トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

「覇権」で読み解けば世界史がわかる その三

2022-10-24 21:41:27 | 読書/ノンフィクション
その一、その二の続き“ご都合主義”むき出しのキリスト教徒と対照的に、信仰には極めて敬虔で真摯なのがムスリム。もちろんムスリムの中にも戒律破りはいるし、世俗的な信者もいる。それでもコーランの教義は絶対であり、棄教は今でも許されない。 イスラム圏は現代でも、コーランの教えが政治・経済・法律・軍事・文化・学問の隅々まで浸透した社会であり、近代化の際、「キリスト教的価値観の中から生 . . . 本文を読む

図解 いちばんやさしい地政学の本 その二

2022-09-24 21:30:15 | 読書/ノンフィクション
その一の続き 私も含め、総じて女性は軍事面に弱い。実はシーレーンとはいったい何を意味するのか知ったのは、ネットを通じてだった。 それ以前にはシーレーンの用語だけは知っていたが、具体的なイメージがなく、標識もない海にシーレーンとは何ぞや……と思っていたほど。 女性とは対照的に男性は軍事に関心を持つタイプが多く、私自身、男性ブロガーさんからシーレーンについて教えて頂き、その . . . 本文を読む

図解 いちばんやさしい地政学の本 その一

2022-09-23 21:30:15 | 読書/ノンフィクション
『図解 いちばんやさしい地政学の本』(沢辺有司 著、(彩図社文庫)を先日読了した。私が本書を知ったのは河北新報の第一面に広告が載っていたためだった。いかに広告宣伝にせよ、かなり売れているというコピー付で。 何度も書いているように私は軍事に疎い。地政学という名称だけは知っていたが、具体的な学術書は未だに読んだことがない。“いちばんやさしい”と銘打っており、この機会に地政学関連 . . . 本文を読む

日本のイスラム研究業界の異常性 その二

2022-09-10 22:00:16 | 読書/ノンフィクション
その一の続き 米同時多発テロ事件当時、イスラム研究業界を牽引していたのは「イスラーム復興論」を自論とする京都大学大学院教授(当時)小杉秦氏だったという。「イスラーム復興論」とは、信者がイスラームに回帰し、日常生活の中でイスラーム的象徴や行為が以前より顕在化し、信者の生き方の様々な側面により大きな影響を及ぼすようになる現象のこととされる。「イスラーム復興論」では、「イスラーム民主主義やイスラーム銀行 . . . 本文を読む

日本のイスラム研究業界の異常性 その一

2022-09-09 21:40:18 | 読書/ノンフィクション
 学界と言えば、一般人には真摯な学術研究者たちの組織というイメージがある。しかし他の業界と同じく、日本のイスラム研究業界にも権力闘争やパワハラが蔓延っており、反主流派は肩身の狭い思いをしているようだ。 そんな反主流派のひとり飯山陽氏は、著書『イスラム教再考』(扶桑社新書)第8章冒頭の「日本のイスラム研究業界の不問律」という見出しで、こう述べている。 「日本のイスラム研究業界には、イスラム研究者は . . . 本文を読む

「白」への固執

2022-07-14 21:10:09 | 読書/ノンフィクション
『中野京子と読み解く運命の絵』(文藝春秋)を先日読了した。中野氏の肩書にはドイツ文学者とあるが、作家だけあり彼女の美術エッセイは実に面白い。本書で最も面白かったのは「「白」への固執」、アルマ=タデマの『フェイディアスとパルテノン神殿のフリーズ』への解説だった。 本書でアルマ=タデマという19世紀のオランダ人画家を初めて知ったが、後に彼はイギリスに帰化したという。トップ画像は「ローレンス・アルマ=タ . . . 本文を読む

もうすぐいなくなります 絶滅の生物学 その二

2022-05-06 22:10:15 | 読書/ノンフィクション
その一の続き ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの祖先とは、会話は出来なかったと思われている。しかし、前者のDNAは現生人類にも数パーセント入っている。つまり、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスの祖先と性交渉をしていたのだ。言葉は通じずとも、性行為は出来るから。  最終章に載った著者自身のエピソードは面白い。2018年の春まで著者は早稲田大学の国際教養部という外国人学生が多い学部で教えていて . . . 本文を読む

もうすぐいなくなります 絶滅の生物学 その一

2022-05-05 21:00:08 | 読書/ノンフィクション
『もうすぐいなくなります 絶滅の生物学』(池田清彦 著、新潮文庫)を読了した。3年前に見た『わけあって絶滅しました。』(ダイヤモンド社)は図鑑だったこともあって楽しく読めたが、本書は筆者が生物学者ということもあり、ややマニアックな印象。以下は新潮社HPでの紹介。 ―生命誕生からおよそ38億年。地球上ではおびただしい数の生物種が出現と絶滅を繰り返してきた。現在でも、例えばトキやニホンオオカミはとう . . . 本文を読む

スマホ脳 その二

2021-12-20 22:15:07 | 読書/ノンフィクション
その一の続き 自己評価が低く自信がない人は、SNSのせいで精神状態が悪くなるリスクを抱えているそうだ。自分と他人を比較しがちなので。特にSNSをよく使う子のほうが満足度が低いとか。 ただ、その傾向は女子にだけ見られ、基本的に女子のほうがSNSを利用している。研究者たちはその原因をこう推測する。「SNSというのは常に繋がっていなければならないものだ……彼女たちは常に&ld . . . 本文を読む

スマホ脳 その一

2021-12-19 22:15:05 | 読書/ノンフィクション
 世界保健機関では65歳以上の人を高齢者と定義しているそうだが、今や高齢者でもスマホを使いこなすのが当たり前になっている。今の時代にスマホを持たない人は殆ど超マイノリティなのだ。実は私もその1人だが、先日ベストセラー『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)を読み、スマホを持たなくて良かったと溜飲が下がる思いになった。以下は表紙裏の紹介。 ―平均で一日四時間、若者の二割は七時間も使うスマホ . . . 本文を読む