「東京オアシス」2011年/日本
監督:松本佳奈、中村佳代
脚本:白木朋子、松本佳奈、中村佳代
音楽:大貫妙子
出演:小林聡美、加瀬亮、黒木華、原田知世ほか
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あまり観ることのなかったジャンルだけど、
なぜだか、なんとなく観てみようかなと思った。
特定のジャンルなわけではなく、
それは自分だけが感じているジャンルで
いわゆる小林聡美や市川実和子、もたいまさこなどが出演している
やわらか・ゆるやか・静かな雰囲気、というイメージの作品。
「めがね」や「かもめ食堂」のような。
でも、そんな雰囲気だからこそ、
一つ一つの台詞がすっと入ってきて
言葉が丁寧で、気付かされて、心地よい映画だった。
見終わった後に映画のオフィシャルHPをのぞきに行くと、
キャッチコピーなる打ち出すコンセプトは、
「見つめてみよう。きっと誰かが見えてくる。」
とても納得できた。
なぜなら、この映画を観ながら、私は
毎日同じ時間の電車に乗っている数名の人たちを思い出していたから。
毎朝同じ駅のホームで見かける。
けれど話しかけたことは一度もない。
知らない人に話しかけるということが普通じゃないと思っていたから。
かと言って、話しかけようとも思ったことはない。
でも、映画の中の
「隣にいる人のことを、ちょっと知ってる人だと思ってもいいんだなあ」
という台詞を聞いて、なんかとてもあたたかいきもちになった。
この台詞は、小さな映画館で映画を観ていたおばあさん(もたいまさこ)が、
隣に座っていた人に「置いてけぼりにされた」と言う場面をきっかけに
映画館のスタッフ(原田知世)が言う言葉。
私もそう思いたいのかもしれないな。
毎朝顔を合わせるからなぜか親近感が湧いていて、
まるで知っている人のように感じていて、
「おはよう」なんてしゃべりかけてみたくなる時もある。
さらに、帰りの電車まで同じだった時なんて、
一人でとても嬉しくなったりもした。
相手は私の存在に全く気付いていないかもしれないけど。
「ちょっと知ってる人」だって、勝手に思っていいんだな。
そんな風に感じさせてくれた。
そしてもう一つ、心に残った台詞は、
「たぶんくらいでいいんじゃない。完ぺきじゃなくても。」
「たぶんくらい」っていいな。
「たぶん」の度合いを決めるのは自分だけど
すごく救われた気がした。
映画の一言。
「一人かも。でも一人じゃないかも。」