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ずつうのたね

2007-05-06 22:35:08 | Weblog

アンドリュー・E・バーシェイ、山田鋭夫訳「近代日本の社会科学~丸山真男と宇野弘蔵の射程」(NTT出版、2007年)

UCBから来た、居酒屋(日本の社会科学)の新参の客(著者)が、居酒屋(日本の社会科学)の関係性の考察を書き留めた印象は強い。

諧謔的な要素が極めて強い。なぜなら、訳者選定に最も集約される。マルクス主義経済学を一定の範囲で継承する流れを汲むレギュラシオン学派を日本に紹介する皮切りとなった山田教授にそれを依頼したからである。そのレギュラシオンによる分析に飛びつかざるを得なくなった主要な理由は、講座派の分析と、市民主義を用いても政権奪取を図ることができなかった日本の社会科学の「失敗の本質」(戸部・寺本・鎌田・杉之尾・村井・野中「失敗の本質」(中央公論社1991年文庫版)に倣っていえば。)の分析と代替策の提示がなかったからなのだろうか?

バランスよく2つの主題を分析していることは間違いないが、おそらく、マルクス主義的方法論とそれに対応する学問の流れの相関関係を的確に描いているかどうかは別である。日本の社会科学という繁華街が、3軒の居酒屋(近代経済学とマルクス経済学と政治学)の外側に対してどのように海外に対して情報発信し、影響力を発揮したのかというプロセスを描くには少し弱かった感がある。丸山真男教授の著作は的確に捕らえられているが、柴田敬氏・安井琢磨氏・置塩信雄氏の経済学者の情報発信など捨象されすぎてしまっているものも多く残念である。もう少し、国際的な学術との連関で故都留重人の著作など参考にすると幅の広い著作になったのではないかと今後の加筆を期待する。

副田義也「内務省の社会史」(東京大学出版会、2007年)

明治期から内務省解体までの通史で、大部の著作である。極めて労作であると評価する。著作の脚注に引用については、内務省史及び戦後を代表する東大教授陣の座談記事中心の引用が多く、どちらかといえば、従来の政治学者・歴史学者の書き溜めてきた著作に対する引用などはあまり見ることができない。かといって行政組織史に徹している訳でもない。2局中心史観と5局中心史観との方法論の峻別など入り口は適切であるものの、纐纈教授や戸部教授の著作に見られる極めて実証的な論証に立とうとする政軍関係(polico-military)と異なり、政官関係(polico-beareau)を的確に描くためには、政治史や議会史などの引用文献や、政治家の履歴なども分析の視点に加えていくことが期待される。そういった引用に依拠しない理由を逆に釈明しておくことが適切ではないか。著者の執念により、脚注で根拠が確認できなかった著者の文献に関し、徹底的に批判していることは大いに賛意を示したい。


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