星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

1月の映画館(1)元町映画館 編

2011-01-31 | 演劇・ダンス・映画・音楽・古典・TV
今月は私にしては珍しく映画館で続けさまに映画を観た。
たまたま観たい作品が重なったこともあるけど、久々に映画館で
映画が観たいと思ったから。
一時期流行ったミニシアターの灯がもう消えつつあると先日のTV
番組で言っていたけれど、行かなくなった理由の1つとして「知
らない映画だから」と若い人が答えていた。
知ろうと思えばいくらでも情報のある時代なのに。
それともTVで宣伝しているものしか信じないのだろうか。
自分で見つける喜びを知らないなんて、オキノドク~。
いや、そこまで余裕のない、遊びのない時代になってしまったの
かもしれない。

<元町映画館編>
そんなさなか、神戸では昨年、元町センター街に「元町映画館」
というミニシアターが突然オープンした。
略して呼ぶと、昔、元町にあった名画座系の映画館と同じ名前に
なるけれど、それとは全く関係ないらしい。ツイッターで支配人
に直接質問したらすぐにそう答えていただけた。
気をつけていないと通りすぎてしまうほど小さめの間口。
中に入るとスタッフの皆さんがお出迎え♪
初めて行ったけれど、とてもあったかい雰囲気の映画館だった。

そこでチョイスした映画が「スプリング・フィーバー」。
公式サイトはこちら
ふたりの主演男優のインタビューはこちら


「スプリング・フィーバー」
『天安門、恋人たち』で天安門事件を描いたことにより、中国で
の映画製作を5年間禁じられたというロウ・イエ監督の近作。
舞台は現在の中国、南京。男どうしの同性愛をモチーフに、複数
の男女の複雑に絡み合う心模様を描いたラブストーリーもの。

家庭用デジタルカメラでゲリラ的に撮影を重ねたという映像が、
水に浮かぶ蓮の花のごとく漂いながら生きる主人公の生き方とよ
く合っていた。
(蓮の花の白、ピンク、グリーンにも意味があるように思える。)
刃傷沙汰の後、彼が愛する人(男)の記憶につながる傷の周りに
タトゥーを入れる感覚にはゾクゾク。あれは傷を隠そうとしたの
ではなく、彼が背負った十字架、つまり死ぬまでその人に祈りを
捧げる意味の薔薇のロザリオ的なものではないかと思う。

タトゥーを入れ終えた彼が派手シャツで往来に出てきたタイミン
グで映像に漢字で重なる詩がすっごくカッコイイの。
宋代の歌妓が書いた詩の一部。意味は・・・

好きで浮き世を漂うにあらず
すべては宿命に似たり
花のいのちも さだめのままに


これを読んでようやく彼の気持ちに寄り添うことができた。
漂いながらも、結局同じ生き方を貫いているのは彼だけじゃな
いかと思った。どう抗ってもそうしか生きられないのだ。
宿命とはそれほど重く厳しいものだと思う。

この映画には男2人・女1人の旅が出てくる。
典型的なフランス映画のパターンである女をめぐる関係ではなく、
一人の男をめぐる男と女という関係だ。
(アタシはどんな愛でもありだと思うけれど、あちらとこちらの
世界を自在に行き来する男というのはなんかヤダナア~。笑。)
で、旅の途中で自分の恋人の秘密を知ってしまったリー・ジン(女)
が一人涙を流しながらカラオケで歌うシーンから思いっきり感情
移入。ここから船の旅の場面まで、3人といっしょに波間に漂い
ながら気持ちよく泣き続けてしまったのだった。
法的拘束力のある妻なら夫を罵倒することもできるが、恋人どう
しなら・・・女は男を黙って捨て去るのみ。I agree!だ。

時任三郎似だと思っていた探偵役のチェン・スーヨン。ナント笑
みを見せるたび、だんだん堺雅人に見えてきて仕方なかった。
主人公ジャン・チョン役のチン・ハオには惹かれるものがある。
リー・ジン役のタン・ジュオ、間違いなくいい女候補だ。

好きだなあ~、私は。この映画が。この感覚が。
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