毎年書いていた永楽館のことだけでも思い出し書きしてみる。
いまごろだけど。
今年はバスツアーが画期的にバージョンアップした年。
おかげで日帰りでの昼夜2回観劇が実現♪うれしくってチケット
を2枚取ったものの、肝心のバス申し込みを忘れていた私、帰
りのバスがすでに満杯に!!!!!
うぇーん夜をあきらめるしかないよ~~~~と大騒ぎしていたら
またまたナントカしてもらえたんですねー ♪ ありがたや~。
これです、私が出石マジック!と呼んでいるのは。
聞くところによると、バスツアー用には大型バスを手配されたよ
うで、帰りの新大阪行きのバスには予約なしでも乗れたくらい。
この対応のすばやさにはほんとに感謝感謝。
なお、バスツアー申し込み先着30名には愛之助さんのサイン
色紙が永楽館館長から手渡されるというプチセレモニー付きで、
着物姿の館長さんが素敵♪とツイートしたところ、またたく間に
男前♪ イケメン館長♪ いう噂が広まりすっごく楽しかった~!
1日中雨降りだったけど、気持ちはハレバレ♪
にカフェ&おしゃべりをたっぷり楽しんだ。一人歩きではわから
なかった出石の町の魅力をプチ発見。
ありがとうございました!
ツイッターで知り合ったpenjuroさんとは幕間にご挨拶♪ なん
と帰りは同じバスだったよ~。おつかれさまでした!
観劇日 2011年11月5日(土)昼の部・夜の部
劇場 出石永楽館
座席 1階 昼:花道横・夜:最前列
双蝶々曲輪日記
一、 引窓 一幕
南与兵衛 後に南方十次兵衛:愛之助
女房お早:壱太郎 三原伝造:隼人
平岡丹平:當十郎 母 お幸:吉弥
濡髪長五郎:錦之助
芝居小屋の観劇の魅力はなんといっても一体感である。
出演者と観客、観客どうし、劇場と観客、そのどれもがチームの
一員といってもいいと思う。
今年さらに感じたのは、いまリアルタイムで物事が進行している
かのような臨場感・接近度。おかげですっかり話に入り込み、身
内のように笑い、思う存分泣いてしまった。
以下、有名な演目なのであらすじ等は省き、出演者の印象だけメ
モしておきたい。(台詞はネットの床本で再チェック。)
<愛之助さんの十次兵衛>
なにしろにわか仕立ての武士なのだ。母者人、女房、今帰った、
と時代がかった所作と言い回しのすぐ後に、コロッと町人言葉
で母と妻に話す十次兵衛。去年と同様、今回も我當さんに習っ
たという愛之助さんだが、この落差はうまく見せていた。
人相書きの場面での台詞、十次兵衛と与兵衛の口調の切り替え
にも優しい与兵衛の心情が伝わってきた。
賜ったばかりの十手やら縄を念入りに嬉々として手入れする様
子には、代官に任ぜられた喜びがあふれ出て、見ているこちら
も楽しくなった。
平岡と三原が帰った後、お早に「長五郎とやらを捕らえるのは
本気か?」と聞かれ、この役目を仰せつかった理由の一つは
「関口流の一手に覚えがある」からだ、と十次兵衛が説明する
台詞がある。この時、愛之助さんが顔の右横に右手を出し、
手裏剣を投げるポーズをしているのに気づいた。それこそ後
の場面で「濡髪、捕った!」と高頬のホクロを取り落とす時の
ポーズではないのぉ。
これまで何度か「引窓」を見たけれど、路銀を投げつけてホク
ロを取り落とす場面だけは、ありえへん!と思っていただけに
これで腑に落ちた。むしろ十次兵衛に関口流の心得があるから
こその話の展開、演出だと納得した次第。
(ただ、ネットで検索しても、関口流が手裏剣の流派であると
はどこにも書かれていないが・・・。)
手水鉢に一瞬映った姿に、十次兵衛がハッとして2階の濡れ髪の
ほうに目をやる場面。気づいたお早がすばやく引窓をピシャリ!
優しいはずの十次兵衛の険しい顔、お早の体を張った敏捷な動
きに緊張感が高まる、まさに引窓がらみの大きな見せ場だ。
「こりゃなんとする女房」「もはや日の暮れ」と答えるお早に
「はて面白し、面白しーーーーーっ!」と返す十次兵衛の声の
大きさ、台詞回しにはいかにも不可解で合点がいかないという
想いがこめられており、それこそ面白い味わいがあったと思う。
そして、やっぱり母者人、お幸との人相書きのやりとり。
「母者人、あなたなぜものをお隠しなされます」
「鳥の粟を拾ふやうに溜め置かれたその銀・・・」
ここのくだりで十次兵衛、というか与兵衛は本当にこの母親の
ことが好きなんだと思えて、涙がダダ~~~。
濡髪にそれとなく山越えの道順を教える場面もまた泣けた。
<壱太郎さんのお早>
眉を剃ってお歯黒ではあるけれど、どう見ても玄人っぽさの残
る妻であり、嫁である。(とはいえ、壱太郎さんは可愛らしい
し、まだどうしても若さを隠せない感じ。)
新町の郭言葉がなかなか抜けないのを姑に指摘されるが、腹を
立てることもなく、あっけらかんとした明るい性格で、むしろ
姑想いのいい嫁だなとも思う。
壱太郎さんはどなたに習っておられるのか、情の細やかさが感じ
られるとてもいい女形さんだなと今回初めて思った。
(今までは舞踊を拝見することが多かったので気づかなかった。)
姑といっしょに放生会の準備をする甲斐甲斐しい姿もよかったが、
お幸が濡れ髪の髪を剃り落とす場面が特によかった。
たとえば、鏡を用意する時にはぁ~と息を吹きかけ、鏡を磨いて
いるところ。鏡を出してから、濡れ髪の真横に自分の顔を持って
いき、ごく自然にさりげなく鏡の見え方をチェックして鏡の向き
を調整しているところ。
一見どうでもいいようなことだけれど、世話物ではこういう積み
重ねがリアリティを感じさせ、芝居全体に命を吹き込んでいくの
だと思う。これは歌舞伎でも現代劇でも同じじゃないだろうか。
これは自分が以前からやりたかった役、と口上で話されていたが、
私は好きですよ、壱太郎さんのお早。
(ここまで書いて1カ月以上たってしまった。記憶がアヤシイ。)
<吉弥さんのお幸>
昨年はお俊を演じてとても艶っぽかったのに今年はついに(笑)。
嫁であるお早と放生会の準備をしたり、父の職を継いで武士となっ
た十次兵衛のことを喜んだりしている時は、シャンとした頼りがい
のある武家の母親のイメージ。そこから一転、十次兵衛の捕える
相手が実の息子であるとわかってからの不振な行動、台詞の一つ
一つに気持ちがこもっていて、涙なくしては全く見られなかった。
2回続けて見て、2回ともダダ泣き。
あの場面は小屋じゅうが泣いていたと思う。
十次兵衛に対しては遠慮と気遣い。「なさぬ仲」という言葉が
これほど重いとは。
長五郎に対しては実の親ならではの無条件の愛と、何がなんでも
生きて欲しいと願う気持ちが強く伝わってきた。
父親譲りの高頬のホクロの台詞にも、母親自ら髪を剃ってやる
ときも涙。ホクロはできない、とお早にやらせようとするところ
だけは笑ったけど。
吉弥さんにはあまり老け役はしてほしくないけどこれはハマリ役。
<錦之助さんの濡髪長五郎>
こんなきれいな顔の濡髪長五郎は初めて見た。
母親に「死ぬことだけが男じゃない」と言われた時の目をつむっ
て観念した顔もフォトジェニックだった。
母にこんなこと言われた日にはツライヨね~、男なら。
さっきはオトコマエ~と見とれていたのに、その目がみるみる
充血していき真っ赤になり、そのまま目の端に涙がたまってあ
ふれそうになっているのを見て、私のほうが先に涙があふれた。
「剃りやんす、落ちやんす」の台詞がしばらく耳に残っていた。
今回は錦之助さんの濡髪が見られて本当によかったと思った。
ええもん見せていただいた~♪
この芝居の後が口上でよかったと心底思う。だって、口上の時
の面白すぎる錦之助さんを先に見ていたら、その余韻できっと
これほど泣けなかったのに違いない(笑)。
楽しすぎた口上のことも、もう一つの演目「茶壺」のことも書き
たかったけれど今年の永楽館はこれぎり~。