アジング統計学とは?
統計とは、ある母集団(この場合は世界中の鰺)に対して、事象や行動、傾向などを分析するためのもの。母集団全てに対して、調査できるのが一番ベストなやり方なのだろうが、それは無理っていうものだ。
母集団に対して標本を取り出す。つまり、世界中の鰺の中から自分のホームグラウンドで釣り上げた鰺の事である。この釣った鰺にどのような意義があるかを客観的に評価する事が統計たる所以。
例えば、「魚がスレる」という状況がある。これはルアー釣りならではで、例えばデイゲームでメバルの姿は何十匹も確認できるのに、ルアーに興味をしめなさかったり、ボイルはあるのに反応が無かったりといった状況である。
だが、この「魚がスレる」という状況に、数値的な意味は乏しい。定性的(数量として表せない)なものである。が、そうでもない状況にも出くわすはずである。例えば、釣れた場所で釣れなくなり、釣れない場所で釣れるようになったりと。そういった、ルアー人ならではの状況があるはずである。特にアジングにおいては、山と谷の差が大きく。ポイントの開拓作業を怠れば、すぐに開拓済みの場所は枯渇し、結局は右往左往を余儀なくされるのだ。
このような状況にもある程度、タフになる必要がある。しかし、ただガムシャラにポイント開拓やリグ開発をしていたのでは、知的なもので得るものは乏しい。よく昔の釣り人は、釣り手帳なるものを持ってその日の状況や自分が何をしたかを記録していったものである。そういう人間こそ、本当にタフなのである。
統計学の検定とは?
アジングとは、所変わり統計学には検定というものがある。t検定、F検定、x^2検定など有名なものはピンからキリまでである。この統計学は、MS社のエクセルやオーペンオフィス等、またR等のツールも出回っているし、PHPやJAVA等を利用しても出来るものだ。
検定においては、正規分布という母集団が分かっている場合のものがあるが、アジング統計学においては母集団は未知なので使う事はできない。全世界のアジの集団など知る余地もない。
検定は、ごく限られた範囲での調査のため地域さという心配がある。実際に近くの漁港同士でも違う釣り方で釣果が分かれたりする。そのため2チャンなどでも同じ場所に住んでいない為、アドバイス自体が役に立たない事だって珍しくないのだ。
検定とは、この釣り上げた鰺を標本とし、分析者(釣り人)がある仮説を立てるのである。例えば、プロでもよく言っている「アジは光の周りに集まる」「アジは流れのある程度ある所に集まる」「海藻のあるところがいい」など様々な仮説を立てているが、それを証明するのは至難である。
アジング統計学の役割
そこで、予めそんな仮説なんて最初から無いよ。有り得ないからという「無に帰す」と読んで帰無仮説と、いやそうではないんだ、これはこういう事が関係しているから成立つんだという対立仮説を立てるわけである。これが非常に大事。たとえば下のような帰無仮説と対立仮説を立てたとしよう。
帰無仮説 H0(Null):水温15度を下回るとアジの魚食性は一定である
対立仮説 H1(Alter):水温15度を下回るとアジの魚食性は異なる
これを証明するには、 水温15度以上で釣ったアジの標本データA と水温15度未満で釣ったアジの標本データB が必要になる。そして、魚食性が変化する裏づけとしてエサ釣りと比較してみると尚面白い。
知っている方も多いと思うが、魚食性の増している状況ではアジのボイルが見られエサ釣りのエサに無反応になる。つまり、2本の竿があり、一つはエサ、もう一つはアジングというやり方で検定をするのである。
そして、それで得た標本データ同士を見比べ、計算し、統計的にアジの傾向を分析するのである。このアジング統計学は、春などのように「釣れるアジング」ではなく「釣るアジング」に意味を成すものなのだ。
問題となるものを決めよう
統計学は、「帰無仮説が正しい事を前提に検定を進めていく必要がある。」
しかし、仮説を立てた人間からしたら「対立仮説が正しい」と言いたいのが本音である。これは、帰無仮説が正しい事で検定を進めていき、結果、帰無仮説が正しく無かった(棄却された)。という手順で対立仮説の根拠を示すのである。
「仕方ない、対立仮説は正しいと言わざる終えない」的なものにするのである。非常に論理的な発想なのだ。
「始めから対立仮説が正しい」なんて事をうたっている統計学はどうかな?と思う(「対立仮説が正しい」と言いたいのは本音なんだけど、統計学ってのは結局は人に納得をさせるためのツール)。対立仮説が正しい的な感じで統計を進めてしまうと意志の偏り(先入観的なもの)が見られ、最初は全て「意味がない」ものから始める統計の検定の原則に反してしまう。また、そのような釣り具は結局は流行の釣り。
何度も言うけど、アジング統計学において重要なのは、世界中アジという母集団からどれだけの標本を得るのかに掛かっている。
アジング統計学はある程度、アジングに精通している必要は勿論のこと。尚且つ新しい世界に展望を見出したい人向き。それには統計学もある程度は覚える必要がある。つまり、アジングにドップリと漬かっている人間向きの学問である。
問題提示
アジングは比較的新しすぎる釣りである。そのため、問題提示ポイントは、無数に存在する。例えば、場所・リグ・魚数・サイズの関係である。場所を変えても同じ釣りをしても結果がなかったのに、リグを変えたりすると途端に入れ食いになったりした経験もある。果たしてリグと場所にどのような関係があるのか?
もし、これを見ている人ならどんな仮説を立てるだろうか?
帰無仮説 H0:
対立仮説 H1:
自分で立てた仮説を証明するためにはどのような釣りをしたら良いか?有意義な標本を得るために試行錯誤するのである。つまりは、毎日の実釣にてが、証拠となるのだ。
下のような仮説をただ単純に立てたとする
H0 帰無仮説:アジングはリグによる釣果に差がない
H1 対立仮説:アジングはリグによる釣果に差がある
どれだけの標本が必要になるでしょうか?少しだけ書いてみましょうか。
日付 | 場所 | リグ名称 | シンカー | ジグヘッド | 全体キャスト数 | 上顎フッキング数 | キャッチ数 | バラシ数 |
2009/10/30 | A | Mキャロ | 7gN | 0.3g(月の鏃) | 32 | 10 | 12 | 3 |
2009/10/30 | A | アジキャロ | 2.2g | 0.3g(月の鏃) | 21 | 10 | 10 | 0 |
2009/10/30 | A | JH | - | 1.2g(月の鏃) | 21 | 8 | 9 | 3 |
日付が違っても結果は変わらないか?場所が変わっても結果は変わらないか?仕掛けの重さを変えても結果は変わらないか?ただ無責任に仮説を立てたとしても、用意しなければいけない標本数は、それ相当なものである事が分かるのではないでしょうか?
仮説を立てるのは大事です。しかし、それを裏づけするための標本を得るにはスピードや技術、洞察力、考察力、創造力も必要になるのです。
冬はアジが釣れない
という定説がある。これはアジ釣りがウキ釣りに始まりウキ釣りに終ってきたからに他ならない。水温と深い関係があるからだろうが、メバリングの外道として釣れるようになったアジだが、春のアフタースポーン期はメバルと共通カテゴリーだから当然としても。意外に極寒期でも、ルアー釣りで釣果を上げてきた経験が幾度もある。
アジングは突き詰めた先、水温低下は喜ばしい事ではないだろうか?随分前に、ルアー釣りを始めた最中、身を切る寒さの中でメタルジグを水面直下の早巻きをしたところ、なんと極寒の冬にアジが釣れたのである。その後、ワームに転じても寒い冬こそルアー釣りのアジは大きな結果を残してきた経験がある。
水温低下することで、食性変化を起こす魚は何も「アジ」だけではない。代表的な魚がメジナ等だろう。夏ではサビキ釣りで掛かるのだが、冬になると一転する。なんと海藻やコケなどの一種を食すようになるのである。
レオン先生の「土佐カブラ」が良い例だろう。ワームで釣果が出ずに、土佐カブラに変更したとたんに釣れるようになるというのも一つの根拠なわけである。
根拠ある釣り、勇気ある釣りをすることでタフなものが出来上がる。変化なき釣りは釣りではない。
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