日本の参謀本部について、その成り立ちから詳しく論じられている。そのため、参考に取り入れられた戦争学も逐一紹介せられ、勉強になる読書だった。
例えばリデル・ハート『戦略論』に謂う戦争の基本原則八か条、ゴルツ『国民皆平論』、メッケルが日本陸軍に遺したものなど。どのように、何を吸収していき、その過程での変質についても言及され、興味も尽きなかった。
とはいえ、溜め息の絶えない読書でもあった。日本陸軍の要求に適応したメッケルは、即効性ある実用主義を追求する方針に従い、「幅のひろい教養と基礎的な学問研究の重要性が軍人に不可欠の資質であることを力説しなかった」。結果、メッケルが重視した戦史研究は日本陸軍に根付かず、戦術教育が主流となったという。
(これは現在の防衛省自衛隊にも当てはまることではないだろうか。)
著者は本書の目的をこう記している。
【戦争の政治目的をふまえて戦略を策定するという点において、日露戦争以後の日本の参謀本部は、理論面でも実践面でも決定的に無能であった。どうしてそうなったのか。参謀本部の歴史をたどることによって、その原因をつきとめてみよう】
とはいえ、そもそもの初めから、参謀本部は躓いていたのだろう。歴史を軽んじ、大局に立った戦略を追求できず・・・
私は今更ながら、戦史を学ぶ意義を再認識している。
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