民間事故調が事故当時官邸で対応にあたった政府関係者の聴取内容が公開された。民間事故調のHPで見ることができる。公表されたのは菅さん、枝野さん、海江田さん、細野さん、福山さんの5人。国会事故調では細野さんは政策決定者ではなかったとして非公開だ。また各事故調が行っている吉田所長の聴取内容も公開して欲しいものだ。その他目に付いた記事も一緒に。
「菅元首相は日本を救った」と細野環境相
産経新聞 7月24日(火)23時50分配信
細野豪志原発事故担当相が、福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の聴取で、昨年3月15日に菅直人首相(当時)が東京電力本店に出向き「撤退はあり得ない」などと言った問題について、「日本を救ったと思っている」と話していることが24日、分かった。民間事故調が同日夜、聴取内容をホームページ(HP)上で公開した。
事故当時、首相補佐官だった細野氏に対しては、政府事故調や国会事故調も聴取しているが、すべて非公開で、細野氏への聴取内容が公になるのは初めて。
細野氏は、菅氏について「国が生き残るために何をしなければいけないかの判断は、すさまじい嗅覚がある人」と評価した。そのうえで「私は(菅氏のように作業員に)『残れ』と言うことには躊躇(ちゅうちょ)した。言えない」と述べている。
民間事故調は、報告書の中で、菅氏のこの時の行動を評価しているが、細野氏のこうした証言が強く影響しているとみられる。
一方、政府が作成しながら公表せず、批判された「最悪シナリオ」については、細野氏が作成を指示したと証言。公表しなかった理由については「数カ月かけて深刻な影響を及ぼすもので、その間に対応できると判断した」と説明した。
民間事故調は細野氏のほか菅氏▽枝野幸男経済産業相▽海江田万里前経産相▽福山哲郎元官房副長官-の4人の聴取内容も同日、公開。内容は民間事故調のHP(http://rebuildjpn.org/)で見られる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120724-00000610-san-soci
「東電全面撤退はなかった」 菅前首相の数少ない手柄も否定 産経Web 2012.7.23 14:36
政府事故調が23日公表した最終報告は、事故対応に当たっての菅直人前首相の数少ない手柄とされる東京電力の全面撤退阻止問題について、今月5日に最終報告書を公表した国会事故調と同様に「(東電が)全面撤退を考えていたと認めることはできない」との認識を示した。菅氏ら当時の官邸メンバーが「全面撤退と受け止めた」と強調してきた大きな争点だったが、客観的評価はほぼ定まった。
この問題では「一部撤退の意図だった」との東電の主張に、最初に報告を出した民間事故調は疑義を呈していた。ただ、民間事故調は東電から聴取できていない。政府、国会両事故調は未公開の東電のビデオ会議記録も調べ、客観的証拠から全面撤退を否定する同じ結論に至った。
記録の断片的発言から、政府事故調は一部関係者が全面撤退を考えた可能性も検討したが、「疑わせるものはあるが断定できない」と慎重に退けた。
また、政府事故調の最終報告は民間、国会両事故調と同じく、菅氏らの現場介入も厳しく批判した。
水素爆発直後の1号機への海水注入に関し、菅氏は最近になって「海水に変えても再臨界が起こることはないと分かっていた」と主張しだしたが、最終報告は菅氏が再臨界に懸念を示し、是非を再検討させたと事実認定。その上で現場対処は「現場を把握し、知識もある事業者の責任で判断すべきで、当初から官邸が現場に介入するのは適切でない」と断じた。
一方で、菅氏に適切な助言を行うべきだった原子力安全・保安院などの専門家についても「誰一人、役割を果たさなかった」と指弾している。「菅氏が疑問を呈しただけで安易に注入を中止させようとした」として、東電幹部の姿勢も問題視した。(千葉倫之)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120723/plc12072314380021-n1.htm
福島第1原発4号機プール 有事に「最も危険」
配信元:産経新聞 2012/07/15 15:47更新
未使用燃料の取り出しに成功すれば、4号機では来年、使用済み燃料の取り出しに着手する計画だ。4号機で先行して行われるのは、現場の放射線量が低いことが最大の理由だが、燃料貯蔵プール内には1535体という大量の燃料があり、地震などで建屋が倒壊した場合、「最も危険」との指摘が上がっていることも背景にある。
4号機は建屋上部のがれき撤去が完了するなど、事故のあった1~4号機の中で廃炉に向けた作業が最も進んでいる。建屋は水素爆発しているが、事故当時は定期検査中だったため、1~3号機のように炉心溶融(メルトダウン)は起きていない。そのため建屋内の放射線量も毎時0・3~0・1ミリシーベルトで、人が連日建屋内に入って作業ができるレベルとなっている。
ただ、1~3号機の燃料はメルトダウンしているものの、圧力容器と格納容器の中にあるため、注水設備が壊れても、30分後には高台にある消防車などで冷却を再開できるバックアップ態勢がある。しかし、4号機の燃料棒はそのままの状態で貯蔵プールに保管されており、地震などでプールが崩れるようなことがあれば、燃料が野ざらし状態となる。そうなれば、「手の施しようはない」(東電)という。燃料を冷却するには水中に入れておく必要があるが、プールごと崩れた場合、燃料を冷却することができなくなるからだ。
4号機の水素爆発による損傷は、プールのある5階より下の3階部分にまで及んでおり、耐震上の懸念は、事故のあった4機の中で最も深刻だ。
プール崩壊という最悪の事態を避けるため、東電は昨年5月から同7月にかけて、プール底部に鋼製の支柱を並べてコンクリートを流し込む補強工事を実施。耐震性は約20%向上したといい、「東日本大震災と同程度の震度6強の地震が発生しても、耐震安全性は十分」と説明している。
保安院も建屋の状況について、「安全性は保たれている」と評価しており、過剰な心配は無用だ。
しかし、万が一の事態になった際の影響は計りしれない。エネルギー総合工学研究所・原子力工学センターの内藤正則部長は「プールが崩れ落ちるような事態だけは何があっても避けなければいけない。東電は亀裂の有無を調べるなど、定期的な検査を行うことが大切だ」と指摘している。(原子力取材班)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/accident/576699/
<政府事故調>「東電解析、信用できぬ」 炉損傷時刻に異論
毎日新聞 7月13日(金)15時1分配信
東京電力福島第1原発事故をめぐる政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)が23日公表する予定の最終報告書で、東電が公表している事故の進展の解析結果を「信頼に足るものではない」と結論付けていることが関係者への取材で分かった。政府事故調が事故後の炉の状態を実測データに基づいて再現したところ、深刻化する過程が東電の解析結果と食い違っていたという。
【国会事故調】原発事故「明らかに人災」…報告書公表
事故調の指摘は、東電による事故の経過説明の信頼性を改めて問い直すもので、東電は再解析の実施を迫られそうだ。
東電は昨年5月と11月の2回、同原発1~3号機の原子炉の事故の経過をコンピューターで解析し公表。経済産業省原子力安全・保安院も同6月、原子力安全基盤機構の解析結果を公表している。東電の11月の解析によると、1号機では昨年3月11日の津波襲来から約2時間半後の午後6時10分ごろ炉心が露出し始め、溶けた燃料が圧力容器を破損させたのは12日午前1時50分ごろ--となっている。
政府事故調は、東電や国による解析結果を検証するため、1~3号機について▽原子炉の温度▽炉内の圧力や水位▽格納容器内の放射性物質の濃度--などの実測データや作業員の証言などを基に、事故後の炉の状態を可能な範囲で再現した。
その結果、1号機の圧力容器破損時間は11日午後11時ごろとなり、東電の解析結果より2~3時間早かった。3号機でも同様のずれを確認。2号機はデータ不足などから比較ができなかった。
ずれの原因は、東電や国が解析の前提条件として使った原子炉への注水量を多めに見積もったため、原子炉の冷却が実際より進んだ結果になった可能性がある。事故調は東電が解析の際、結果に大きく影響する前提条件の詰めが甘かったと指摘。関係者の一人は「(実測データが増えた)昨年11月の解析でも精査しなかったのは怠慢だ」と批判。最終報告書には「東電や国の解析結果は疑わしい」と批判する内容が盛り込まれるという。
◇解説 前提条件の精度が重要
事故を起こした原子炉の状態を推測するにあたって、東京電力や国はコンピューター解析を使った。これは前提条件の設定を間違うと、結果も事実からずれてくるという限界がある。政府事故調が最終報告書でこの点を指摘する方針を決めたのは、十分とは言えない東電などによる解析結果が、あたかも事実のように語られてしまう現状に警鐘を鳴らすためだ。
コンピューター解析は、専門家の間では「頭の体操のようなもの」と理解されており、誤差が避けられない。正確な解析をするには、前提条件をいかに実態に近く設定できるかが重要だ。東電などが前提条件をどこまで真剣に精査したかは不明だが、疑問の余地があれば結果も参考にできなくなる。
79年の米スリーマイル島原発事故の際、格納容器のふたを開けたら、専門家が想定していた以上に事態が深刻だったことが知られている。福島原発事故でも、事故の実態が明らかになっていくのに合わせ、東電や国が誠実に再検証を続ける努力が求められる。【奥山智己、岡田英】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120713-00000053-mai-soci
国会事故調報告の意義と不安 (竹中平蔵の眼)
2012/7/11 7:00 ニュースソース 日本経済新聞 電子版
国会に設置された原発事故調査委員会(黒川清委員長)が7月5日最終報告をまとめ、両院議長に提出した。
これまで日本では、何か重大な問題が起きた場合の「検証」が十分に行われてこなかったという反省がある。こうした中、憲政史上初めて国会が原発事故調査委員会を設置した。独立した専門家を集め、国会の国政調査権を背景に検証が行われたことの意味は大きい。検証に関してはすでに民間事故調査委員会の報告(日本再建イニシアティブによる)がなされている。
今回の報告をどのように読めばいいだろうか。報告書は膨大な分量であり、これを読みこなして今後の政策に生かしていくにはそれなりの時間を要することになろう。ただ現時点で、2つの重要なメッセージがあると思われる。
■問題の本質は「2011年3月11日以前」
第1のポイントは、今回の原発事故が人災であることを明確にした点だ。原発事故に関しては、地震・津波という天災、とりわけ「**年に一度の大災害」という表現でともすれば責任の所在が曖昧にされる傾向がある。しかし今回の報告書はそれを全面的に否定し、関係者の責任を求めた。
とりわけ、問題の本質は「2011年3月11日以前にある」ことが明記された点が注目される。つまり、事故が起きた後の対処というより、安全性に対する準備態勢と、その背後にある政府の電力行政と東京電力のガバナンス体制全体のなかに構造的欠陥があることを指摘している。
第2の点は、経済学で用いられる「規制の虜(とりこ)」という表現で、政府と電力会社の関係に関する問題を提起したことだ。規制の虜という言葉は、ノーベル経済学賞を受賞したG・スティグラーが用いたもので、情報の非対称性に根差した規制する側とされる側の問題点を示している。
具体的に、安全などの点で規制する政府の側に十分な情報や識見がなく、結果的に規制される電力会社の側に主導権を牛耳られる状況が出現したと考えられる。この問題に関する経産省・東電を中心とするもたれあいについては、一般に「原子力ムラ」という表現が用いられているが、その本質は「規制の虜」にある点を明確にしたとも言える。
他にも、今回事故の発火点となった全電源喪失に関し、決して津波だけによるものではなく、地震そのものによる部分があったことは否定できないなど、論争を呼ぶ指摘が満載だ。ただ全体としていえることは、民間事故調の報告と本質的な点で大きく異なる見解が示されてはおらず、おおむねの方向として規制する側とされる側の関係に構造的問題がある、との点で一致している。国会事故調の場合、国政調査権を背景にしているため、民間ではできなかった東電に対する調査が行われている点も大きい。
■今後の政策にどう反映するか
総じて大変意義ある報告が出されたことを歓迎したいが、これに関連する問題をあえて2点指摘しておきたい。第1は、この報告が今後の政策にどのように反映されるか、不安が残ることだ。国会の報告書だから、あくまで立法府・政治家のやる気次第ということになるが、法律ではこの後のプロセスが保障されていない。
第2は、一部新聞や雑誌のコメントでこの報告をシニカルに論評するものがみられることだ。「報告は検証委員会自らの行動を自画自賛している」「ヒアリングを公開でやったことは見世物的で適切でない」といった批判だ。察するにこうした声は、不備を指摘された官僚組織や電力関係者が抱く不満を代弁したものであろう。それだけ、まさに原子力ムラの影響力は依然として強いことを示唆しているのではないか。
今後求められるのは、「検証委員会報告がどう生かされたか」をしっかりと検証することである。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK09004_Z00C12A7000000/
「菅元首相は日本を救った」と細野環境相
産経新聞 7月24日(火)23時50分配信
細野豪志原発事故担当相が、福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の聴取で、昨年3月15日に菅直人首相(当時)が東京電力本店に出向き「撤退はあり得ない」などと言った問題について、「日本を救ったと思っている」と話していることが24日、分かった。民間事故調が同日夜、聴取内容をホームページ(HP)上で公開した。
事故当時、首相補佐官だった細野氏に対しては、政府事故調や国会事故調も聴取しているが、すべて非公開で、細野氏への聴取内容が公になるのは初めて。
細野氏は、菅氏について「国が生き残るために何をしなければいけないかの判断は、すさまじい嗅覚がある人」と評価した。そのうえで「私は(菅氏のように作業員に)『残れ』と言うことには躊躇(ちゅうちょ)した。言えない」と述べている。
民間事故調は、報告書の中で、菅氏のこの時の行動を評価しているが、細野氏のこうした証言が強く影響しているとみられる。
一方、政府が作成しながら公表せず、批判された「最悪シナリオ」については、細野氏が作成を指示したと証言。公表しなかった理由については「数カ月かけて深刻な影響を及ぼすもので、その間に対応できると判断した」と説明した。
民間事故調は細野氏のほか菅氏▽枝野幸男経済産業相▽海江田万里前経産相▽福山哲郎元官房副長官-の4人の聴取内容も同日、公開。内容は民間事故調のHP(http://rebuildjpn.org/)で見られる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120724-00000610-san-soci
「東電全面撤退はなかった」 菅前首相の数少ない手柄も否定 産経Web 2012.7.23 14:36
政府事故調が23日公表した最終報告は、事故対応に当たっての菅直人前首相の数少ない手柄とされる東京電力の全面撤退阻止問題について、今月5日に最終報告書を公表した国会事故調と同様に「(東電が)全面撤退を考えていたと認めることはできない」との認識を示した。菅氏ら当時の官邸メンバーが「全面撤退と受け止めた」と強調してきた大きな争点だったが、客観的評価はほぼ定まった。
この問題では「一部撤退の意図だった」との東電の主張に、最初に報告を出した民間事故調は疑義を呈していた。ただ、民間事故調は東電から聴取できていない。政府、国会両事故調は未公開の東電のビデオ会議記録も調べ、客観的証拠から全面撤退を否定する同じ結論に至った。
記録の断片的発言から、政府事故調は一部関係者が全面撤退を考えた可能性も検討したが、「疑わせるものはあるが断定できない」と慎重に退けた。
また、政府事故調の最終報告は民間、国会両事故調と同じく、菅氏らの現場介入も厳しく批判した。
水素爆発直後の1号機への海水注入に関し、菅氏は最近になって「海水に変えても再臨界が起こることはないと分かっていた」と主張しだしたが、最終報告は菅氏が再臨界に懸念を示し、是非を再検討させたと事実認定。その上で現場対処は「現場を把握し、知識もある事業者の責任で判断すべきで、当初から官邸が現場に介入するのは適切でない」と断じた。
一方で、菅氏に適切な助言を行うべきだった原子力安全・保安院などの専門家についても「誰一人、役割を果たさなかった」と指弾している。「菅氏が疑問を呈しただけで安易に注入を中止させようとした」として、東電幹部の姿勢も問題視した。(千葉倫之)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120723/plc12072314380021-n1.htm
福島第1原発4号機プール 有事に「最も危険」
配信元:産経新聞 2012/07/15 15:47更新
未使用燃料の取り出しに成功すれば、4号機では来年、使用済み燃料の取り出しに着手する計画だ。4号機で先行して行われるのは、現場の放射線量が低いことが最大の理由だが、燃料貯蔵プール内には1535体という大量の燃料があり、地震などで建屋が倒壊した場合、「最も危険」との指摘が上がっていることも背景にある。
4号機は建屋上部のがれき撤去が完了するなど、事故のあった1~4号機の中で廃炉に向けた作業が最も進んでいる。建屋は水素爆発しているが、事故当時は定期検査中だったため、1~3号機のように炉心溶融(メルトダウン)は起きていない。そのため建屋内の放射線量も毎時0・3~0・1ミリシーベルトで、人が連日建屋内に入って作業ができるレベルとなっている。
ただ、1~3号機の燃料はメルトダウンしているものの、圧力容器と格納容器の中にあるため、注水設備が壊れても、30分後には高台にある消防車などで冷却を再開できるバックアップ態勢がある。しかし、4号機の燃料棒はそのままの状態で貯蔵プールに保管されており、地震などでプールが崩れるようなことがあれば、燃料が野ざらし状態となる。そうなれば、「手の施しようはない」(東電)という。燃料を冷却するには水中に入れておく必要があるが、プールごと崩れた場合、燃料を冷却することができなくなるからだ。
4号機の水素爆発による損傷は、プールのある5階より下の3階部分にまで及んでおり、耐震上の懸念は、事故のあった4機の中で最も深刻だ。
プール崩壊という最悪の事態を避けるため、東電は昨年5月から同7月にかけて、プール底部に鋼製の支柱を並べてコンクリートを流し込む補強工事を実施。耐震性は約20%向上したといい、「東日本大震災と同程度の震度6強の地震が発生しても、耐震安全性は十分」と説明している。
保安院も建屋の状況について、「安全性は保たれている」と評価しており、過剰な心配は無用だ。
しかし、万が一の事態になった際の影響は計りしれない。エネルギー総合工学研究所・原子力工学センターの内藤正則部長は「プールが崩れ落ちるような事態だけは何があっても避けなければいけない。東電は亀裂の有無を調べるなど、定期的な検査を行うことが大切だ」と指摘している。(原子力取材班)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/accident/576699/
<政府事故調>「東電解析、信用できぬ」 炉損傷時刻に異論
毎日新聞 7月13日(金)15時1分配信
東京電力福島第1原発事故をめぐる政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)が23日公表する予定の最終報告書で、東電が公表している事故の進展の解析結果を「信頼に足るものではない」と結論付けていることが関係者への取材で分かった。政府事故調が事故後の炉の状態を実測データに基づいて再現したところ、深刻化する過程が東電の解析結果と食い違っていたという。
【国会事故調】原発事故「明らかに人災」…報告書公表
事故調の指摘は、東電による事故の経過説明の信頼性を改めて問い直すもので、東電は再解析の実施を迫られそうだ。
東電は昨年5月と11月の2回、同原発1~3号機の原子炉の事故の経過をコンピューターで解析し公表。経済産業省原子力安全・保安院も同6月、原子力安全基盤機構の解析結果を公表している。東電の11月の解析によると、1号機では昨年3月11日の津波襲来から約2時間半後の午後6時10分ごろ炉心が露出し始め、溶けた燃料が圧力容器を破損させたのは12日午前1時50分ごろ--となっている。
政府事故調は、東電や国による解析結果を検証するため、1~3号機について▽原子炉の温度▽炉内の圧力や水位▽格納容器内の放射性物質の濃度--などの実測データや作業員の証言などを基に、事故後の炉の状態を可能な範囲で再現した。
その結果、1号機の圧力容器破損時間は11日午後11時ごろとなり、東電の解析結果より2~3時間早かった。3号機でも同様のずれを確認。2号機はデータ不足などから比較ができなかった。
ずれの原因は、東電や国が解析の前提条件として使った原子炉への注水量を多めに見積もったため、原子炉の冷却が実際より進んだ結果になった可能性がある。事故調は東電が解析の際、結果に大きく影響する前提条件の詰めが甘かったと指摘。関係者の一人は「(実測データが増えた)昨年11月の解析でも精査しなかったのは怠慢だ」と批判。最終報告書には「東電や国の解析結果は疑わしい」と批判する内容が盛り込まれるという。
◇解説 前提条件の精度が重要
事故を起こした原子炉の状態を推測するにあたって、東京電力や国はコンピューター解析を使った。これは前提条件の設定を間違うと、結果も事実からずれてくるという限界がある。政府事故調が最終報告書でこの点を指摘する方針を決めたのは、十分とは言えない東電などによる解析結果が、あたかも事実のように語られてしまう現状に警鐘を鳴らすためだ。
コンピューター解析は、専門家の間では「頭の体操のようなもの」と理解されており、誤差が避けられない。正確な解析をするには、前提条件をいかに実態に近く設定できるかが重要だ。東電などが前提条件をどこまで真剣に精査したかは不明だが、疑問の余地があれば結果も参考にできなくなる。
79年の米スリーマイル島原発事故の際、格納容器のふたを開けたら、専門家が想定していた以上に事態が深刻だったことが知られている。福島原発事故でも、事故の実態が明らかになっていくのに合わせ、東電や国が誠実に再検証を続ける努力が求められる。【奥山智己、岡田英】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120713-00000053-mai-soci
国会事故調報告の意義と不安 (竹中平蔵の眼)
2012/7/11 7:00 ニュースソース 日本経済新聞 電子版
国会に設置された原発事故調査委員会(黒川清委員長)が7月5日最終報告をまとめ、両院議長に提出した。
これまで日本では、何か重大な問題が起きた場合の「検証」が十分に行われてこなかったという反省がある。こうした中、憲政史上初めて国会が原発事故調査委員会を設置した。独立した専門家を集め、国会の国政調査権を背景に検証が行われたことの意味は大きい。検証に関してはすでに民間事故調査委員会の報告(日本再建イニシアティブによる)がなされている。
今回の報告をどのように読めばいいだろうか。報告書は膨大な分量であり、これを読みこなして今後の政策に生かしていくにはそれなりの時間を要することになろう。ただ現時点で、2つの重要なメッセージがあると思われる。
■問題の本質は「2011年3月11日以前」
第1のポイントは、今回の原発事故が人災であることを明確にした点だ。原発事故に関しては、地震・津波という天災、とりわけ「**年に一度の大災害」という表現でともすれば責任の所在が曖昧にされる傾向がある。しかし今回の報告書はそれを全面的に否定し、関係者の責任を求めた。
とりわけ、問題の本質は「2011年3月11日以前にある」ことが明記された点が注目される。つまり、事故が起きた後の対処というより、安全性に対する準備態勢と、その背後にある政府の電力行政と東京電力のガバナンス体制全体のなかに構造的欠陥があることを指摘している。
第2の点は、経済学で用いられる「規制の虜(とりこ)」という表現で、政府と電力会社の関係に関する問題を提起したことだ。規制の虜という言葉は、ノーベル経済学賞を受賞したG・スティグラーが用いたもので、情報の非対称性に根差した規制する側とされる側の問題点を示している。
具体的に、安全などの点で規制する政府の側に十分な情報や識見がなく、結果的に規制される電力会社の側に主導権を牛耳られる状況が出現したと考えられる。この問題に関する経産省・東電を中心とするもたれあいについては、一般に「原子力ムラ」という表現が用いられているが、その本質は「規制の虜」にある点を明確にしたとも言える。
他にも、今回事故の発火点となった全電源喪失に関し、決して津波だけによるものではなく、地震そのものによる部分があったことは否定できないなど、論争を呼ぶ指摘が満載だ。ただ全体としていえることは、民間事故調の報告と本質的な点で大きく異なる見解が示されてはおらず、おおむねの方向として規制する側とされる側の関係に構造的問題がある、との点で一致している。国会事故調の場合、国政調査権を背景にしているため、民間ではできなかった東電に対する調査が行われている点も大きい。
■今後の政策にどう反映するか
総じて大変意義ある報告が出されたことを歓迎したいが、これに関連する問題をあえて2点指摘しておきたい。第1は、この報告が今後の政策にどのように反映されるか、不安が残ることだ。国会の報告書だから、あくまで立法府・政治家のやる気次第ということになるが、法律ではこの後のプロセスが保障されていない。
第2は、一部新聞や雑誌のコメントでこの報告をシニカルに論評するものがみられることだ。「報告は検証委員会自らの行動を自画自賛している」「ヒアリングを公開でやったことは見世物的で適切でない」といった批判だ。察するにこうした声は、不備を指摘された官僚組織や電力関係者が抱く不満を代弁したものであろう。それだけ、まさに原子力ムラの影響力は依然として強いことを示唆しているのではないか。
今後求められるのは、「検証委員会報告がどう生かされたか」をしっかりと検証することである。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK09004_Z00C12A7000000/