夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

青い地球

2020-08-19 21:00:10 | 宇宙戦艦ヤマト二次創作
この作品は本編にて一切描かれていない部分ついて取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』及び『宇宙戦艦ヤマト2202』に基づいてはおりますが、公式設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。 拙い文章ですので過度な期待はしないでください。



 「地球か………何もかも皆懐かしい…」と涙ぐみながら呟く。
沖田艦長の目には赤い地球、そこに小さく出迎えるキリシマ、防衛艦。そして手元に持つ写真が映る。
そして事切れたように、写真が最期の花びらのように人工重力に従って床に舞う。
次の瞬間、依代のいなくなったコスモリバースシステムが再起動した。

《オカエリナサイ》とキリシマは発光信号を打ってくる。
しかし艦内でそれを投影したシステムが不具合を起こしたのか、イだけが逆さまになってしまっている。
だがそんなことを気にしているものはいなかった。
乗組員は窓に貼り付き、赤い地球を見ていた。
「帰ってきた……」「地球だ……!」と中には涙するものがいる。イスカンダルへの公開を成し遂げ、帰ってきたのだ。我々は。
防衛艦が誘導の為に横についてくる。
すると、いきなり次元羅針盤が狂い、コスモリバースシステムの中枢によって船のコントロールが奪われ、日本の東北へと船は舵を取る。
「舵が効かない!」と島は固まった舵を動かそうとするが動かない。
「島。いいんだ。」と古代は言う。
「古代………」と島は呟く
ヤマトは翼を開き、赤い大地へと降りていく。
ヤマトと防衛艦、そしてキリシマは日本の福島県、沖田艦長の出身地に錨を下ろす。

そしてコスモリバースシステムが起動され、ヤマトから同心円状に色が赤から緑へと変わっていく。

ガミラスの動植物から地球の動植物へ。

何もいない空から鳥の飛ぶ空へ。

ヤマトの周りには水が生まれていき、ヤマトはあっという間に水の上に浮いた。

干からびた海から魚の住む海へ。

「地球じゃよ。これが…。」と佐渡先生が呟く。

《コスモリバースシステム制御室より、第一艦橋。》と真田の声がする。
《コスモリバース、出力低下。終わったんだ……俺達の旅が……。》と言う。
草が太陽に照らされ、光合成を始めている。
今まで沢山のひとが死んだ。
たくさんの涙が流れた。
だが、この涙も今日この日という明日への希望があった。
ヤマト、キリシマ、そして防衛艦136番、127番は海の上でただこの歴史を見届けていた。
「外気、摂氏10℃、放射線許容範囲内。地球環境の復旧を確認。上陸可能です!」という声とともにヤマトは福島の丘に接岸、タラップを下ろす。防寒具を着た乗組員たちが復旧した、自分たちが命がけで貰ってきたコスモリバースシステムによって返り咲いた、地球の地面を踏みしめる。

キリシマや防衛艦からも藤堂長官、芹沢局長を始めとした首脳陣や土方、山南、尾崎、安田など沖田艦長と共にガミラス戦役を戦い抜いた戦士たちが自分たちが守りたかった、地球の大地へと降り立つ。
「取り戻せたな。沖田…」と土方はヤマトの艦橋を見ながら呟く。 

するとヤマトから主要クルー達が箱を囲みながら降りてくる。 
「沖田は……」と藤堂は真田に訊く。
真田は何も言わずに首を横に振る。
「そうか……彼は帰ってきたんだな。この地へ。命を捧げてでも。」と藤堂は言う。
すると横にいた、芹沢が鼻をすすりながら男泣きし始める。
土方も、このときばかりは目頭が熱くなり、涙を流していた。
「沖田十三、そしてこの航海で命を落とした乗組員、この戦争で命を落とした全ての者に対して……敬礼!」と土方は声を絞り出し、言う
ヤマトの主砲は空高くへ指向し、弔砲を撃つ。

コスモリバースの依代として地球そのものと一体になった沖田十三艦長へ。

この船に乗り、志半ばで命を落としてしまった乗組員へ。

地球を守るため、命を懸けて戦い散った、国連宇宙海軍の戦士達へ。

遊星爆弾や爆撃の被害に合い、命を落としてしまった地球市民へ。

そして、ヤマトや地球に立ちはだかい、戦って死んでしまった、遠いガミラスの戦士達へ。

そして。波動コアを命を賭して届けたサーシャへ。
 
さんさんと雪が降る。
ヤマトは乗組員を収容し沖田艦長の下ろした錨を抜き、宇宙へと再び上昇した。
青い地球をこの目に納めるために。

「見えてますか、沖田艦長。地球ですよ。ちゃーんと青い姿を取り戻しました。」と佐渡先生は呟く。
この様子は防衛艦に積まれていたカメラを通じて全世界に生中継された。
テレビから流れる青い地球の姿を見て、思ったことは人によって異なるだろう。


地球は再生の時を迎えたのだ。



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