デオキシコルチコステロン産生副腎皮質腫瘍の症例報告
日本泌尿器科学会雑誌 1995; 86: 957-960
高血圧症と低カリウム血症を認め、アルドステロン作用亢進が疑われるが、アルドステロンは抑制されており、アルドステロンの前駆体であるデオキシコルチコステロンが高値となる。
診断時の平均年齢は44歳で、1995年の時点で世界で報告例は 19例しかなかった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol1989/86/4/86_4_957/_article/-char/ja/
デオキシコルチコステロン産生副腎皮質腺腫の29歳女性についての症例報告
Endocr J 1995; 42: 637-642
切除した腫瘍の免疫染色では、P450 17α (17α-水酸化酵素) は検出されなかった。17α-水酸化酵素を欠損していれば、糖質コルチコイドや副腎アンドロゲンは合成できず、鉱質コルチコイドが蓄積する。
しかし、P450 11β (11β 水酸化酵素 ※アルドステロン合成酵素と相同性が高いので、11β 水酸化酵素に対する抗体はアルドステロン合成酵素に結合する)は検出された。
一方、腫瘍組織の 11β-水酸化酵素の酵素活性(アルドステロン合成酵素は 11β水酸化酵素活性も有する)は正常組織と比較して低下していた。
これらの結果から、腫瘍組織で 17α-水酸化酵素が発現低下し、11β水酸化酵素(アルドステロン合成酵素)の活性が低下することにより、デオキシコルチコステロンが蓄積したと推測された。
妊娠後期に発見されたデオキシコルチコステロン産生副腎皮質腺腫の症例報告
Endocrinol Diabetes Metab Case Rep 2019; 18-0164
低レニン・低~正常アルドステロンの高血圧の鑑別としては、Cushing 症候群、先天性副腎過形成、Liddle 症候群、apparent mineralcorticoid excess, 偽性アルドステロン症、11β-デオキシコルチコステロン産生腫瘍が挙がる。
デオキシコルチコステロン高値は 17α-水酸化酵素または11β-水酸化酵素の欠損、あるいは 11β-水酸化酵素の活性阻害薬(メチラポン、ミトタン)が原因になる。
糖質コルチコイド産生腫瘍におけるステロイドホルモン合成酵素の転写制御の異常についての総説
J Steroid BioChem Mol Biol 2003; 85: 449-456
Endocrinology 2011; 152: 2266-2277
ホルモンを過剰産生する副腎皮質腺腫の原因としてステロイドホルモンの合成酵素自体の変異は知られておらず、ステロイドホルモンの合成酵素の転写制御の異常が重要な役割を果たしていると考えられている。
ステロイドホルモンの合成酵素の転写制御で重要なはたらきをすると考えられているのは、SF-1 と COUP-TFs である。
SF-1 は副腎皮質に特異的に発現する転写因子で複数のステロイドホルモン合成酵素の転写を制御している。一方、COUP-TFs は SF-1 の活性を負に制御している。
実際、コルチゾール産生腺腫では、17α-水酸化酵素の過剰発現を認める一方で、COUP-TFI, COUP-TFII はともに発現低下していた。
→DOC 産生腫瘍で SF-1, COUP-TFs, ステロイド合成酵素の発現量を調べられれば、DOC 産生腫瘍の病態生理解明に有用な情報が得られるかもしれない。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12943735/
副腎皮質に特異的な転写因子である DAX-1 と SF-1 についての総説
Best Pract Res Clin Endocrinol Metab 2015; 29: 607-619
DAX-1 は伴性遺伝の遺伝形式をとる先天性副腎低形成の原因遺伝子として同定されている。SF-1 は先天性副腎皮質機能低下症および精巣低形成の稀な原因。
DAX-1 も COUP-TFs と同様に SF-1 の転写活性を負に制御することが示されており、副腎腫瘍での発現量が調べられている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5159745/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11592817/