よい子の読書感想文 

読書感想文325

『天皇ごっこ』(見沢知廉 新潮文庫)

 五年ぶり三度目の読書である。
 上手い小説ではない。著者の感情が反映され過ぎて、その主張を読むような錯覚を覚えることもあった。
 しかし名作だ。天皇という共同幻想を、大胆な、かつ計算高い構成で重奏的に描く。右と左が、戦前と戦後が、あの頃と現在が、あちらとこちらが、少々荒削りながらも巧みにリンクしていく。まるで歴史の走馬灯を見るように。
 非日常のフィルターを通してようやく捉えられそうになることがら。著者にしか書けないことはたくさんあったろう。もっと生きて欲しかったと思う。
 400ページの大著ながら、2日間通った病院の待合室で読めてしまった。集中力を途切らせないのである。


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