星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

文楽 夏休み文楽特別公演「夏祭浪花鑑」

2010-08-10 | 観劇メモ(伝統芸能系)
夏休み文楽特別公演 第2部:名作劇場
劇場     国立文楽劇場
観劇日    2010年7月18日(日)

文楽では初めての「夏祭浪花鑑」観賞。
文楽といえば、いままでは大夫さんの語りと人形の細やかな動き
にそれぞれ感心していたが、今回はどの段も床と人形が一体となっ
た迫力ある舞台に圧倒されっぱなし。
(床下席を選んでくださったとみさま、ありがとうございます!)
ときどき歌舞伎と比べて見ていたり。文楽独自の世界にブッ飛ん
でしまったり。とにかく見どころいっぱいの演目だった。

・・・なのに、なのに・・・
実は感想を書いている最中に睡魔が急襲、その後3週間以上の放置。
記憶がほとんど薄れてしまった~。ザンネン!(涙)
以下、備忘録として書けるところに限ってメモを残すことにする。



●夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)

住吉鳥居前の段
   口 豊竹つばさ大夫  鶴澤寛太郎
   奥 竹本文字久大夫  豊澤富助
内本町道具屋の段
   口 竹本相子大夫  鶴澤清馗
   奥 豊竹英大夫   竹澤團七
釣船三婦内の段
   口 豊竹芳穂大夫  野澤喜一朗
   切 竹本住大夫   野澤錦糸
   アト 豊竹希大夫  豊澤龍爾
長町裏の段
   団七 竹本千歳大夫  義平次:豊竹松香大夫   鶴澤清介
田島町団七内の段
   口 豊竹咲大夫   鶴澤燕三
   アト 豊竹始大夫  鶴澤清志郎

人形 釣船三婦:桐竹紋寿      倅市松:桐竹紋吉  
   団七女房お梶:豊松清十郎   こっぱの権:吉田玉志
   なまの八:吉田一輔      玉島磯之丞:吉田文司 
   団七九郎兵:桐竹勘十郎    役人:吉田玉勢
   傾城琴浦:吉田清五郎     大鳥佐賀右衛門:吉田幸助
   一寸徳兵衛:吉田玉也     三婦女房おつぎ:吉田勘彌
   徳兵衛女房お辰:吉田蓑助   三河屋義平次:吉田玉女
   代官左膳:吉田文哉      
   捕手・駕篭屋・若中・子供:大ぜい



<住吉鳥居前の段>
はじめに歌舞伎で見慣れた舞台セットに驚く。
アッ!! 歌舞伎のほうが文楽にそっくりなのか(笑)。
住吉さんの鳥居、中央にある髪結床の暖簾には碇床の文字。
釈放された団七と三婦がよかったよかったと抱き合うような場面は
ないけれど、暖簾の奥から出てくる団七がむさい男からスッキリし
た顔になって出てくるのは同じ。
「おれでぇ~す」というあの言い回しを大夫さんから聞くとは!
ウヒ♪である。

団七人形はえらいカッコイイ。
男前だし、このプロポーションなら現代女性にもモテそうだ。
背丈が大きいので九頭身ぐらいに見える。
しかも手足がすらりと長い。長すぎるくらい。
動きが元気で、人形ながら血気ムンムンである。

磯之丞のことをめぐって、団七と一寸徳兵衛との立て引きがある。
ちぎった袖を交換して兄弟の契りを結ぶところ、若くてさわやか~。

<内本町道具屋の段>
いよいよ初めて見る場面だ。チョット詳しくメモ。
堺をところ払いになった団七。その後、大坂で魚売りをしている。
太めの縦縞の着物に肩には行商の棒を担いで。名前も「九郎兵衛」
に変えている。(団七九郎兵衛の長い名前はそういうワケか!)

一方、磯之丞も名前を清七に変え、道具屋で手代として奉公中。
ここは九郎兵の得意先なので、何かと磯之丞のことを気にかけては
顔をのぞかせている九郎兵衛(団七)。

ここでハッと気づいたのが磯之丞の女ぐせ。
琴浦と恋仲だったのに、奉公先の娘お中ともう恋仲になってるやん!
のちに三婦が、お辰に磯之丞を預けることをシブるわけだけど、
あれはお辰の色気だけじゃなく、磯之丞が女にだらしない男である
という過去の経験からきているのだと、ここで確信した私(笑)。

そんな二人の仲を妬む番頭の伝八。磯之丞から店の金を騙し取る芝居
を打つが、その悪仲間の一人が、武士に化けた三河屋義平次。
ナント!団七の舅だよ~。
これに気づいた団七、腹立ちながらもグッと堪え、磯之丞を連れて引
き下がる。間の悪さに顔をそむける義平次。
「悪いところに婿がいた」と入る大夫さんの声に笑ってしまった。
(舅とのこの一件が、のちの殺人の伏線になっていたのか。ムム。)
それにしても女にだらしなく、他人には簡単に騙される磯之丞の情け
ないこと。そんな磯之丞を請け負う団七の、また男らしいこと♪♪

その夜、ムリヤリお中に駆け落ちを迫る伝八のところへ、先の芝居の
一味、弥市が訪ねてくる。自分にニセ香炉を売りつけた悪仲間の一味
と知り、弥市を斬ってしまう磯之丞。お中とともに逃げ去る。

ビェーーーッ!!磯之丞ってナンチュウやつ(怒)。
けっきょく後始末は団七や三婦がするんだから。
お世話になった玉島様のご子息だからと。これが男の生きる道なのか。
内本町道具屋の段は短い段ながら、今後の伏線がいっぱい!

この段、ときどきウツラウツラしてしまった。
このあと番頭の伝八が首を吊るんだけど、それに三婦が絡んでいる。
(ウツラウツラのせいで、本当に自殺なのかどうかが判断できず。)
で、けっきょく弥市殺しも自殺した伝八の罪になり、磯之丞は難を
逃れるんだよね。

<釣船三婦内の段>
やっぱり見慣れた舞台セット。祭の提灯も軒先にぶら下がってる♪
三婦の家に琴浦と磯之丞がいる。じゃらじゃらしているように見える
が、お中との浮気のことで磯之丞を責める琴浦。(道具屋の段を見た
ので大いにナットク!)

徳兵衛女房お辰がやってくる。蓑助さんのお辰、動きが細やか。
磯之丞を預ける、預けないの場面。それでは女が立ちませぬ、「ささ
さ、立ててくだんせ、親仁さん」と侠気たっぷりのお辰。カッコイイ!
預けない理由はお辰の顔に色気があるから。
そう言われ、やや間があり、今度はおつぎが魚を焼く鉄弓を持って
ブチューッと顔に。
このあとしばらくお辰は下手のほうを向き、顔の左半分を見せたまま。
あれ?顔が変わってないよ~と思っていたら、顔がくるっと三婦のほ
うに向き直ると、右頬に赤い血のような火傷がくっきりと。
できたー!!と三婦が叫び土下座する。
おお~、そうきたか!
文楽のお辰さん、いやいやなかなか緊迫感のある場面でございました。

喧嘩に出る前に三婦が、耳にかけた数珠をポーンと後ろに投げると
ころ、やっぱりカッコイイ。

歌舞伎とは少し違うのだろうか。それとも今まで見逃していたか?
義平次が琴浦を駕篭に乗せて連れて行ったと聞いて、団七が飛び出す
場面。
なんでここでおつぎが倒れる(必要がある)のか疑問だった。
今回この場面を見てナルホド!とまたまたナットク。
駕篭の一件を団七が知っていたかどうか、おつぎは知りたがる。
それはどうでもいいこと、と団七は受け流す。
「イヤそれ聞かぬうちは」「エイ、面倒な~」と跳ね飛ばす団七。
駕篭の一件はおつぎには関わりナシとする団七の思いやりなのね~。
いかにも侠客と、侠客仲間の女房らしいやりとりにグッときた♪

<長町裏の段>
盆が回って千歳大夫さんがご登場! 思わずニヤリな私たち。
(右から、とみさん・わたし・ハヌルさんの並び席)。
角度的にも照準バッチリだ~(笑)。
(矢でも汗でも唾でも飛んでこい、の覚悟。)
千歳大夫さん・清介さんの団七縞の裃にもうれしくなる♪
対する黒の裃は松香大夫さん、義平次だよ。
この段ばっかりは大夫さん一人で語り分けるワケにはいかへんわな。
予想通り、二人の大夫さんの息のつまるようなかけ合いが続く。
すごい迫力。緊迫感。手に汗ベットリ~。

人形の団七は動きが激しい。勘十郎さん自身も動きが大きくなる。
義平次は歩き方からして姑息だ。玉女さん、気持ちが入っている。

団七の顔を雪駄ではたく義平次。
アイタタ~と顔をおさえた団七、やや間があり、自分の手についた血
を見る。「男の生き面を・・・」と叫ぶや、義平次に斬りかかろうと
する。ザンバラ頭になるタイミングは文楽ではここだった。
二人の立ち回りが始まる。
人間なら着物を脱いで刺青が現れるけど人形は刺青に着替える感じ?
(笑)とにかくクリカラモンモンの団七が~!
長身のせいかその面積が大きくて、やたら絵になる。マブシイ。

・・・・・・・・・・・・・・・・

(信じられへん! 感想書きながら意識不明に陥る。おそらく歌舞伎
の生身の団七を思い出しているうちに夢の世界に突入したと思われ。
ここから先は後日追加分のため、記憶がほとんどナシ。)

殺しの見得は歌舞伎の数ほどはないけれど、文楽でも見得がある。
舞台の書割の前に出てきたり、泥場でもハデな格闘。
だんじりの提灯が見え、祭り囃子が向こうに聞こえる間に、義平次に
ググイーッとどめを刺し、くるっと2回ほど体の向きを変える団七。
(この動作、人形がすでにやってたのか。)
最後に水をかぶって泥を洗い(ここ、本水ではない。アタリマエ~!)
すべてを終えたところへ祭りの一団が来て、そのスキにすばやく手ぬ
ぐいをとって頬かむりする団七。手ぬぐいは赤だった!
「悪い人でも舅は親。ナマンダブ、ナマンダブ・・・」合掌。
(おやっどん、ゆるしてくだんせ、の台詞は歌舞伎独自のようだ。)

<田島町団七内の段>
事件の顛末を描きつつ、団七を守ろうとする周囲の人たち、とりわけ
徳兵衛と三婦との友情がクローズアップされる段だったと記憶する。
大夫さんたちの裃は、さっきの団七縞とは色違いだ。
(こちらは徳兵衛の着物柄になっていたらしい。)

前段の「雪駄」が伏線になる。義平次に顔をはたかれたときの雪駄だ。
団七は舅殺しの一件を皆に黙って引きこもっている。
徳兵衛は長町裏で雪駄を拾ったことから、犯人は団七だと察する。
詮議の際は自分が雪駄をなくしたと申し出る、と伝える徳兵衛。
そのうえ三婦と組んで、お梶への去り状を書かせるための芝居をうつ。
団七が罪の重い「舅殺し」にならないためにはお梶と別れるしかない。
二人の真意をわかったうえで、去り状をお梶に渡す団七。

この後は捕り物。舞台セットは屋根の上。
役人たちがやってきて、団七が屋根の上に姿を現す。
(おおお~っ、という期待感!)
そこへ捕り手たちがのぼってきて立ち回り。
と、自分が召し捕るとナント徳兵衛が役人に申し出るではないですか。
が、屋根の上でゴニョゴニョと(笑)。
けっきょく団七にお金を渡し、玉島へと落ちのびさせてやる徳兵衛。

アレ~、捕まらないんだ~?????(笑)
な結末にびっくりするやら、さもありなんと思うやら。
高津宮のお膝元で見た文楽の「夏祭浪花鑑」。
歌舞伎とはまた違う迫力ある舞台をすっかり堪能いたしましたっ♪
(↓ 団七ブッセ 120円なり at 国立文楽劇場)


       ▼ ▼ ▼

歌舞伎の「田島町団七内の場」について。
歌舞伎では勘三郎さんが大阪のテント小屋でやった舞台がある。
ここでは舞台セットの後ろが開いて、団七と徳兵衛が二人いっしょに
小屋から現実の外に飛び出して逃げるという趣向だった。

正義の国アメリカではさすがにこの結末はダメなのか(苦笑)。
勘三郎さんのニューヨーク公演では、団七と徳兵衛が最後にポリスに
囲まれて御用!じゃなくフリーズ! 逮捕をにおわせる幕切れだった。

いつか松嶋屋バージョンでも「田島町団七内の場」を見たいと思う。


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4 コメント

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人形も迫力ありましたね (瑠衣)
2010-08-10 23:26:26
私も今回「内本町道具屋の段」初めて見ました。
何故歌舞伎はあの場面やらないのでしょう?難波裏のやりとりで義平次が「お前のお陰で儲け損ねた」というのがいつも「わかったような、わからない」思いでしたが。義平次がお次をだましてまで琴浦をかどわかし金にしようとした思いの大事な伏線。
次に愛之助さんが舞台にかけられたら是非最期の田島町団七屋根とともにやって頂きたいですね。
勘三郎丈の団七は情が薄いように私は思いました。
返信する
瑠衣さま♪ (ムンパリ)
2010-08-11 01:19:21
はい、すごい迫力でしたね。
「内本町道具屋の段」は歌舞伎でもめずらしいのでしょうか?
ここに数々の伏線があるようで、今回、見てよかったと思います。
文楽を聞いてスカッとするのは、やはり団七や義平次の上方言葉
のパワーのせいだと実感しました。
愛之助さんも夏祭りのときは、とてものびのびと感情をのせて、
本音で団七になりきっているのを感じますよね♪
勘三郎さんの場合、もう少し様式・型にこだわっているような、
そんな違いを感じるんですが。
(以上、ビギナーの見方でしたっ。笑)
返信する
団七ブッセ (スキップ)
2010-08-11 11:38:25
ええ~っ 「団七ブッセ」買ったんだ(←そこ?笑)
文楽劇場で売ってるのは知ってたのですが、
この演目の時こそ買うべき、と勇んで行ったのに知り合いに会っておしゃべりしている間に
売り切れていました(涙)。

後に観た私よりずっと詳細なレポ、楽しませていただきました。
大夫さんで愛之助さんの語り口と声によく似た人が
いらしたのですが、どなただったかしら?
ムンパリさんならわかるかなぁ。

>アレ~、捕まらないんだ~?????(笑)
歌舞伎でもいつも捕まらないような気がしていたのですが
私の思いこみだったのでしょうか。
あの屋根の上を逃げていく場面がとても印象に残っているのですが。
勘三郎さんのテント小屋というのは平成中村座かな?
確かに扇町公園に走り出して行っていました。
NYバージョンはそうでしたね。
松竹座での凱旋公演の時もPoliceが出て来ました。
今年の大阪城はどんな趣向になるのでしょう。
楽しみです♪
返信する
スキップさま♪ (ムンパリ)
2010-08-12 00:45:34
そこかいっ!2(爆)
団七ブッセは昼夜通しで見るときのおめざ(笑)なんですが、
今回、7月に見た頃は団七ブッセは楽勝で買えましたよ~♪

> 大夫さんで愛之助さんの語り口と声によく似た人

どなたでしょ? 希大夫さん? うーん、わかりません・・・。
ただ、愛之助さんの台詞回しと文楽の大夫さんの大阪弁は
キホン同じですよね♪ 
ときどき愛之助さんの団七が思い浮かびました。エヘヘ。


> 歌舞伎でもいつも捕まらないような気がしていたのですが

「夏祭~」の結末を見た最初が、勘三郎さんのN.Y.ポリス
だったので、てっきりつかまるものと思ってました。
平成中村座のは後から映像で見たので、どっちがオリジナル
かな、と思ってたのですが、今回の文楽版を見てナットク。
歌舞伎との違いもよくわかって、ほんとに楽しかったですね!
返信する

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