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[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(18)最終回。【画像追加版】

2018-06-18 | DEAN FUJIOKA
●もう一つの視点
このドラマは脚本が素晴しい!と今までに何度も思った。
最終回でそうきたかと感心したのは、視聴者をこれほどまでに没頭させておきながら、客観的に外からの視点も提示していたこと。TV報道のシーンがそれ。
社会的な死が法廷の場だけではない現代日本には、テレビ死、ワイドショー死なるものが存在している。有名人であったり、社会的地位が高い人ほど死に至るスピードも速い。ドラマでは警察内部の高職に就いている入間が特にそうだった。罪状が早く広く世間に知れ渡るだけでも十分な制裁効果があると思う。南条、神楽の二人も同様。

しっかし、ここまでグチャグチャにしながら復讐されるべき人間が全員生きているのは失敗ではないのか、と書かれた記事も見た。(寺門は死んだけど。)全員をテレビ死で終わらせた意図は上記の通りとして、ここで誰も死ななかったことで真海もまた生き続けることができたのか、とも思う。天罰がくだらなかったという意味で。「いずれ私は罰を受けるでしょう」という真海の言葉と呼応する。
ただ、TVのワイドショーのアナウンサーが「私たちは真実を追いかけてシンガポールに行きます」と言っていたように、原作のようなハッピーエンドには終わらない可能性もにおわせている。ここが現代日本のドラマとしてのリアリティというか、テレビ局の良心なのかもしれない。

「小さな町でくすぶっていた嫉妬がとんでもないことになりましたね」と、真海が南条と神楽に言っていた言葉もそう。「モンテクリスト真海 柴門暖の復讐劇」というタイトルでセンセーショナルに報じられる事件も実は日々のワイドショーネタの一つで、いつ誰が巻き込まれるかわからない冤罪事件であると言っているようだった。病院のテレビに向かって「真海さん」とつぶやき深々と一礼した土屋。真実を知っている彼のこのシーンで「真海が生きている」ことが確信できたし、さらにどんな凶悪事件も当事者・関係者は自分と地続きのところにいるのだと思えた。

海外の原作モノで一見ありえない復讐劇ではあるけれど、このドラマでは現代を生きる人間の心の声、本音が台詞に込められていた。視聴者の気持ち、犯罪被害者の気持ちを代弁していてドキッとしたり、共感できたりしたことも多かった。

●暖とすみれ
現実的な視点はこのくらいにして、暖とすみれウォッチャーとしてはあのシーンに触れておきたい!
原作の着地を想定していた私はずいぶん勘ちがいしていた。メルセデス(すみれ)の本心が自分を愛していることだと知ったモンテクリスト伯爵が、メルセデスへの未練に揺れ動きながらも最終的にはエデ(エデルヴァ=愛梨)とともに船で旅立つ。自分の意志でそちらを選択したのはモンテクリスト。それがつまりメルセデスへの復讐であったのだと。
でも、ドラマは違っていた。そんなシンプルじゃなかった。複雑な状況が二人を取り巻いていて、すみれには元夫も生きていて、幼い娘も抱えている。究極の選択を迫られるのはすみれの方だった。

<プロポーズ予告のシーン>
母の墓前ですみれと遭遇する暖。「本当はやめたいんでしょ」「よく言われますよね。復讐なんて虚しい。復讐しても何も報われないって。でも、それは全部嘘です。殺したいほど憎い者たちがもがき苦しむ姿を見ることほど幸せはない」
「お母さんはそんなこと望んでいない」と言われ、真海はいったん考えてからこう提案する。「わかりました。あなたがそこまで言うならもうやめにしてもいいですよ。ただし、一つだけ条件があります」すみれに歩み寄り顔を近づけ「私と結婚してください。南条幸男も明日花ちゃんもすべてを投げ捨てて私と一緒になってください。二人だけで幸せになりましょう。そうすれば私は復讐をやめます」
えええええー!! まずここの真意としては、受け入れるはずがないことをわかった上で難題をふっかけたのでは。これが真海のすみれへの最大の復讐だったのか。もっと悩め!もっと苦しめ!(どSかっ。)ただ、ここでの表情や後の展開を見ると、実は真海の賭けだったのかと思う。受け入れないが99%で、受け入れるが1%。わずかでも「イエス」の答えが聞ける可能性がある限り、それを聞いてみたい。イエスと言われたところで本当に結婚するつもりはなかった。それがこの段階だと思う。答えは明日のパーティーで聞かせてください、と。

<プロポーズのやり直し>
愛梨に用事を言いつけ真海邸から遠ざけ、パーティーは始まる。最後に席に着いたのはすみれ。
結婚式のビデオを南条、神楽、すみれ、真海の4人で見るという異常な設定。これはすみれにとって生き地獄。「誰ですか、この頭の悪そうな男は。こういう人間にだけはなりたくないな。人に騙されるのが目に見えている」と言っておきながら「でも、本当に幸せそうだ」と悲しげに呟く。
南条と神楽がなぜ自分を陥れたのか、その根本、くすぶりの原因を二人に確認する真海。そして、復讐をやめるかどうかはすみれにかかっている。今ここで「お返事をきかせてください」と迫る真海。



ビデオの中で暖が言ったプロポーズの言葉を繰り返す。
真海の呼吸する音が聞こえる。「すみれさん、あなたを必ず幸せにします。私と結婚してください。」
暖のところまでゆっくり歩み寄るすみれ。その口から出る言葉をじっと待つ真海の目が不安げだ。
「はい。私は真海さんと結婚します」その瞬間、喜びの色が目に浮かび、表情が和らぐ。優しい目の暖になっている。暖が一歩近づいた時、すみれの涙が悲しみの涙であることに気づいてしまう。一瞬にして悟ったかのように現実に引き戻される暖。目をそらし横を向いてああ、と息を吐く。右口角だけあげてなんとか笑顔を作ろうとするが笑顔にならない。目は下を向いたまま、弱々しい声で「バンザイ」と。あの日のやり直しのバンザイがなぜこんなに悲しい顔に。目が赤いよ、暖。眉を寄せて泣きそうな顔ですみれに近づき、目の前で「やっぱり・・・最後に愛は勝つんだ・・・」と。すみれを見つめる目が赤く、心で泣いているよう。なんという悲しいプロポーズ。顔を見つめた時に決別したのだろうか。





















その後、あっさり全員を解放し、自ら部屋に火を放ち炎に包まれる。あぁ楽しかった・・・という時の表情には復讐をやり遂げた喜びではなく、ようやく自分自身も解放された、そんな思いが表れているように思えた。











最後に愛は勝つ、の台詞について。これはすみれの母としての愛が勝ったのだ、という感想も見た。それを知り真海が身を引いたのだと。私はそうは思わない。3人をパーティーに招き、プロポーズを受け入れるしかない100%のシチュエーションを演出し、そこで真海は、暖はすみれとの会話を完結させたかったのだと思う。「イエス」と言ってもらい、バンザイを言って、最後に愛は勝つと一緒に歌いたかった。(実際に歌うわけではないが。)それをただやっただけなのだと思う。シンプルに。(入間が安堂を二度殺し、土屋が二度掘り返したように。)
すみれには「イエス」と言ってもらわないと成立しなかった。だから、うれしかった。もしかしたら昔の自分たちを思い出したのかもしれない。15年前のあの日、途中で中断せざるをえなかったプロポーズから結婚式までを、自分が死ぬ前にもう一度やっておきたかったのではないだろうか。「赦しなど求めていない」と、すでに死を覚悟していたわけだから。自分はすみれを愛し、すみれも愛してくれたという風景を目に焼き付けておきたかったのでは。

もしかしたら真海でさえ自分自身の感情は読めなかったのかも。そう思わせるほど繊細で小刻みに揺れる心の動きをつぶさに表情や仕草で見せ、演じきったディーンさんの豊かな表現力!本当にすごい役者さんだと思った。もう真海はディーン・フジオカで、ディーン・フジオカは真海。
この役は他の人ではまったく考えられなかった。ディーンさんがこの作品に出会えたことをあらためて素直に喜びたい。

教会のシーンや入間家のことについてもまたあらためて書きたいと思っている。

※画像はすべてテレビ画面をスマホで撮ったものです。





●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(1)第一話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(番外編)第一話。 
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(2)第一話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(3)第二話。
●モンテ・クリスト伯と「西の魔女が死んだ」。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(4)第二話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(5)第三話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(6)第三話。
●「モンテ・クリスト伯」原作・TVドラマ比較<人物>
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(7)第四話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(8)暖とすみれと音楽と。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(9)第五話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(10)第五話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(11)第六話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想番外編(12)第七話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(13)第七話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(14)第八話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(15)第八話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(16)第八話。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(17)最終回。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(18)最終回。
●モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-感想(19)最終回。
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