東京虚業大学より
エイベックスによる、裁判準備書面「閲覧等の制限申立書」
2011/11/17 21:04
東京地裁におけるエイベックスとC-JeSエンターテインメントの裁判準備書面について、エイベックス側が下記のような申し立てを裁判所に対して行っている。
「閲覧等の制限申立書事件
申立人 エイベックス・マネジメント株式会社
被申立人 株式会社シージェスエンタテイメント 外2名
事件記録閲覧制限申立書
平成23年11月10日
東京地方裁判所民事第29部B係 御中
申立人代理人弁護士 升本 善朗
同・吉野 史紘
同・金子 剛大
第1 申立ての趣旨
上記事件当事者間の御庁に係争中の平成23年(ワ)第17612号事件(以下、「本件事件」という。)の事件記録中、別紙目録記載の記録(以下「本件事件目録」という。)については、閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付またその複製の請求をすることができる者を同事件の当事者に限るとの決定を求める。
第2 申立の理由
1 本件情報が営業秘密に該当すること
本事件記録に記載されている情報(以下、総称して「本件情報」という。)は、営業秘密(民事訴訟法第92条第1項第2号、不正競争防止法第2条第6項)の3つの要件(有用性、秘密管理性、非公知性)を満たしており、申立人の営業秘密に該当する。
(1) 本件情報が申立人の事業活動に有用な営業上の情報であること(有用性)
申立人は、アーティスト、芸能タレント等のマネジメントを主要な業務とする株式会社であり、被申立人シージェスエンタテイメント株式会社(以下「J-jeS」という。)を始め、多くのマネジメント会社との間で取引関係を有する会社である。本事件記録は、申立人とC-jeSとの専属契約書であるが、ここには、専属契約の契約期間(第3条)をはじめ、申立人がC-jesに支払う契約金の額(第10条第1項①)やアーティストの印税の計算方法(同条項②)、利益配分の割合(同条項③)等も記載されており、これらの情報がC-jeS以外のマネジメント会社に伝わった場合、当該マネジメント会社は、申立人とC-jeSとの間の本件情報を引き合いに出すことにより、申立人との取引において、本件情報を交渉材料として利用することが可能となる。
したがって、本件情報が、営業秘密の要件である「有用性」を満たしている。
(2) 本件情報が秘密として管理されていること(秘密管理性)
本件情報のうち、甲第1号証の内容及びこれに基づき知り得た相手方の業務上の秘密につき、申立人及びC-jeSは、互いに、秘密保持義務を負っている(第19条)このため、申立人においては、本件事件記録について、原本は外部の倉庫の保管し、原本をPDF化したデータについてもパスワードによる閲覧制限をかけて、特定の従業員及び役員の一部のみがアクセスできる状態で保管するなど、これを秘密情報として厳重に管理している。
したがって、本件情報は営業秘密の要件である「秘密管理性」を満たしている。
(3) 本件情報は公然と知られていないものであること(非公知性)
上記(2)のとおり、本件情報は、申立人及びC-jeSにおける秘密保持義務の対象となっており、秘密情報として厳重に管理されているだけでなく、本件情報のうち、特に専属契約の契約金やアーティスト印税の割合等、一般に公開されることがおよそ想定されていない業務上の秘密情報である。
したがって、本件情報は、公然と知られているものではなく、営業秘密の要件である「非公知性」を満たしている。
(4)小括
以上により、本件情報は、営業秘密の3つの要件を満たし、申立人の営業秘密に該当する。
2 本件における訴訟記録閲覧制限の必要性
民事訴訟法によれば、何人も訴訟記録を閲覧できるとされている(民事訴訟法第91条第1項)。申立人は多くのマネジメント会社やアーティストとの取引関係を結んでいるものであり、日頃から世間の注目を集める存在である。そして、本事件においても、「JYJ」という絶大な人気を誇るアーティストの契約関係が争点とされていることから、マスコミや他のマネジメント会社等多数の第三者が訴訟記録の閲覧等を請求することが容易に予想され、一度閲覧等により本件情報が第三者の目に触れれば、マスコミやインターネット等を通じて本件情報が一気に伝播し、不特定多数の人々に本件情報を知られる可能性が十分に存する。
現に、本件事件の準備書面を閲覧したと思われる者がその内容を自身のブログに投稿する自体も生じており、本件情報の流出も予断を許さない状況である。(疎第1号証:ブログ記事)。
かかる事実を鑑みれば、本件事件記録につき第三者の閲覧等を制限しなければ、事後的に本件情報の流出、拡散を防止することは不可能であり、これにより生ずる不利益は甚大である。
したがって、以上の点からも、本件事件記録の閲覧等については制限される必要性が高い。
第3 結論
以上のとおりであるから、申立人は、本件事件記録について、民事訴訟法92条第1項に基づき、当事者以外の者による閲覧等を制限されたく、本申立てに及ぶ次第である。
以上」
文中にある「疎第1号証:ブログ記事」とは、当ブログのことである。
一企業の利益だけでない、公平・中立、公共性、公益性を重視する判断を、東京地裁には切に期待したい。この案件は、芸能界の一部分に止まらない、まさに「社会問題」なのだから。