更だったと思う。

秀吉が五右衛門の持っていた刀の秘密に気づく。「鞘から抜いただけ
で雷鳴が轟く刀があると聞く。さては五右衛門は明智の血筋か?」
大立ち回りの後、煙幕が張られ、印を結んで五右衛門が消えた。
カンカンカンと鐘の音が響いて、舞台右奥の天井につづらが!
つづらの戸が開いて、中からナント五右衛門が~っっっ。
「つづらしょったら可笑しいか! ばーかーめー!」と見得をキメる。
(うっうっ、そら可笑しいワ。なんて人を喰った台詞。なんて楽しげ。)
手を引き上げていく所作から、空中を踊って渡る動作に。
初めて見る愛之助さんの宙乗り。ワイヤーは舞台右後方から左前方へ
と対角線にナナメに横断。どの角度からも見えるように、五右衛門は
つづらといっしょにクルクルクル。足は自転車をこいでるカンジ・・・
近くに来たときに見上げたら裸足だった♪
途中で止まってつづらに言う。
「おっとあぶない。阿国、あばれるんじゃないよ」
大興奮の宙乗り。いやはや、盛り上がりました!!
(ここで10分の休憩)




・・・・・・書けたら書くぞ、第二部!(指しだい)


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コメント (2)
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