ロシアのウクライナ侵略は、自分の無知を知る機会ともなった。
ロシアの指導者はどういうことを考える傾向にあるのか? また、それに影響を与える歴史や地政学は? 私の読書の食指は、このところ、こうした疑問に立脚している。
本書もそうした視点から手にした。『西ドイツ連邦情報局』の元長官ゲーレン。ソ連に関しては専門家中の専門家であろうし、示唆に富んだ言及が見られるだろうと期待した。
とはいっても、諜報に関しては、当たり障りない範囲のエピソードしか書かれておらず、東側や左翼系メディアによる反ゲーレン機関キャンペーンに対する反論に少なくない頁が割かれており、9割方は肩透かしだった。
無論、それは想定のうちであり、あとの1割から、学ぶところは大きかった。行間に滲んだものも含め、教訓となる回顧録だったといえる。
さて、ウクライナ侵略に関して、何らかの示唆はあったか。・・・根源的なところでの気づきは得られた。ゲーレンは、ヒトラーの下でも情報のプロとして軍務に就いている。したがって敗因やソ連の戦い方、メンタルにも精通している。
ヒトラーがロシア人に与えた影響は、いまも無視できないし、イスラエルがそれを利用できる以上に、ロシアは国のアイデンティティーに大祖国戦争の勝利を利用している。
あの侵略は不可解な行為ではない。タタール、ナポレオン、ヒトラー、NATO・・・軛(くびき)が時代を超えて続いている、とロシアは認識しているのだろう。
そのことを改めて教えられる読書となった。共産主義を執拗に恐れるゲーレンの言葉は、その鏡写しといえなくもない。
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