アニメーションが有名な作品。原作も読もうと幾度か手にとったが、関西弁がほとばしる特異な文体に、その都度躊躇してしまっていた。落語みたいなリズム感で、息つく間もない文体は、きっと劇画とのギャップを際立たせて、違和感を与えていたのだろう。そもそもこちらが原作なのだが。
他にも戦災を題材にした短編が収録されているが、そのいずれもが、『火垂るの墓』同様のテーマにこだわり抜いた形跡を見せる。戦地だけが戦場ではなかったと、私はふと思う。途中、幾度か読むのが苦痛にさえなった。最初は好きになれなかった落語じみた文体が、ある意味ドライで救いだった。普通の文体では描写しきれない現実を前に、著者が振り絞ったスタンスがこれだったのだろうか。
作り話ではない凄みがある。この文体は悲しむにも悲しめんなと当初は疑問だったが、そんな感傷をいざなうがために筆を起こしたのではなかったのだ。
文庫化されてないものも探してみたい。
