
「第2次大戦以後、最大の人道危機」と呼ばれるシリア内戦。概要をまとめた資料だけでは到底理解できない、複雑・重層的な要因の絡まり合った内戦である。
少しでも背景を知ろうと本書を手にした。約400ページの大著であるが、職場で、休憩時間を駆使して、なんとか読了できた。
しかし、頭の中は、益々混迷している。共感ストレスなのか、心も疲弊してしまった。
これほどの無駄死にが、いまの時代にも続いている。そして、虐殺を主導した側が、生き残って復権してしまった。
権威主義国家が度々引き起こす悲劇。著者の示唆は言外に響く。
『アサド政権中枢の人々が抱く恐怖心こそが、シリアのこの終わりのみえない悲劇の根源にあるのではないだろうか』
ロシアも、そうなのかもしれない。
ジハーディストが、次いでISILが加わり、更に複雑化する内戦。アメリカとロシアの代理戦争。サウジとイランの代理戦争。クルドが勢力を拡大すれば、トルコも武力介入する。他方で、カタール対サウジのような内ゲバも生起した。
味方同士と思いきや、そうではなく、敵同士だったはずが、攻撃を控え合う。守護大名、守護代、国人衆、一向衆らが群雄割拠した戦国時代のようである。
共感ストレスだけでなく、他の意味でも頭が痛くなってしまった。
しかし私たちは、目を逸らしてはいけない。忘れてはいけないのだ。各地で、受け止めきれない悲劇が起き続けているとはいえ。
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