美しっ!!楽しっ!
静と忠信のうっとりする舞踊劇と、大勢の若い役者たちのキビキ
ビした立ち回りで、最後の最後までオイシイ、とにかく大興奮の
吉野山だった。
道行初音旅、通称、吉野山。
愛之助さんが口上で言われたように本来、義太夫では逸見の藤太
は出てこないらしい。今回の永楽館はその逸見の藤太が登場する
バージョンで、藤間のご宗家の振付とのこと。
全く個人的な話だけれど、たまたま直前に拝見した、猿之助さん
と玉三郎さんによる吉野山(1992年歌舞伎座・忠信篇の映像)と
ほぼ同じ構成だと観劇の途中で気づき、ドキドキした。
いわばフルバージョンの忠信。
それを愛之助さんがいま目の前で演じていることが思いがけなく
うれしくて、私としては感慨ひとしおだった。
以下、1回かぎりの記憶の断片をつないで、備忘録。
義経千本桜
道行初音旅(みちゆきはつねのたび)
佐藤忠信実は源九郎狐:愛之助
逸見の藤太:薪車
静御前:壱太郎
定式幕が開くと目の前がパーッと明るくなった。
幾重にも連なる桜景色は吉野山。
本舞台にも大きな桜の木が立っている。
(しかし、絵の中のお寺が蔵王堂じゃないのが気になる私~笑。)
花道から登場する静御前は壱太郎さん。
手には真鍮色の杖と笠。
白ではなく、赤い衣装を着ているのは文楽風の拵えだろうか。
一途さの同居した可愛らしい静だ。扇を持って踊る姿を見ながら、
年々きれいになっていくなあ♪と、しみじみ。
藤十郎さんと同じ役。こんなふうに経験を積んでゆくんだわ~。
静が鼓を出して叩くと太鼓の連打が聞こえてきて、出るぞ出るぞ、
という気配が♪
出たぁ~!!(笑)
スッポンからそろそろとせり上がってくる、忠信。
ひゃあ~! 両目を閉じた顔の、なんてまばゆく美しいこと♪
それを近くで見る幸せ。ここでひときわ大きな拍手が。
その後も伏し目がちなままゆっくり上がってゆくので、花道近く
の人は目が合うような合わないような(笑)。バクバク!
人力で担ぎあげるスッポンの優しいスピードに感謝♪
愛之助さん。紺色の衣装で旅姿。目尻と鼻の下に紅をさした狐メ
イクがよく似合っている。
端正でいて色気があって、ほのかに妖しい。
忠信、実は源九郎狐。花道七三でちょこっと狐の動きを見せた後、
本舞台に移動して、桜を愛でながら静と二人で踊る。
静が見ていない時に一瞬、狐らしい手つきやジャンプが混じる。
キッと引き締まった狐の表情の中にも、合間合間にフッとした笑み
を見せるのがたまりませぬ。
背中の荷をおろした忠信、傍らの切り株に義経から賜った着長の鎧
を置き、静がその上に初音の鼓をのせる。
それを義経に見立て、ふたり恭しく座礼をする。
静御前に所望され、忠信は源平の合戦の様子を語り始める。
戦で命を落とした兄・継信を想い、涙する忠信。
この場面だったと思うが、忠信の短い語りが2~3度入り、竹本の浄
瑠璃に合わせ勇壮な踊りとなる。
自らギバも披露するところが愛之助さんらしいと思った。
二人が上手に引っ込むと逸見の藤太と家来(花四天)が花道に登場。
え!ええ? これがさっき伝兵衛さんだった薪車さん?(笑)
道化っぽい化粧に、可笑しな台詞回しで家来たちと掛け合いを。
なんだか家来たちにいさめられたりして、観客に笑われていたし、
永楽館にちなんだ台詞をオモシロ可笑しく述べて、ウケていた。
薪車さん、このオッサンくさい役が楽しそうでさえある♪
静御前を守るため、忠信が花四天と立ち回りを始める。
愛之助さん、上だけ淡萌黄色の衣装になり、爽やか&素敵~♪
見れば、去年の弁天で鳶頭を勤めた松次郎くんも四天をやっている。
(そういや開演前に外で素顔の松次郎くんを見かけたんだった。)
佑次郎くんもいる。身体能力の高い上方若衆たちが一つ一つの動作
をキビキビ、丁寧にこなしてゆく姿が頼もしい♪
なんといっても男前ぞろいだ。
忠信がいつのまにか逸見の藤太を邪鬼のように踏みつけて、見得を
決めている。藤太の目玉がピンポン球みたいに飛び出してビックリ!
コミカルな演出に客席も大笑いだった。
楽しくて、誰にでもわかりやすくて、永楽館にぴったり♪
敵方がいなくなり、静御前がひとり花道を通って先を急ぐ。
その姿を目で追って(義経を見送る弁慶のように)見送る忠信。
その後、怪しげな音(笛か太鼓)がしたかと思うと、引き抜きでぶっ
かえり。忠信の衣装が白地に金色の火焔模様に変わっていた。
髪も横に下ろして、妖しさが増している。
(ここで桜の花びらが若干降ってきたような気がする・・・。)
立ち回りで終わりだと思っていたのに、まだあるなんて!
このぶっかえりは猿之助さんの映像でもほぼ同じだったが、あとが
違っていた。狐六法で引っ込む前の見せ場に私たちは大喜び。
ますます狐っぽい動きの忠信。
花道には2人の四天が先回りして待ち構えている。
慌てず騒がず、忠信が両手を突き出すと狐の法力によって、2人が
背ギバでひっくり返った。お見事!
花道を退散する2人の四天。
これこそ迫力満点、拍手喝采の永楽館スペシャルだったのだと思う。
最後は狐六法。ピョンピョン軽快に跳ねながら、嬉しそうに静御前
を追って行った。その後ろ姿がいまも鮮明にこびりついている♪
最後の花道の引っ込み、いったいどんな顔をしていたのだろう。
大きな拍手が長い間続き、小屋中いっぱいに鳴り響いた。
聞くところによれば、この2日後からカーテンコールがつくように
なったらしい。
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愛之助さんが口上で言われたように本来、義太夫では逸見の藤太
は出てこないらしい。今回の永楽館はその逸見の藤太が登場する
バージョンで、藤間のご宗家の振付とのこと。
全く個人的な話だけれど、たまたま直前に拝見した、猿之助さん
と玉三郎さんによる吉野山(1992年歌舞伎座・忠信篇の映像)と
ほぼ同じ構成だと観劇の途中で気づき、ドキドキした。
いわばフルバージョンの忠信。
それを愛之助さんがいま目の前で演じていることが思いがけなく
うれしくて、私としては感慨ひとしおだった。
以下、1回かぎりの記憶の断片をつないで、備忘録。
義経千本桜
道行初音旅(みちゆきはつねのたび)
佐藤忠信実は源九郎狐:愛之助
逸見の藤太:薪車
静御前:壱太郎
定式幕が開くと目の前がパーッと明るくなった。
幾重にも連なる桜景色は吉野山。
本舞台にも大きな桜の木が立っている。
(しかし、絵の中のお寺が蔵王堂じゃないのが気になる私~笑。)
花道から登場する静御前は壱太郎さん。
手には真鍮色の杖と笠。
白ではなく、赤い衣装を着ているのは文楽風の拵えだろうか。
一途さの同居した可愛らしい静だ。扇を持って踊る姿を見ながら、
年々きれいになっていくなあ♪と、しみじみ。
藤十郎さんと同じ役。こんなふうに経験を積んでゆくんだわ~。
静が鼓を出して叩くと太鼓の連打が聞こえてきて、出るぞ出るぞ、
という気配が♪
出たぁ~!!(笑)
スッポンからそろそろとせり上がってくる、忠信。
ひゃあ~! 両目を閉じた顔の、なんてまばゆく美しいこと♪
それを近くで見る幸せ。ここでひときわ大きな拍手が。
その後も伏し目がちなままゆっくり上がってゆくので、花道近く
の人は目が合うような合わないような(笑)。バクバク!
人力で担ぎあげるスッポンの優しいスピードに感謝♪
愛之助さん。紺色の衣装で旅姿。目尻と鼻の下に紅をさした狐メ
イクがよく似合っている。
端正でいて色気があって、ほのかに妖しい。
忠信、実は源九郎狐。花道七三でちょこっと狐の動きを見せた後、
本舞台に移動して、桜を愛でながら静と二人で踊る。
静が見ていない時に一瞬、狐らしい手つきやジャンプが混じる。
キッと引き締まった狐の表情の中にも、合間合間にフッとした笑み
を見せるのがたまりませぬ。
背中の荷をおろした忠信、傍らの切り株に義経から賜った着長の鎧
を置き、静がその上に初音の鼓をのせる。
それを義経に見立て、ふたり恭しく座礼をする。
静御前に所望され、忠信は源平の合戦の様子を語り始める。
戦で命を落とした兄・継信を想い、涙する忠信。
この場面だったと思うが、忠信の短い語りが2~3度入り、竹本の浄
瑠璃に合わせ勇壮な踊りとなる。
自らギバも披露するところが愛之助さんらしいと思った。
二人が上手に引っ込むと逸見の藤太と家来(花四天)が花道に登場。
え!ええ? これがさっき伝兵衛さんだった薪車さん?(笑)
道化っぽい化粧に、可笑しな台詞回しで家来たちと掛け合いを。
なんだか家来たちにいさめられたりして、観客に笑われていたし、
永楽館にちなんだ台詞をオモシロ可笑しく述べて、ウケていた。
薪車さん、このオッサンくさい役が楽しそうでさえある♪
静御前を守るため、忠信が花四天と立ち回りを始める。
愛之助さん、上だけ淡萌黄色の衣装になり、爽やか&素敵~♪
見れば、去年の弁天で鳶頭を勤めた松次郎くんも四天をやっている。
(そういや開演前に外で素顔の松次郎くんを見かけたんだった。)
佑次郎くんもいる。身体能力の高い上方若衆たちが一つ一つの動作
をキビキビ、丁寧にこなしてゆく姿が頼もしい♪
なんといっても男前ぞろいだ。
忠信がいつのまにか逸見の藤太を邪鬼のように踏みつけて、見得を
決めている。藤太の目玉がピンポン球みたいに飛び出してビックリ!
コミカルな演出に客席も大笑いだった。
楽しくて、誰にでもわかりやすくて、永楽館にぴったり♪
敵方がいなくなり、静御前がひとり花道を通って先を急ぐ。
その姿を目で追って(義経を見送る弁慶のように)見送る忠信。
その後、怪しげな音(笛か太鼓)がしたかと思うと、引き抜きでぶっ
かえり。忠信の衣装が白地に金色の火焔模様に変わっていた。
髪も横に下ろして、妖しさが増している。
(ここで桜の花びらが若干降ってきたような気がする・・・。)
立ち回りで終わりだと思っていたのに、まだあるなんて!
このぶっかえりは猿之助さんの映像でもほぼ同じだったが、あとが
違っていた。狐六法で引っ込む前の見せ場に私たちは大喜び。
ますます狐っぽい動きの忠信。
花道には2人の四天が先回りして待ち構えている。
慌てず騒がず、忠信が両手を突き出すと狐の法力によって、2人が
背ギバでひっくり返った。お見事!
花道を退散する2人の四天。
これこそ迫力満点、拍手喝采の永楽館スペシャルだったのだと思う。
最後は狐六法。ピョンピョン軽快に跳ねながら、嬉しそうに静御前
を追って行った。その後ろ姿がいまも鮮明にこびりついている♪
最後の花道の引っ込み、いったいどんな顔をしていたのだろう。
大きな拍手が長い間続き、小屋中いっぱいに鳴り響いた。
聞くところによれば、この2日後からカーテンコールがつくように
なったらしい。
●ブログ内の関連記事
興奮の永楽館大歌舞伎@日帰りバスツアー
永楽館大歌舞伎「近頃河原の達引 堀川与次郎内の場」
観劇機会があればできるだけイロイロ見ておきたいです。
文楽も参考になりますしね。
「永楽館スペシャル」ですが、私が勝手にココじゃないか、
ココだったらいいのにな~と推測しただけです(笑)。
いつかトークショーでもあれば、ご本人に質問できる
機会があるかもしれませんが・・・・・・。
今回、忠信のフルバージョンが見られてほんとに幸せ
でしたね!
バタバタしましたけど、今年も充実したいい舞台でしたね。
> 凛とした「背中」を間近で拝見出来ました(笑)
おお~、伏し目がちな美しいお顔の「裏」ですね♪
これをつなげば360度になりますね!(笑)
どこからどんなふうに見てもドキドキの尽きないひとですよね♪
で、傾いてたんですね~、板(!!!)
> 愛之助さんが降ってくるんじゃないか
うっ、そんな間近で見られたのですか!
それでは冷静に見られるわけはございませんよっ。
私は1回きりの観劇なので記憶がかなりアヤシイです~。
ご注意くださいまし(笑)。
他の「吉野山」をほとんど知らないので、
「永楽館スペシャル」と言われても
どこがどうスペシャルなのか分かっていませんでした
ムンパリさんのおかげでそこのところの
「ありがたみ」が多少なりともわかり
とても嬉しいです。
愛之助さんの舞台はもちろんですが、
もっともっとたくさんの演目を様々な役者さんで観ていこうと思います。
これからもたくさん教えてください。
よろしくお願いします。
席は花道外すっぽん横だったので、バランス悪そうに傾いた板に乗っていながらそんな不都合さを全く感じさせない愛之助さんの凛とした「背中」を間近で拝見出来ました(笑)
なので、教えていただきありがとうございました!
あの時の表情は、伏し目がちな美しいお顔だったのですね☆
花道の横板の隙間から光が洩れていたので、姿こそ見えませんでしたが、私の足元に愛之助さんがスタンバイしてると思うとドキドキの席でした!
あと、花道での立ち回りも、愛之助さんが降ってくるんじゃないかという感じで迫力満点でした(笑)
…とそんなミーハー的な感じでしたので、ムンパリさまのblog拝見して、さすがだなぁとまたまた感動したしだいです。
いつも詳しいお話本当にありがとうございます☆
事前レクチャーを受けていない私が勝手に言うのは
ヘンですよね。単なる私の印象とか、直感です(汗)。
今回はいつもと少し違う吉野山を、と愛之助さんが
おっしゃってたので、どのあたりが他の人と違うのか
乏しい知識を総動員して考えてみました。
(手持ちの他の人の映像を見たり、調べたり。
前に見た歌舞伎や文楽の舞台を思い出したり。
いらんことをいっぱいするからアップが遅い!涙。)
海老蔵さんとか、亀治郎さんとかの若々しい忠信を
他に見ていないせいもあって、ああいうギバのような
激しい振付は吉野山ではあまりないんじゃないかと
思ったんですね。花四天でもないのに。
それにギバって、愛之助さんの舞台でよく見ると
思いませんか? 当社比ですけど(笑)。
あとは逸見の藤太を踏みつける時のコミカルな演出と、
狐六法の前の花四天との対決。
どれも今回のオリジナルではないかと勝手に思っています。
とにかく大興奮、小屋中が盛り上がったので大成功♪
今後につながる素晴しい舞台だったと思います。
美しくも妖しい忠信にすっかり魅了されました。
観終わったときに放心状態になるような感じではなく、元気になれるような舞台だったと思います。
いつもながら、ムンパリさんのレポは詳細でいて感動と愛にあふれています。
見習わねば・・・と思うのですが(笑)
精進したします
>自らギバも披露するところが愛之助さんらしい
あの尻餅のことを「ギバ」というのですね。
勉強になります。
すみません、超初心者に一つお教えください。
「愛之助さんらしい」というのは?
ひょえ~、上がってくる音まで聞こえたのですか!
もう1回は狐六方で瑠衣さんのほうに向かって・・・!
今回はずいぶん違った角度から楽しまれたのですね。
赤い衣装の件、ありがとうございます!
江戸と上方の違いですか。
以前、文楽の吉野山を見た際に赤だったと記憶して
おりまして、上方の「赤」はそこから来ているのかも。
藤十郎さんが数年前に白の衣装を着て静を演じられたのは
勘三郎さんの江戸前に合わせられたのだと合点がいきます。
> 愛之助丈の速見藤太
そんなときがあったのですか、うう、見ていないです(涙)。
今回の薪車さん、ハマっていたと思います。
ご本人も好きなんでしょうね!
静の赤い衣装、去年の薪車さんが着られた松王丸の衣装も赤でしたが、江戸歌舞伎ではどちらも白ですが。上方歌舞伎では赤らしいですよ。
薪車さんの速見藤太、亀次郎さんの吉野山に付き合われた時にも演じられましたが、なんだか本人も二枚目よりも楽しんでやっておられるように思います。愛之助丈の速見藤太も少しチャリが入って面白かったですが。