
昨年末、仙台の藤崎デパートで開催された「松本零士 秘蔵コレクション展」を見た。2014年12月22日付けの仙台経済新聞電子版でも特別展が取り上げられており、以下の青字はここからの一部引用。
―「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999(スリーナイン)」「宇宙海賊キャプテン ハーロック」などを手掛けるSF漫画家・松本零士さん。同展では、松本さんの生い立ちから苦節の時代、アニメブームの立役者となった現在までの足取りなどを紹介する。
会場では、「メーテル」「キャプテンハーロック」「エメラルダス」「1000年女王」「男おいどん」「セクサロイド」など代表的な作品の直筆原画をはじめ、初期の漫画原稿、水彩画や墨彩画、実際にアニメーション撮影に使用されたセル画など約200点を展示。直筆原画のうち約20点は初公開となる…
ニュースサイトには「40~50代を中心に幅広い層が来場している」とあったが、私が行った時は40~50代が殆どで、意外だったのはこの年代の女性が多かったこと。私自身もこの年代に含まれ、かつて松本漫画に夢中になった少女たちも今や中高年なのだ。中には夫婦らしき中年のカップルもいて、女性のほうが「ヤマト!やっぱりいいね~~」と言っていた。
トップ画像はこの展示会で来場者全員に配られたポストカード。鉄郎の被った兜が仙台らしい。入場料は一般700円だったが、思ったよりも充実した展示となっていた。
松本の代表作に「戦場まんがシリーズ」もあり、「ザ・コクピット」とも呼ばれる作品集の原画もあったのは嬉しかった。「ザ・コクピット」で私は第二次世界大戦時の各国の戦闘機名を初めて知ったし、軍事オンチぶりは未だに変わりないが、「ザ・コクピット」はとても参考になった。「ザ・コクピット」で描かれた戦闘機は実に美しかったし、タイトルの付け方がよい。
もちろん「ザ・コクピット」すべて気に入っている訳ではないし、中には疑問を感じた作品もある。そのひとつが『成層圏気流』。この作品がオリジナル・ビデオ・アニメーション化されていたことを、展示会で初めて知った。会場ではアニメ化された『音速雷撃隊』『鉄の竜騎兵』とともに『成層圏気流』のDVDが上映されていた。
『成層圏気流』の主人公はドイツ空軍将校でパイロットのラインダース。彼は原子爆弾輸送機の護衛任務を命じられ、それに苦悩するストーリー。ラインダースは元は科学者で、輸送機には恩師の教授とその助手でもある恩師の娘が搭乗することになっていた。ラインダースと娘はかつて恋仲だったが、結ばれずじまいだった。だが、双方ともに想いを抱き続けていた。
国の命令といえ、原爆を造ってしまったことを恩師父娘は苦しんでおり、娘はラインダースにこう言う。「これを使った者は、後世鬼と呼ばれるでしょう…」
ラインダースは輸送機の護衛任務を放棄、目の前で恩師と愛する女が敵機に攻撃され死に逝く。女の最後の言葉は「ありがとう、ラインダース」。ラインダースの行為は戦時では卑怯者というより裏切者だが、彼は己の行為は後悔せず、ラストでの独白は「(自分は)悪魔に魂を売らなかった男」。
私がこの作品を見たのは十代後半だったが、このオチにはかなり違和感を覚えた。ドイツ軍人も考え方は様々だろうが、原爆アレルギーに憑かれた現代日本人の感覚で描いているとしか思えなかった。原爆の効果は実際に使ってみないと不明だし、科学者ならば成果を試さずにはいられないのではないか?
二十歳前後だったか、『ロンメル将軍』(デズモンド・ヤング著、ハヤカワ文庫 NF30)を読んだことがある。内容の大半は忘れてしまったが、原爆についての考えを述べた箇所は憶えている。ドイツに原爆製造計画があるという噂を聞いたロンメルは、「ならば、それを使うべきである。はじめに造った者がはじめに使うのだから」、と言っていたのだ。
この箇所を見た時、あのロンメルが…といささかショックだったが、これが戦時の現実なのだ。ロンメルの予測通りの結果になったし、最初に造ったのがドイツならば、間違いなく連合国の何処かの町に落としたはず。ラインダースの行為はヒューマニズムそのものだが、あの時代のドイツ人らしくない。戦時中は反ナチを鮮明にしたドイツ人女優マレーネ・ディートリッヒは、1960年ドイツで公演を行ったが、彼女は生国で「裏切者」の罵声を浴びせられたという。
何だかんだ言っても、やはり松本漫画は虜になる何かがある。昔夢中になった少女漫画を読み返しても、今では甘さと絵空事を感じてしまうが、松本は違う。「松本か、何もかも懐かしい…」と感じた来場者は、私も含め多かっただろう。
◆関連記事:「銀河鉄道999」
「ザ・コクピット」
「キャプテンハーロック」
永遠の大人の女性という感じがします。
確かに同性から見ても、メーテルは見事な女性です。若い頃はエメラルダスの方が好きでしたが、齢を取ると孤高の女海賊よりメーテルに惹かれます。