フィリピンに駐在していた時のこと。
大阪に本社があり、工場をマニラに持つ会社で私は勤務していた。駐在2年目のころ歯の健康診断に行こうと思い立ち、現地の歯科医院に行った。私の歯は1本を除いて優秀だ。この1本というのは高校生の時虫歯で抜歯したもので、ブリッジをしていた。
特に痛むところはない。ブリッジの調子が少し変でメンテナンスしてもらおうと思って行ったのであるが、命を失いかねない大変な目にあった。
会話は英語で行う。ブリッジをはずした内部が虫歯になっているとのこと。 フィリピン人歯科医師は虫歯になっていますと言って、そのあと何も説明もなしで治療をしだした。麻酔を打ちペンチらしきものでなにかやっている。 歯を抜いている。この歯科医師はなんの説明もなしに、私の虫歯になっているという歯を抜歯していたのだった。
そして治療が終わった。1本抜かれてしまった。 フィリピンでは、歯科医師の主な治療法は抜歯だと聞いたことが有る。虫歯で歯科医院に行ったらほとんどの医師は抜歯するそうだ。患者に断りも入れない。抜歯が最良の治療だと思っている。 確かに、フィリピンでは歯のない人間が多い。
治療が終わった。医師は薬を出した。この薬を1日3回、5日間飲んでくださいという。
フィリピン歯科医師に不信感を抱いた私はどうも薬を飲む気になれない。 1日分飲んだ後飲むのを止めた。すると、私の体に大変なことが起こった。抜歯手術した箇所に菌が入り込み、化膿した。 菌の増殖はすさまじいと形容してよいほどで、顔は腫れる、何やら化膿しているにおいまでしてくるといった事態になり私は怖くなった。歯科医師に電話をしても出ない。
会社の友人は私の異常を知り、「抗生物質」を飲めという。 抗生物質は体内に入った菌を殺す薬で、薬局に売っている。処方箋は不要。だれでも買える。薬の名は「Cefarakishin 」セファラキシン」という。薬代は約1000円程度。取りもとりあえず、購入し飲んだ。すると、劇的といってもよいほど快方に向かった。腫れは収まり、化膿しているにおいも消えた。
後でわかったことだが、もし抗生物質(殺菌する薬)をのまなかったなら、私は命を失っていただろう。細菌症で亡くなるケースは多いらしい。
抗生物質とは何か
抗生物質とは何かを調べてみた。それは、「ペニシリン」という。1928年細菌学者イギリスのアレクサンダー・フレミング によって発見された。かれはペニシリン発見の功績でノーベル医学賞を受賞した。過去先人は様々な功績を残してくれているが、人類最大の功績は「ペニシリンの発見である」と、私は思う。 フレミングによって発見されるまで、人は人体に侵入してきた強力な細菌には無力であった。 怪我をして傷口から菌が血液を介して体に侵入してきた場合多くの者が命を落とした。 第一次世界大戦時、莫大な兵士が細菌症で亡くなった。ペニシリンが発見されたたおかげで、人間の寿命は飛躍的に伸びた。 人類史上最も偉大な発見だといえる。
ペニシリンとは何か。それば 「カビ」だ。お餅を放置しておくと自然,表面に曇りが発生する。それは カビ。 日常何気なく接する カビ。 このカビが白血球でも対抗できない強力な細菌を死滅させる。
フレミングは研究中、ガラス皿上の細菌がたまたま飛来して落下したカビの胞子によって死滅しているのを発見した。
そう、細菌を死滅させるペニシリンとは 日常見かける「かび」だったのだ。 カビが、人を殺してしまう強大な細菌を殺すのだ。
すごいことだ。私は手を合わせて感謝する。
自然界に発生した細菌は、また自然界に発生したカビによって死滅させられる。これが発見されたのはつい90年前の1928年のことだ。
私は、フレミングの功績により、死をまぬかれた。なんて素晴らしい発見なのだろうと思う。
ペニシリンが発見されるまで、ちょっとしたキズで、菌が入り、そのまま亡くなってしまうという時代が1928年で終わった。
私たち現代人が健康で長生きできるのも、先人の功績のおかげである。
私は自称、素人神道研究家である。
この 「細菌」と「ペニシリン」の関係は、「魔」と「神」の関係とも言えると思う。
神の働きとは、産もう。育てよう。成長しよう。生きよう。成功しろ。という目に見えないエネルギー。
一方、魔の働きとは、神の作ったものを破壊しよう。殺そう。つぶそう。汚そう。無くそうとするエネルギーと言える。
ペニシリンが発見されるまで、人類は死を恐れた。しかし、ちゃんと、神というエネルギーは存在していた。ペニシリンは人間が作ったものではない。大自然界に存在している有機物質だ。
ペニシリンを存在なさしめた根源はなにか、それは、生きよ。生きるんだ。負けるな。という大自然界の意思の表れであると私には思えてならない。
偶然の産物であろうか?カビは。 決してそうではない。意思がある。 お前たち、これを飲め、そしたら病気が治って健康になれるよという、意思が存在するのを感じる。
カビは有機物、生命体、微生物だ。「意思」がそこにある。 私たちは、大自然界の意思によって生かされている。
私の命を助けたペニシリン、セファレキシン
カビが細菌を死滅させている様子がわかる。
セファレキシは緑色のカビ から作られる。
私たちは カビ に接したとき、どういう感情を持つだろうか? 気持ち悪い??
しかし、この カビこそ 人類を、何百万、何千万という人の命を救ったのだ。
セファレキシで私の体を破壊しようとした、細菌は死滅した。
セファレキシに私は「神」のエネルギーを感じる。生命を生かそう、育もう、守ろう、という、目に見えない「意思」を感じる。
大自然界の生きよう、生きるんだという意思、見えないエネルギーを、古代日本人は「神」と呼んだ。
生命を存在させようという大自然界の意思。その意思を「神」と日本人は呼ぶ。
ペニシリンを知って、私を生かしている、「神」に私は感謝と温かい、明るい気持ちになる。発展的、希望に満ちた気持ちになる。
そう、「神」は喜び、感謝、を表す、現に今ここに、そこに存在する。
神は魔に勝つ。魔は神にはかなわない。 生きるとは神の意志のそのものだ。
私たちが生きているのは、神の意思だ。”お前たち、しっかり生きるんだぞ。頑張れ、負けるな。生きるんだ。子孫をつなげ。発展しろ。成功しろ。豊かになれ。”
そういう、目には見えないエネルーギ―が充満していることを、私は感じる。
生命の謳歌
この世は神の創造物。破壊と創造。死と生。神とは生と意味し、魔とは死を意味する。神と魔、生と死は表裏一体で現に存在する事象。
イギリスは世界人類社会に最も良い功績を残している国だとペニシリンを知って思う。
現在、抗生物質はフレミングが発見したカビ由来のペニシリンをきっかけにして、さらに改良、改善され、第一世代、第二世代抗生物質と発展し、様々な抗生物質が開発されている。
私たちは体調が悪い時、歯が痛む時、病院や歯科医院に行く。そして薬が処方される。処方される薬の多くは、「抗生物質」だ。
抗生物質の働き、開発歴史を知った私は、その偉大性に感動する。
医師にアンケート調査が実施されたことがある。
最も人類に貢献した有益な薬剤は何か?
「抗生物質」が二位を大きく引き離して一位であったという。