7~9月は、(木)(土)、東京會舘・レストランプルニエでの演奏。
スタインウェイの中でも、とっても個性の強いピアノ。
長い間、ほんとうにお世話になってきて、
気難しく、あたたかくて、懐の深い、
わたしにとっては、これ以上存在の大きいピアノは、人生で一台と思うほど。
随分苦労もしたし、中に「人」が入っている感覚があり、この「人」に、どれだけ励まされてきたかわからない。
40分×4ステージは、ソロで演奏するには、相当~に長い時間で、
いつもは、前半をクラシック、中盤から映画音楽などを交え、
日が落ちてきてからは、すこしだけジャズバラードを加えてお送りしているのですが、
なんと本日は、全卓のお客様が、クラシックが大好きな方々。
美味しいお食事を愛するお客様は、音にも耳の肥えたばかりで、
しっかりManageできる曲でないと、絶対に演奏することができない。
そして、お食事とサービスを静かに演出させていただく役割で、
演奏会ではないので、もちろん音量の制限もある。
音色にも、とても気を遣う。
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そんな中、「トッカータとフーガ」というリクエスト。
本来はオルガン曲であり、スタインウェイのピアノで通して演奏することも難しいので、
iPadで譜面を確認しながら、有名なオープニングだけ引用させていただいて、
あとは、小学生の頃からエチュードとしてしばしば弾き続けているバッハのインベンションを、転調&展開して、
3曲即興で繋げてアレンジ、7分弱くらいでまとめてみました。
アレンジは、ジャズの脳を使って構築。
バロック時代の音楽は、ジャズに相通じるところが沢山あるので、それがとてもスムーズに創造しやすい。
クラシックだけしか勉強していなかったら、またジャズしか勉強していなかったら、生まれない発想。
そして、それぞれに愛情を深く持っているからできる紡ぎ方。
音楽は、文化は、ぜーんぶ繋がっている。
そして、日本人である私が演奏していることの意味も、明確に芯がなければいけないと思う。
むずかしくて、悩んで悩んで。落ち込む日もあり。
でも、真摯に受け取って下さるお客様がいらっしゃることの、ありがたさは計り知れない。
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そのあと、ベートーベンの悲愴を弾き終わったときにも、ほんとうに勿体無いお声をかけいただいたり。
最後は、別のテーブルのお客様に、「ショパンのマズルカ5番、素晴らしかったです」と、お声かけていただいたり。
「5番」までご存知であることに衝撃を覚えつつ、
本当に幅広く演奏するということの、気が遠くなるような精進の果てしなさや、
生演奏を楽しみにお聴きくださるお客様のありがたさや、
ひとつひとつを大切に噛み締めて、
ふぅ~と魂が抜けたように終了、ピアノの蓋をしずかに閉じた。
もっともっと、もっともっと、がんばろう。
と、切に思う、2014年盛夏。
お世話になっているみなさまに、心より感謝申し上げます。