
昨年末のレディースデーで、この目玉の正月映画を見てきた。「スペクター」といえば、往年の007シリーズファンにとって懐かしい。世界規模で暗躍する犯罪組織で、ボンドの宿敵として登場していたのだから。その組織名が最新作では作品のタイトルとなっており、往年のファンはもちろん、若い方にも興味津々ではないのか?
今回の始めの舞台は、「死者の日」で賑わうメキシコ。前作『スカイフォール』はイスタンブルでのカーチェイスだったが、最新作の方がよかった。モスクを除けば西欧の大都市とあまり変わりないイスタンブルに対し、メキシコは実にエキゾチック。特に街中にドクロが繰り出す「死者の日」は見応えがあった。踊りと派手な装飾で「死者の日」を祝うとは、日本人の感性とは正反対だ。
メキシコの次は一旦ロンドンのMI6本部に移るが、MI5新責任者のCが「時代遅れ」として00部門を廃止をMに要求、Mは対応に苦悩していた。さらにCは、MI6をMI5に吸収させることも画策している。ジュディ・デンチ扮する前任の女性Mに比べ、レイフ・ファインズが演じるMはいかにも官僚的だが、Cはもっと杓子定規型官僚の印象。実はCも“スペクター”の息のかかった者であるのが、後半明らかになる。
ロンドンの後はイタリア、オーストリア、モロッコと世界中が舞台になるのも007シリーズのお約束。今回のボンドガールはモニカ・ベルッチとフランスの若手女優レア・セドゥ。前者の登場シーンは至って短いが、『マレーナ』の頃よりは老けても、やはり存在感があった。
対照的にレア・セドゥは印象の薄い金髪美人にしか感じられない。こちらの方がメインのボンドガールなのだが、博士号を持つインテリ女性というのが今風だ。
“スペクター”のボスが、ボンドの血の繋がらない兄だったというのは面白い。孤児になったボンドを引き取った養父の実の息子で、ボンドとは兄弟同然に育ったのだ。ボンドに愛情を注ぐことを嫉妬して実の父を雪崩を起こして殺害、死を偽装して“兄”は行方を眩ましていた。彼が過去における出来事すべてに関わっていたことが明かされ、ボンドにこう云う。
「やあ、ジェームズ。私なんだよ。君を苦しめ続けて来たのは――」
ラストで必ず悪玉が敗れるのが007シリーズ。“兄”はボンドに銃を突き付けられ、殺せと迫るが、結局ボンドは撃たない。これまでのボンドなら確実に敵を始末したはずだが、今回は違った。00部門を非効率として廃止を要求するCに対し、Mは00部門の人間には相手を殺さない選択もある、機械にそれは判断できないというシーンは興味深い。官僚的なMもCの横暴に怒り、「お前はクソだ」と面罵したのは笑えた。
前作からQとマネーペニーが復活したのは、ファンにとって嬉しい限り。これまでの秘書マネーペニーはタイピストが関の山で、ボンドがどれほど女漁りをしても彼一筋の女性だった。だが、現代ではそんな古風な秘書像は受けず、武器も扱える有能な女スパイというキャラになった。今回はマネーペニーには彼氏らしき男もいたことが分る。
そして前作ではボンドに、「まだニキビ痕のある、生白い若造」と言われたQだが、映画全般に登場していたのは楽しい。黒縁メガネでPCにめっぽう強いオタクという設定はそのままだが、以前よりもボンドはQの優秀さを認めているのだ。
ボンドから秘密の協力を迫られ、直属の上司Mとの板挟みに悩み、「まだ家のローンが残っている、2匹の猫もいる…」とぼやくQ。宮仕えの苦労がしのばれ、苦笑された人もいただろう。尤もアストンマーチンをお釈迦にしたボンドに、「たった5億円ですから…」と言っていたのは、一般リーマンとの感覚が違いすぎて言葉もない。さすが天下のMI6、5億円などはした金なのだ。
Qについて検索したら、「新Qが世界中の腐女子のターゲットになった模様」というサイトがヒットした。腐女子に限らずおばさんが見てもカワイイ。新Qのベン・ウィショーは『パフューム ある人殺しの物語』で注目を集め、若いのに演技力があると感心したが、まさかオタク役までこなすとは想像もしなかった。何とwikiには、ベン・ウィショーが2012年に同性婚をしていたことが載っていた!
オープニングで流れた主題歌「Writing's on the Wall」には、「For you I have to risk it all」という歌詞がある。あなたのために私は全ての危険を冒さなければならない、というものだが、オープニングでコテコテのラブソングが使われるのは暫くなかったような気がする。
これまで007ファンには男性が多いと思っていたが、レディースデーということもあるのか、映画館には女性客が多かった。これだけ息の長いシリーズ、女性にもファンが少なくないようだ。
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私も昨年暮れ、この映画を見ました。ダニエル・クレイグは、歴代ボンドの中で一番好きです。これまでのボンドって、どちらかというと色男系が多かったですが、ダニエル演じるボンドは(演出や監督の考え方もありますが)、もちろん女性を虜にする魅力もありますが、一人静かに思索に耽る雰囲気が漂っています。
そして…ボンドガールも変わってきましたね。以前はモンロー系のブロンド肉体派系美女が主流でしたが、今回はドクター。時代と共にこの作品も変わっていく。ダニエルにはもうしばらくボンドを演じていただきたいです。
お正月は「スターウォーズ」を見てしまいました。mugiさまはご覧になられましたか?
新年おめでとうございます!今年も何卒宜しくお願い致します。
りら様も007シリーズをご覧になられていたとは、いささか意外でした。私はシリーズの殆どを見ていますが、初代ボンド、ショーン・コネリーは色男系よりもタフガイでしたね。原作者イアン・フレミングははじめコネリーを「厚紙細工のでくの坊」と罵っていましたが、人気が出るにつれ、褒めるようになったそうです。
ダニエル・クレイグの一作を見た時、それまでと違って金髪なので少し戸惑いましたが、一人静かに思索に耽る雰囲気と共に闘志の激しさが感じられます。歴代ボンドの中で最も原作にちかいのが、ダニエル・クレイグだと思います(※学生時代、ファンの友人に影響されて原作も読みました。原作では黒髪ですが)。
仰る通り、ボンドガールも時代によって変わってきました。『ムーンレイカー』では女性の博士が登場し、ボンドが驚いているシーンがありましたが、当時は理工系の女性博士は珍しかったのです。007はこの面でも時代を先取りしていたのです。
ちみなに「スターウォーズ」はあまり好みではないので、見ておりません。