『現代中国の歴史3 社会主義への道』(岩村三千夫 徳間書店)
全3巻のうちの3巻目である。1966年の発行であるから、中国が初めて核実験した年であるとともに、悪名高いプロレタリア文化大革命が開始された年である。
おそらく、毛沢東の評価が日本や欧米である程度保たれていた最後の時代に発行されたものといっていいだろう。
著者がそもそも親中派論客であり、時代背景も後押しして、本書は常に中国に対し肯定的だ。その社会主義に希望を抱いていて、皮肉ではなく爽やかである。キューバ革命も成って、中国も力をつけてきて、当時は革命が現実的な希望として、選択肢として眼前にあったのだと行間から響いてくる。
と、全般の印象に終始しそうなのには、理由がある。実をいうと3巻は思い出したように読むというのを繰り返してしまい、いっきに通読したのでなかった。そのため、いちいちの流れを記憶にとどめぬ状態で、いま感想文を書こうとしているのだ。
というわけでパラパラと付箋を貼ったところを読み返す。中国の台湾に対する執念、反米意識の根幹にあるものを垣間見ることができる。これは中国寄りの視座からでないとわからないことだろう。
【長いあいだアメリカの一般の報道期間はつねに国民党や蒋介石を美化した報道をおこなってきた。(?国民党支配の崩壊)】
【アメリカ政府をしてこの膨大な援蒋政策にふみきらせたものは、第二次世界大戦で急速に膨張したアメリカ独占資本の中国への燃えるような野望であった。(?国民党支配の崩壊)】
また以下は現在の人民解放軍を見る上でも参考になる。
【毛沢東は「人民解放軍はまた工作隊でもある」ということを改めて力説している。(中略)人民解放軍は、もともと戦闘だけを任務とするものではなく、人民を助け、人民をたちあがらせて人民の政権を樹立することを任務としてきた(?中華人民共和国の誕生)】
これは解放戦争たけなわの頃の話だが、昔話ではないなと合点する。現在も人民解放軍は共産党の三戦を担っている。弾は飛ばず血は流れずとも、彼らは戦争によらない軍事作戦によって、着々と中国(共産党)の地歩を固めてきたのだ。
かつて毛沢東は戦争をなくすために帝国主義を打倒しなければならないと言い、革命の輸出、すなわち解放戦争の飛び火を推し進めようとした。この影響下にあっただろう『中国平和擁護委員会主席』の演説はこう述べている。
【われわれのアッピールは、戦争屋どもに平和を請願することではなく、帝国主義者に迫って侵略を停止させることである(?中華人民共和国の誕生)】
反帝国主義武装闘争によって育まれた中国共産党の出自を知り、それが今なお命脈を保っていることを理解できた。
様々なことが判明し、歴史の篩にかけられ、価値を失っていく本の中でも、それを理解した上で使えば、読みようによっては貴重な示唆が得られるものだなと実感した次第である。
最後に著者はこう結んでいる。50年前の指摘とは思えない今日的な一文に、驚きを隠せない。
【中国の進歩は偉大であるが、その前途にはまだ多くの困難が横たわっている。中国の指導者と民衆は、このきびしい現実から目をそらさずに、ひとつひとつ困難を克服し、革命の情熱をいっそう燃やし続けている。このかれらのあまりにもひたむきな姿勢が、外部の世界から何か「異様」のように思われるとしても、それは疑いもなく現代中国の歴史が生んだものである。現代の中国の歴史は苦難の連続であり、いまもその受難の時期はおわっていない。しかし、革命をへてきた人民と国家は、前途の確信にみちみちながら、この偉大な試練をのりきろうとしている。】
全3巻のうちの3巻目である。1966年の発行であるから、中国が初めて核実験した年であるとともに、悪名高いプロレタリア文化大革命が開始された年である。
おそらく、毛沢東の評価が日本や欧米である程度保たれていた最後の時代に発行されたものといっていいだろう。
著者がそもそも親中派論客であり、時代背景も後押しして、本書は常に中国に対し肯定的だ。その社会主義に希望を抱いていて、皮肉ではなく爽やかである。キューバ革命も成って、中国も力をつけてきて、当時は革命が現実的な希望として、選択肢として眼前にあったのだと行間から響いてくる。
と、全般の印象に終始しそうなのには、理由がある。実をいうと3巻は思い出したように読むというのを繰り返してしまい、いっきに通読したのでなかった。そのため、いちいちの流れを記憶にとどめぬ状態で、いま感想文を書こうとしているのだ。
というわけでパラパラと付箋を貼ったところを読み返す。中国の台湾に対する執念、反米意識の根幹にあるものを垣間見ることができる。これは中国寄りの視座からでないとわからないことだろう。
【長いあいだアメリカの一般の報道期間はつねに国民党や蒋介石を美化した報道をおこなってきた。(?国民党支配の崩壊)】
【アメリカ政府をしてこの膨大な援蒋政策にふみきらせたものは、第二次世界大戦で急速に膨張したアメリカ独占資本の中国への燃えるような野望であった。(?国民党支配の崩壊)】
また以下は現在の人民解放軍を見る上でも参考になる。
【毛沢東は「人民解放軍はまた工作隊でもある」ということを改めて力説している。(中略)人民解放軍は、もともと戦闘だけを任務とするものではなく、人民を助け、人民をたちあがらせて人民の政権を樹立することを任務としてきた(?中華人民共和国の誕生)】
これは解放戦争たけなわの頃の話だが、昔話ではないなと合点する。現在も人民解放軍は共産党の三戦を担っている。弾は飛ばず血は流れずとも、彼らは戦争によらない軍事作戦によって、着々と中国(共産党)の地歩を固めてきたのだ。
かつて毛沢東は戦争をなくすために帝国主義を打倒しなければならないと言い、革命の輸出、すなわち解放戦争の飛び火を推し進めようとした。この影響下にあっただろう『中国平和擁護委員会主席』の演説はこう述べている。
【われわれのアッピールは、戦争屋どもに平和を請願することではなく、帝国主義者に迫って侵略を停止させることである(?中華人民共和国の誕生)】
反帝国主義武装闘争によって育まれた中国共産党の出自を知り、それが今なお命脈を保っていることを理解できた。
様々なことが判明し、歴史の篩にかけられ、価値を失っていく本の中でも、それを理解した上で使えば、読みようによっては貴重な示唆が得られるものだなと実感した次第である。
最後に著者はこう結んでいる。50年前の指摘とは思えない今日的な一文に、驚きを隠せない。
【中国の進歩は偉大であるが、その前途にはまだ多くの困難が横たわっている。中国の指導者と民衆は、このきびしい現実から目をそらさずに、ひとつひとつ困難を克服し、革命の情熱をいっそう燃やし続けている。このかれらのあまりにもひたむきな姿勢が、外部の世界から何か「異様」のように思われるとしても、それは疑いもなく現代中国の歴史が生んだものである。現代の中国の歴史は苦難の連続であり、いまもその受難の時期はおわっていない。しかし、革命をへてきた人民と国家は、前途の確信にみちみちながら、この偉大な試練をのりきろうとしている。】