葉織る。

言葉の中にそれを紡ぎ織った人が見えても、それは虚像かもしれない。

多分、最初で最後の挑戦。

2017-12-25 12:31:47 | 雑感
 たまに近所のイオンに立ち寄ると、ついでにゲームセンター(アミューズメントスペースとか、そういう呼称はどうも面映ゆい)に足を向け、クレーンゲームのコーナーを覗く。
 プライズを取るのが目的ではない。
 フィギュアをただ眺めるのが好きなのだ。

 ゲームやアニメのキャラが、リアルとファンタジーの間で絶妙なバランスを取りながら立体化されているのは見事なものだ。
 かといって一々ゲットしていたら無駄遣いが過ぎるし、狭い我が家に置場所など無い。
 感覚的にはゲームセンターが自分の飾り棚みたいなものだ。

 ところが先日、例外的なフィギュアが出た。
 それが写真の「BLOOD OF SAIYANS」シリーズの孫悟空だ。
 スーパーサイヤ人が一番衝撃的だったのは、やはりこのナメック星での初変身時ではなかろうか。
 ちなみに世間的には、この「クリリンのことかーっ!」のシーンが一番人気なのだろうが、私は「だから(サイヤ人は)滅びた…」という台詞の方がグッとくる。

 スーパーサイヤ人の悟空が上半身を剥き出しにして戦うのは、原作ではこのフリーザ戦だけだったはずだ。
 そんな訳で、このフィギュアは悟空&筋肉が大好きな私の嗜好にクリティカルヒットしたのだ。

 ネットのレビューでは髪が金色過ぎるとか道着の塗装がどうとか自立が心許ないとか色々言われてもいるようだが、筋肉の造形に関しては概ね好評なようで、私もそこが気に入っているし、それだけで細かい粗などは寧ろ斬新さに見える。

 私はこのフィギュアを見て感嘆し、それでも一度は帰宅して頭を冷やした。
 だが結局、パソコンでクレーンゲームの要領を調べ、翌日に挑戦し、何とかゲットしたのだ。
 クレーンを動かした回数は12〜13回か。
 2400〜2600円を使ったことになる。
 物欲に振り回されることのないように常々自分を戒めているつもりなのに、全く意志の力とは脆弱なものだ。

 ネット上の販売価格をざっと眺めたら、このフィギュアには900〜1600円の値が付いているようだから、ちょっと上手い人なら3回かそこらでゲットするのか。

 だが私はクレーンゲームに本気で挑んだのはほぼ初めてだから、まあこんなものだろう。
 いや、今までにもクレーンゲームをやったことはあるが、1〜2回動かして「あ、これは取れない」と諦めた事が数回あった程度だ。

 それがどういう風の吹き回しか、取ろうという気になったのだから、縁みたいなものか。
 実際、挑戦してみるまでは、1000円以内、まあ4〜5回で落とそうと考えていた。
 そして当然の如く?1000円では落とせず、その時点で理性は「ここが引き時では?」と警告を発していた。

 ところが、真剣に「やる側」に回ってみて気が付いたのだが、ギャラリーの目というのが意外と気になるのだ。
 この時は母親に連れられた5歳前後の男の子の「取れるかな〜?」とでも言いたげな瞳に背中を押された。

 で、千円札を崩して挑戦を続行。
 しかし落ちない。
 気付けば男の子は居なくなっている。

 ファウルチップしたクレーンを見ながら、今度こそ理性が投了を告げかけたその時、会社帰りの30代前後とおぼしき男女の連れ合いが、こちらを見ているのに気が付いた。

 全く不思議な感覚だった。
 このカップル?も先程の男の子も、特に私に期待している訳ではない。
 私もギャラリーの側であることの方が多いからよく分かる。
 それは単なる野次馬的な好奇心でしかない。

 だがそれが分かっていながら私は挑戦を続け、悟空をゲットした。
 アスリートの「私一人の力ではありません」というお決まりの台詞は、善きにつけ悪しきにつけ本音なのだなと実感した。

 クレーンが標的を落とした時のゾワゾワ感も、また独特だった。
 達成感?よりも安堵感の方が強いか。
 そして何よりも、巨大な「気が済んだ」感。
 ここで達成感を強く感じた者は、クレーンゲームにハマるのだろう。

 男女の連れ合いは、何となく見ていたテレビバラエティがCMに入ったのでトイレに立った、みたいな感じで去っていった。
 ゲットした悟空を袋に入れていたら、先程の男の子が「あ、取れたのか」みたいな顔でこちらを見ていた。

 そして悟空は我が家に飾られている。
 この身長18センチのフィギュアが私に与える影響はそれなりに大きく、眺めるだけでトレーニングのモチベーションが上がる。

 そこで普段から「もっと運動しないと」と嘆いているカミさんに「このフィギュアを見たら、運動する気になるだろう?」と言ったら、「そうだねえ」と、棒読みの返事がかえってきた。

 ついでだからチーコさんとアユ君にも「このフィギュアを見るだけで御飯10杯分ぐらいスクワットができるだろう(さすがに言ってる本人にも意味不明?)」と言ったら、返事も無かった。
 というか鼻で笑われたような。
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