出先でふと立ち寄った古書店のワゴンセール品。3冊100円となると、宝探しのような面白さがある。本書はその中で見つけた“宝”の一つだ。
柳田国男といえば『遠野物語』くらいしか読んでいない。東北人の私としてはもったいないことだったなと、本書を読んで思った。
なにしろ私の故郷にゆかりある菅江真澄や男鹿半島の逸話が取り上げられている。面白かった。昔話の研究というのは、自分らのルーツや歴史に埋もれていく記憶たちを呼び覚まし、大変に興味深い。学術的にというより、壮大なロマンをさえ感じるのである。
本書は平易なエッセイ風のものを集めた内容だったし、推論の域を出ないものばかりである。しかし、詩人を志したという著者の文体は流麗で、読んで心地よかった。『桃太郎の誕生』とか『地名の研究』など、他にも読んでみたい著書がたくさんある。遠野物語の著者、なんていう捉え方で終わらせるのは、それこそ“宝”の持ち腐れ、入手できるものは読んでいきたい。
