よい子の読書感想文 

読書感想文646

『中国と朝鮮戦争』(平松茂雄 勁草書房)

 朝鮮戦争を終結させる・・・昨今、俄に話題に上がった議題である。
 あらためて、休戦中に過ぎないこと、そして朝鮮戦争における中国の深い関わりと今に至る利害関係を再認識させられた。
 本書は積ん読したままのものだったが、旬なタイミングなので手にした。過去のことでなく、継続している問題として興味を持って読めた。
 教科書的には、中国は義勇軍を派遣したことになっており、国家として本気で闘ったのではないような印象をすら持っていた。
 そんな不勉強さによる無知が恥ずかしくなる読書となった。中国が、米朝だけで話を進めることに難色を示し、自らのプレゼンスを割り込ませたいのも、この読書で納得できた。また、いやいやながらも、北朝鮮を助けてきたことの要因も、少しは理解できた。
 意外な発見も多かった。人民解放軍の司令員が参戦に反対する中、毛沢東の熱心な指導で参戦に踏み切ったこと。
 既に1938年『持久戦論』において「朝鮮などで革命が起こり、そのために中国の援助が必要だとすれば、別個の戦争になる」と見通していたこと。
 そして、長年の北朝鮮擁護、アメリカに対するライバル視が、参戦を公式に表明したときの人民日報・社説等に述べられている。現代史を概観する上でも興味深い。
《帝国主義は本質的に侵略的であり、その侵略的野心には限界がないこと、第二次世界大戦後における米帝国主義の侵略行動は、かって日本帝国主義が日清戦争を起こして朝鮮と台湾を殖民地とし、ついで中国の東北から華北、華中へと侵略を進め、同時に東南アジアを支配しようとした侵略行動の繰り返しであり、したがって朝鮮半島における米国の行動は、決して北朝鮮政権の打倒に限定されるものではなく(中略)やがて東北から中国へ侵略の矛先を向けてくるのは必至である》
 また、本書は中国の参戦した政治目的について、こう言及する。
《究極的には中国の主導の下に朝鮮半島を統一すること》
 いま統一という選択肢は薄くなったろうが、“主導の下に”は、変わらず中国の方針であろう。
 退屈な本かもしれないが、時局柄、面白く読めた。

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