日本は“スパイ天国”だといわれる。いわれているのは知っていても、何故だかそんなに危機意識が持てない。本書は日本のそういい雰囲気に警鐘を鳴らすものである。
〈インテリジェンスは断片的な情報の収集だけではなく、時間軸を意識した長期的なインテリジェンスの蓄積と分析が重要なのである。〉
〈偏見の源は無知にある、とよくいわれる。克服されるべき第二の問題は日本における「インテリジェンス・リテラシー」の低さということにあると思われる。〉
と、著者のスタンスや展望には興味を持った。そもそも最近の日本人は知性・知識欲が貧困なのではないか(就中、実益に結びつかない知識に関して)、という私の疑問ともリンクする問題意識が語られていた。
しかし、引用される文献が産経新聞だったり週刊誌だったりと、およそ学者の書くべき体裁ではなく、その点にガッカリさせられた。新聞としては主として産経新聞ばかり引用するくらいだから、著者の立ち位置にも少なからず偏りがあって、それも気になった。
おそらく以上のような印象のせいで、せっかくの提言も危機アジりに見えてしまうし、マッチポンプの一種にも感じられるのだ。
産経でも引用しているうちはマシで、ろくにソースも出さずに、又聞きのようなことを確信的に書く。したり顔で週刊誌の記事を論陣に組み込む。真面目に読んでほしいなら、そういうことは避けるべきだろう。
センセーショナルな題名に惹かれるような読者層のレベルに合わせてやったつもりなのだろうか……。
