数年ぶりの再読である。
またいつか読もうと思ったのを覚えており、自宅から持って来た。
兵隊としては低体力で要領も悪い学徒兵が、周囲に忖度せず、正論を持って、肝を据えて自分を押し通していこうとするさまが、なかなか痛快である。ノンフィクションではなく、ある程度の脚色はされているのだろうが、不条理な指導やいじめを行う上官・上級者も、呆れたり言い返せなかったりで、結果的に軍隊の抱える矛盾や欺瞞が透けて見えてしまう。
学徒出陣の兵士たちの手記は数多く手にしてきたが、こういう手のものは珍しい。悲劇や美談、あるいは軍国主義批判だけではない、地に足のついた、しかし兵隊としては脱線している学徒兵の視点は新鮮である。また、不条理・不合理に抑圧され、同調圧力に忖度しがちな、組織内で硬直している自分を、弛緩させつつ鼓舞してくれる。
楽しい読書ではないが、力づけられる読書ではあった。まあ、らくだ君にとって軍隊は不本意な、腰かけの居場所に過ぎなかったから、怖いものなしだったのであり、そのクソ度胸を真似するわけにはいかないのだが。
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