成田空港は誰でも知っていようが、三里塚という地名は、若い人に馴染みのないものかもしれない。
実際、私も成田空港のある場所が三里塚という地名であることは最近まで知らなかった。
三里塚では、地元農民が空港建設に反対、成田市議会も反対の決議をしたものの、議員ひとりあたり25万円の賄賂で反対決議は覆され、国は強制収用を行った。
反対農民には中核派、第四インター、ブント、その他諸党派、ノンセクトの学生らが加勢し、いまに続く長い闘争が戦われている。
本書は、その闘いの最中、機動隊員を死亡させたとして不当逮捕された55人の、冤罪であることを証明しようとするものである。
驚かされるのは検察官・刑事らによる精神的拷問と、誘導され強制された自白である。あらかじめ事件のストーリーが検察側により筋書きされ、それを認めさせるという方法で調書は作られた。
物的証拠はない。彼等の冤罪であることはわかる。しかし本書に弱味があるとするなら、死亡警官はどのようにして殺されたのかという省察がないことだろうか。圧倒的不利な状況で判決を受ける立場にある彼等に、それは酷な追求かもしれないが。
しかし権力の闇は深い。この国に、いかに民主主義というものが欠如しているか。あらためてそれを示した好著ではある。
最新の画像もっと見る
最近の「ノンフィクション」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事