この作品は本編にて一切描かれていない第二次内惑星戦争について取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』、『宇宙戦艦ヤマト2202』及び八八艦隊様の小説『女王陛下のウォースパイト号』に基づいてはおりますが、これらの設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。
拙い文章ですので過度な期待はしないでください。
また本作はテロリズムや人種差別を助長するものでも、陰謀論を唱えるものでもありません。
本作はフィクションで、実在する国家、団体、人物とは一切関係ありません。
この小説は拙作の小説『第一次内惑星戦争』の続編となっております。まだそちらをお読みになっていない方はそちらから読まれることを推奨いたします。
「さて、作戦の確認に入ろう。」と強襲揚陸艦イオージマの中央作戦室に各部隊の部隊長や、艦長などが揃いに揃っている。
「英国軍のSAS及び、日本陸上自衛隊第一空挺団、アメリカ陸軍第101空挺師団は先立ってそれぞれ惑星の戦略目標付近に空挺。後から降りる部隊の為の橋頭堡の確保を。」と説明される。
「その後に英国軍第三宙兵コマンドー旅団、日本自衛隊、第3空間騎兵旅団、アメリカ軍、第2宙兵師団、第四宙兵師団、中華民国軍、第49宙軍陸戦旅団が上陸、戦略目標の制圧及び、惑星全域の占領を行う。」
「最重要戦略目標は火星、アルカディアシティー及びアルカディアポート。」
「まずはそこで、ジャック・エメラルダス及びその他のテロ行為に対しての容疑が掛けられている人物の捕縛を行う。」
「市民に対しての虐殺や略奪はしてはならない。」と綺麗事を並べられる。
「では各々抜かりなく。」と将軍は言い、会議を締める。
強襲揚陸艦や輸送艦、空母などを含む連合艦隊は火星の大気圏へ降下。
騒がしく上陸作戦の準備を進めている。
揚陸艇には戦車やが係留され、コスモコーモラントと呼ばれる小型輸送機もエンジンが起動しつつある。また滑走路には中型輸送機も配置されており、空挺団の受け入れも用意している
「我々第一空挺団は空間騎兵隊や英国軍と共にアルカディアシティー占領を目指す。」
「その一番槍が空挺団だ。」
「各々。集結地点に一人欠かさず降りてこい!」と団長は激励する。
「「はいっ!」」と野太い声が格納庫に響き、
輸送機に乗り込んでいく。
空母として降下してきたアークロイヤル、ケストレルのハッチが開き、カタパルトから続々と戦闘機ブラックタイガーや攻撃機コスモアルバトロス、戦闘爆撃機コスモフェザントが勢い良く発進していく。
そして各国の強襲揚陸艦からは中型輸送機コスモストークなどが発進する。
国連軍の空挺団は一路、アルカディアシティーへの降下を目指した。
航空機隊は一足先にアルカディアシティー近郊で飛び、空挺団降下の阻害となる、対空陣地を残さず潰していく。
無重力空間で翔んでいた彼らにとって重力というのは足枷でしかないことを改めて彼らは実感した。
要撃機とのドッグファイトも起きたが、空では地の利というのもあまり関係なく、格闘能力はブラックタイガーの方が優位に立っており、
機銃で難なくそれを撃破していった。
「あとは頼むぞ…お前らに全てがかかっている…」
そして、アルカディアシティーの近傍にはコスモストークの姿が見えてきた。
機内では装備の最終確認が終わり、降下待機していた。
《降下6分前です!》
「1番機!行くぞ!」
「おう!」
「行くぞ!」
「おう!」と鬨を掛ける。
「立てぇ!」と指示し、団員は立ち上がり、降下に備える。
コスモストークの後部ハッチは開き、赤い大地が顔を見せる。
《コスモコース良し!用意!用意!用意!》
《降下!降下!》効果のベルが貨物室に鳴り響き、団員は降下を始める。
機体から飛び降りる空挺団のパラシュートが空を埋め尽くす。
泣く子も黙る空挺団が火星の地で舞っている。
彼らは今鳥なのだ。
しかし彼らも重力には逆らえず、ゆっくり地表へ降り立つ。6機のコスモストークから降下した陸上自衛隊第一空挺団とイギリス軍SASは着地に成功し、橋頭堡となるアルカディア近郊の宇宙港ヨーステンポートへ向かう。
ヨーステンポートの民間人は既に退避が行われていたようで、警備の歩哨が守りを固めている。しかし、精鋭中の精鋭の空挺団やSASの敵ではなかった。連携による双方向からの突入が行われ、歩哨との銃撃戦になる。
実弾のアサルトライフルの銃声が港内に響き、やがて国連軍が占領し、建物の屋上に付いている掲揚台の火星共和国旗は降ろされ、国連旗がはためく。
「こちら空挺団。橋頭堡を確保。」
《空挺団が橋頭堡を確保した!直ちに出撃せよ!》と司令室から指示が入り、空間騎兵隊や宙兵隊の輸送機や揚陸艇が発進していく。
「対空砲火が厳しい!」輸送機などが新たに配置された対空砲の餌食になり、墜落する。
「前方!敵輸送機!」前方より輸送機が飛んでくる。
《ハッチ開放。エンジンに巻き込まれるなよ?》とスピーカーから声がする。
輸送機のキャビンから軽装甲服を纏い、ジェットパックを背負った兵士達が戦場となっている雲海に飛び降りている。
彼らはその身軽さを活かして揚陸艇などの対空砲火をかいくぐり、コックピットやエンジンに拳銃や手榴弾でダメージを与えていく。
「地球の天使とダンスでもしやがれ!」
揚陸艦のコックピットの硝子をいとも容易く貫き、弾丸はパイロットに風穴を開ける。
《こちら第7騎兵連隊揚陸艇01番!被弾した!まもなく墜落する!》
後部のキャビンには軽装甲車や物資が積まれているが、エンジンが爆発した衝撃でごった返し、そのまま地表に叩きつけられる。
対空砲火を潜り抜け、ヨーステンポートに上陸した部隊は陣地を築き、戦車や物資を下ろしている。
「隊長。ぜひ見てもらいたいものが。」とヨーステンポートをクリアリングしていた兵士が戻ってくる。
「なんだ?」
「無傷の敵主力戦闘機を発見しました。」
「本当か」今まで火星の戦闘機は撃墜した残骸しか確保されておらず、それもベイルアウト後、機体を爆破するプログラムが組まれているようで、細部や制御コンピュータを解析することはできなかった。
これは大きな収穫だ。
「3機発見し2機は母艦に運び込まれる予定です。」と戦闘機ハンガーに案内される。
キャットウォークから見る格納庫には3機の戦闘機が駐機していた。
「これがこのマーズヴォルチャーです。」と輸送機で降りてきたブラックタイガーの整備士は言う。
映像や作戦記録などで見る姿とは上下が反転しており、垂直尾翼が下ではなく、上に出ている。
「垂直尾翼の保護のために180度反転して駐機するようです。またエンジンの整備なども行いやすいようにメンテナンスハッチがついておりまして、ここを開ければエンジンが見れます。」とメンテナンスハッチを開き、エンジンを見せる。
素人目には全くわからない配管だが、周りのエンジニアはそのエンジンを見て感嘆している。
「こんな小さなエンジンであの機動を…」
「さらにここに後輪も格納してるとなると中々な技術…」
「そして可変翼でハードポイントを無理やりではありますが、2倍に増やしています。」
「可変機構も単純かつ、強固に。」
「大型機のため、我が軍のブラックタイガーより速力や機動力は劣りますが、総合的にはこちらの方が上手でしょう。」と技術者は話しているといきなり警報が鳴り響いた。
《敵戦闘機3機急速接近!》
「まさか!レーダーには映っていなかったぞ!」と野営基地のレーダー士官は言う。
《敵機接近!地表スレスレを飛んでいます!》
「あの機体でそんなすれすれを飛ぶのは…まさか…!」ハンガーから急いで外に出た司令官はつぶやく。
《こちら観測班!敵機は上下反転して飛行している模様!》マーズヴォルチャーが3機、駐機姿勢で飛行している。そんな無茶苦茶だと司令官は率直に思った。
コックピットを軸に反転できるからと言ってもこんな常識外れな飛び方は困難なはずだ。
よく見るとハンガーで見たマーズヴォルチャーと機銃を抱えてる場所が違う。
掃射が確実に行える場所に抱えていた。
「敵機は機銃掃射を行おうとしている!総員屋外から待避しろ!」と司令官は指示し、屋外にいた作業員は退避する。
予想通りマーズヴォルチャーお抱えの機銃は饒舌に火を噴き、地球軍野営陣地に洗礼を施す。
テントはバラバラに穴が空き、土を巻き上げた。
マーズヴォルチャーはBDAをするが如く、上昇し、一周回ってから去っていった。
「被害報告!」
《陣地が徹底的に破壊されました…。》
時間は少し遡り、アルカディアシティー、フィラデルフィア地区にある大統領府は人でごった返していた。
中庭では火が焚かれ、そこに文書が投げ込まれている。
「連中がくる前にアイツらに渡しちゃならんもんは燃やせ!」と副大統領は指示する。
「特に太陽系外縁探査の記録とゲルミロン帝国との外交記録は全て破棄だ!痕跡すら残すな!」
「大統領、2時間後にアルカディアシティーを発つでよろしいので?」と執務室で調整をしているジャックエメラルダスに国防長官は訊く。
「ああ。2隻目には孤児などを載せておいてくれ、あれは我々のノアの方舟だ。」と言う。
「私もそろそろアルカディアポートに向かわねば。市内全域に緊急避難命令。アルカディアポート第一発射台は封鎖。」と指示し、執務室をあとにする。
「あぁ……ここは何処だ。」
装甲服の重みを感じる。
目を開くとぐちゃぐちゃになった機内があった
「桐生…気づいたか。」と名前を呼ばれる。
「連隊長……!」と桐生は応える。
「なんて顔してやがる…俺は生きてるよ。ここはあの世なんかじゃねえ」と小西連隊長は言う。
「他のやつは……?
「そこの田井中は生きているが、パイロットとかは駄目じゃった。問題が墜落の衝撃で扉が開けられない。ただ装甲車のエンジンは生きている。」
「じゃあ俺達は…」
「大丈夫だ。必ず助けは来る。俺達は命ある限り諦めない。それが空間騎兵隊魂だろう?忘れるな。」と小西は言う。
「待った物音。」と田井中は言い、アサルトライフルを取る。
小西連隊長もハンドガンを持ち、桐生も連隊長から渡されたアサルトライフルで武装する。
火星人が殺しに来たか…と桐生は思った。
扉を開けようとして金属が擦れる音がする。
すると外の人々はバーナーを取り出したようで、扉を焼き切ろうとしている。
冷や汗が頬を流れる感覚が桐生を緊張させる。
生まれたばかりの娘の振り袖姿を見るまでは死ねないんだと心を奮い立たせる。
バーナーで扉が全て焼き切れ、外側から蹴破られる。
桐生らは銃を向ける先には見たこともないフルフェイスのヘルメットをした兵士たちだ。
「日本人か」と日本語で話しかけてくる。
「あんたらは一体どこの連中だ。」と小西連隊長は尋ねる。
「俺らは国連軍特殊作戦群第99特殊作戦小隊さ。」とリーダー格らしき男が言う。
「安心しろ殺しやしねえ。ベースへ向かうんだろう?そこの装甲車で向かえる。」
「なんで特殊部隊が俺らを助けるんだ……?」
「敵の対空砲火が厳しく、墜ちた機が予想よりも多く、物資が不足しているんだ。その装甲車は使えるか?」と訊いてくる。
「ええちゃんと動きます。」と小西は答える。
「よし、トラッパー!後部ハッチに穴を開けてくれ!」と言い、トラッパーと呼ばれた兵はと扉に脚をつけ、扉を焼切り始める。
「レッカー!物資と銃器を装甲車に詰め込んでくれ」と言われ大柄な男は機内に入り、木箱を装甲車に詰め込む
扉が焼き切れた頃には装甲車も用意され、乗り込み、外に出る。
外にはトラックや戦車がキャラバンを作っており、一路ベースを目指していた。
ベースについた頃にはある程度復旧も進み、更にアメリカ軍も合流していた。
「さて。我々はそれぞれ3方面から攻撃を仕掛ける。」
「英国軍は北側から、航宙自衛隊は中央、アメリカ宙兵隊は南側からアルカディアシティへ。それぞれ進撃してください。」
「中央のフィラデルフィアへは作戦開始後、24時間以内に。」と言う
その後作戦の細部も確認され、いよいよ決戦のときが来た。
戦車隊や、砲兵隊なども用意が整い、いよいよ市街戦へ突入する。
「戦車大隊!前へ!」国連軍主力戦車、54式戦車や62式機動戦闘車がアルカディアシティへと随伴歩兵を率いて進撃する。
上空はガンポッドを装備したコスモコーモラントやブラックタイガー、コスモアルバトロスが翔ぶ。
歩兵戦闘車や装甲車も突入し、火星軍の歩兵を蹂躙する。
まるで地獄かのような様相であった。
バリケードをも工兵隊は派手に爆破し、ビルからの銃撃はブラックタイガーのミサイルが沈黙させていった。
対戦車ミサイルの攻撃によっていくつかの戦車が行動不能になるが、まだ奥から戦車が現れ、その主砲が抵抗する者を薙ぎ払う。
まるで陸の王者だ。陸と言う王道を闊歩する。
火星軍の迫撃砲と共に突撃隊が現れるが、車輌や装甲車に備え付けられた機関銃が無慈悲に薙ぎ払う。
郊外の戦況はほぼ絶望的だ
火星軍の兵士たちは尻尾を巻いて逃げ出している。
その撤退を援護しようとパワードスーツの機関銃が戦車に対して牙を向く。
しかし主砲が指向した時がそのパワードスーツの終焉であった。
主砲がパワードスーツの薄い装甲に穴を開け、爆散する。
郊外を突破し、中心部へ兵をすすめる。
中心部へ入ると戦闘は激しさを増し、
パワードスーツの強固な防御陣地が敷かれ、バリケードも堅いものになった。
しかしそれをものともせず、破竹の勢いで進む姿はまるで地獄からの使者のようだ。
屍体を平らげ、無限軌道が廻る。
トーチカで対抗してくるものに対しても火炎放射器を浴びせ、降伏しようとする兵に対しても鉛玉が額を貫く。
フィラデルフィアと呼ばれる地域にも遂に進撃したが、既に大統領府はもぬけの殻になり、作業員が残っているのみだった。
軍はフィラデルフィアホールと呼ばれる、3年前、ジャックエメラルダスらが独立宣言に署名していた建造物に立てこもり、最後の抵抗を続ける。
銃声鳴り響く建物の中は地獄の様相で火炎放射器や手榴弾で破壊しつくされた。
そして戦闘開始から約45時間。ホール内での最後の抵抗も虚しく、フィラデルフィアホールの屋上の火星共和国旗が降ろされ、国際連合旗が掲揚される。
ライヒスタークの赤旗ならぬ、フィラデルフィアの国連旗とも呼ばれ、その記録写真は後世の歴史の教科書等にも掲載された。
尤も、平和の象徴である国連旗が、戦勝の証として掲揚されるのはなんとも皮肉な話である。
こうしてアルカディア市街戦は多数の死傷者を出しながら決した。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』、『宇宙戦艦ヤマト2202』及び八八艦隊様の小説『女王陛下のウォースパイト号』に基づいてはおりますが、これらの設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。
拙い文章ですので過度な期待はしないでください。
また本作はテロリズムや人種差別を助長するものでも、陰謀論を唱えるものでもありません。
本作はフィクションで、実在する国家、団体、人物とは一切関係ありません。
この小説は拙作の小説『第一次内惑星戦争』の続編となっております。まだそちらをお読みになっていない方はそちらから読まれることを推奨いたします。
「さて、作戦の確認に入ろう。」と強襲揚陸艦イオージマの中央作戦室に各部隊の部隊長や、艦長などが揃いに揃っている。
「英国軍のSAS及び、日本陸上自衛隊第一空挺団、アメリカ陸軍第101空挺師団は先立ってそれぞれ惑星の戦略目標付近に空挺。後から降りる部隊の為の橋頭堡の確保を。」と説明される。
「その後に英国軍第三宙兵コマンドー旅団、日本自衛隊、第3空間騎兵旅団、アメリカ軍、第2宙兵師団、第四宙兵師団、中華民国軍、第49宙軍陸戦旅団が上陸、戦略目標の制圧及び、惑星全域の占領を行う。」
「最重要戦略目標は火星、アルカディアシティー及びアルカディアポート。」
「まずはそこで、ジャック・エメラルダス及びその他のテロ行為に対しての容疑が掛けられている人物の捕縛を行う。」
「市民に対しての虐殺や略奪はしてはならない。」と綺麗事を並べられる。
「では各々抜かりなく。」と将軍は言い、会議を締める。
強襲揚陸艦や輸送艦、空母などを含む連合艦隊は火星の大気圏へ降下。
騒がしく上陸作戦の準備を進めている。
揚陸艇には戦車やが係留され、コスモコーモラントと呼ばれる小型輸送機もエンジンが起動しつつある。また滑走路には中型輸送機も配置されており、空挺団の受け入れも用意している
「我々第一空挺団は空間騎兵隊や英国軍と共にアルカディアシティー占領を目指す。」
「その一番槍が空挺団だ。」
「各々。集結地点に一人欠かさず降りてこい!」と団長は激励する。
「「はいっ!」」と野太い声が格納庫に響き、
輸送機に乗り込んでいく。
空母として降下してきたアークロイヤル、ケストレルのハッチが開き、カタパルトから続々と戦闘機ブラックタイガーや攻撃機コスモアルバトロス、戦闘爆撃機コスモフェザントが勢い良く発進していく。
そして各国の強襲揚陸艦からは中型輸送機コスモストークなどが発進する。
国連軍の空挺団は一路、アルカディアシティーへの降下を目指した。
航空機隊は一足先にアルカディアシティー近郊で飛び、空挺団降下の阻害となる、対空陣地を残さず潰していく。
無重力空間で翔んでいた彼らにとって重力というのは足枷でしかないことを改めて彼らは実感した。
要撃機とのドッグファイトも起きたが、空では地の利というのもあまり関係なく、格闘能力はブラックタイガーの方が優位に立っており、
機銃で難なくそれを撃破していった。
「あとは頼むぞ…お前らに全てがかかっている…」
そして、アルカディアシティーの近傍にはコスモストークの姿が見えてきた。
機内では装備の最終確認が終わり、降下待機していた。
《降下6分前です!》
「1番機!行くぞ!」
「おう!」
「行くぞ!」
「おう!」と鬨を掛ける。
「立てぇ!」と指示し、団員は立ち上がり、降下に備える。
コスモストークの後部ハッチは開き、赤い大地が顔を見せる。
《コスモコース良し!用意!用意!用意!》
《降下!降下!》効果のベルが貨物室に鳴り響き、団員は降下を始める。
機体から飛び降りる空挺団のパラシュートが空を埋め尽くす。
泣く子も黙る空挺団が火星の地で舞っている。
彼らは今鳥なのだ。
しかし彼らも重力には逆らえず、ゆっくり地表へ降り立つ。6機のコスモストークから降下した陸上自衛隊第一空挺団とイギリス軍SASは着地に成功し、橋頭堡となるアルカディア近郊の宇宙港ヨーステンポートへ向かう。
ヨーステンポートの民間人は既に退避が行われていたようで、警備の歩哨が守りを固めている。しかし、精鋭中の精鋭の空挺団やSASの敵ではなかった。連携による双方向からの突入が行われ、歩哨との銃撃戦になる。
実弾のアサルトライフルの銃声が港内に響き、やがて国連軍が占領し、建物の屋上に付いている掲揚台の火星共和国旗は降ろされ、国連旗がはためく。
「こちら空挺団。橋頭堡を確保。」
《空挺団が橋頭堡を確保した!直ちに出撃せよ!》と司令室から指示が入り、空間騎兵隊や宙兵隊の輸送機や揚陸艇が発進していく。
「対空砲火が厳しい!」輸送機などが新たに配置された対空砲の餌食になり、墜落する。
「前方!敵輸送機!」前方より輸送機が飛んでくる。
《ハッチ開放。エンジンに巻き込まれるなよ?》とスピーカーから声がする。
輸送機のキャビンから軽装甲服を纏い、ジェットパックを背負った兵士達が戦場となっている雲海に飛び降りている。
彼らはその身軽さを活かして揚陸艇などの対空砲火をかいくぐり、コックピットやエンジンに拳銃や手榴弾でダメージを与えていく。
「地球の天使とダンスでもしやがれ!」
揚陸艦のコックピットの硝子をいとも容易く貫き、弾丸はパイロットに風穴を開ける。
《こちら第7騎兵連隊揚陸艇01番!被弾した!まもなく墜落する!》
後部のキャビンには軽装甲車や物資が積まれているが、エンジンが爆発した衝撃でごった返し、そのまま地表に叩きつけられる。
対空砲火を潜り抜け、ヨーステンポートに上陸した部隊は陣地を築き、戦車や物資を下ろしている。
「隊長。ぜひ見てもらいたいものが。」とヨーステンポートをクリアリングしていた兵士が戻ってくる。
「なんだ?」
「無傷の敵主力戦闘機を発見しました。」
「本当か」今まで火星の戦闘機は撃墜した残骸しか確保されておらず、それもベイルアウト後、機体を爆破するプログラムが組まれているようで、細部や制御コンピュータを解析することはできなかった。
これは大きな収穫だ。
「3機発見し2機は母艦に運び込まれる予定です。」と戦闘機ハンガーに案内される。
キャットウォークから見る格納庫には3機の戦闘機が駐機していた。
「これがこのマーズヴォルチャーです。」と輸送機で降りてきたブラックタイガーの整備士は言う。
映像や作戦記録などで見る姿とは上下が反転しており、垂直尾翼が下ではなく、上に出ている。
「垂直尾翼の保護のために180度反転して駐機するようです。またエンジンの整備なども行いやすいようにメンテナンスハッチがついておりまして、ここを開ければエンジンが見れます。」とメンテナンスハッチを開き、エンジンを見せる。
素人目には全くわからない配管だが、周りのエンジニアはそのエンジンを見て感嘆している。
「こんな小さなエンジンであの機動を…」
「さらにここに後輪も格納してるとなると中々な技術…」
「そして可変翼でハードポイントを無理やりではありますが、2倍に増やしています。」
「可変機構も単純かつ、強固に。」
「大型機のため、我が軍のブラックタイガーより速力や機動力は劣りますが、総合的にはこちらの方が上手でしょう。」と技術者は話しているといきなり警報が鳴り響いた。
《敵戦闘機3機急速接近!》
「まさか!レーダーには映っていなかったぞ!」と野営基地のレーダー士官は言う。
《敵機接近!地表スレスレを飛んでいます!》
「あの機体でそんなすれすれを飛ぶのは…まさか…!」ハンガーから急いで外に出た司令官はつぶやく。
《こちら観測班!敵機は上下反転して飛行している模様!》マーズヴォルチャーが3機、駐機姿勢で飛行している。そんな無茶苦茶だと司令官は率直に思った。
コックピットを軸に反転できるからと言ってもこんな常識外れな飛び方は困難なはずだ。
よく見るとハンガーで見たマーズヴォルチャーと機銃を抱えてる場所が違う。
掃射が確実に行える場所に抱えていた。
「敵機は機銃掃射を行おうとしている!総員屋外から待避しろ!」と司令官は指示し、屋外にいた作業員は退避する。
予想通りマーズヴォルチャーお抱えの機銃は饒舌に火を噴き、地球軍野営陣地に洗礼を施す。
テントはバラバラに穴が空き、土を巻き上げた。
マーズヴォルチャーはBDAをするが如く、上昇し、一周回ってから去っていった。
「被害報告!」
《陣地が徹底的に破壊されました…。》
時間は少し遡り、アルカディアシティー、フィラデルフィア地区にある大統領府は人でごった返していた。
中庭では火が焚かれ、そこに文書が投げ込まれている。
「連中がくる前にアイツらに渡しちゃならんもんは燃やせ!」と副大統領は指示する。
「特に太陽系外縁探査の記録とゲルミロン帝国との外交記録は全て破棄だ!痕跡すら残すな!」
「大統領、2時間後にアルカディアシティーを発つでよろしいので?」と執務室で調整をしているジャックエメラルダスに国防長官は訊く。
「ああ。2隻目には孤児などを載せておいてくれ、あれは我々のノアの方舟だ。」と言う。
「私もそろそろアルカディアポートに向かわねば。市内全域に緊急避難命令。アルカディアポート第一発射台は封鎖。」と指示し、執務室をあとにする。
「あぁ……ここは何処だ。」
装甲服の重みを感じる。
目を開くとぐちゃぐちゃになった機内があった
「桐生…気づいたか。」と名前を呼ばれる。
「連隊長……!」と桐生は応える。
「なんて顔してやがる…俺は生きてるよ。ここはあの世なんかじゃねえ」と小西連隊長は言う。
「他のやつは……?
「そこの田井中は生きているが、パイロットとかは駄目じゃった。問題が墜落の衝撃で扉が開けられない。ただ装甲車のエンジンは生きている。」
「じゃあ俺達は…」
「大丈夫だ。必ず助けは来る。俺達は命ある限り諦めない。それが空間騎兵隊魂だろう?忘れるな。」と小西は言う。
「待った物音。」と田井中は言い、アサルトライフルを取る。
小西連隊長もハンドガンを持ち、桐生も連隊長から渡されたアサルトライフルで武装する。
火星人が殺しに来たか…と桐生は思った。
扉を開けようとして金属が擦れる音がする。
すると外の人々はバーナーを取り出したようで、扉を焼き切ろうとしている。
冷や汗が頬を流れる感覚が桐生を緊張させる。
生まれたばかりの娘の振り袖姿を見るまでは死ねないんだと心を奮い立たせる。
バーナーで扉が全て焼き切れ、外側から蹴破られる。
桐生らは銃を向ける先には見たこともないフルフェイスのヘルメットをした兵士たちだ。
「日本人か」と日本語で話しかけてくる。
「あんたらは一体どこの連中だ。」と小西連隊長は尋ねる。
「俺らは国連軍特殊作戦群第99特殊作戦小隊さ。」とリーダー格らしき男が言う。
「安心しろ殺しやしねえ。ベースへ向かうんだろう?そこの装甲車で向かえる。」
「なんで特殊部隊が俺らを助けるんだ……?」
「敵の対空砲火が厳しく、墜ちた機が予想よりも多く、物資が不足しているんだ。その装甲車は使えるか?」と訊いてくる。
「ええちゃんと動きます。」と小西は答える。
「よし、トラッパー!後部ハッチに穴を開けてくれ!」と言い、トラッパーと呼ばれた兵はと扉に脚をつけ、扉を焼切り始める。
「レッカー!物資と銃器を装甲車に詰め込んでくれ」と言われ大柄な男は機内に入り、木箱を装甲車に詰め込む
扉が焼き切れた頃には装甲車も用意され、乗り込み、外に出る。
外にはトラックや戦車がキャラバンを作っており、一路ベースを目指していた。
ベースについた頃にはある程度復旧も進み、更にアメリカ軍も合流していた。
「さて。我々はそれぞれ3方面から攻撃を仕掛ける。」
「英国軍は北側から、航宙自衛隊は中央、アメリカ宙兵隊は南側からアルカディアシティへ。それぞれ進撃してください。」
「中央のフィラデルフィアへは作戦開始後、24時間以内に。」と言う
その後作戦の細部も確認され、いよいよ決戦のときが来た。
戦車隊や、砲兵隊なども用意が整い、いよいよ市街戦へ突入する。
「戦車大隊!前へ!」国連軍主力戦車、54式戦車や62式機動戦闘車がアルカディアシティへと随伴歩兵を率いて進撃する。
上空はガンポッドを装備したコスモコーモラントやブラックタイガー、コスモアルバトロスが翔ぶ。
歩兵戦闘車や装甲車も突入し、火星軍の歩兵を蹂躙する。
まるで地獄かのような様相であった。
バリケードをも工兵隊は派手に爆破し、ビルからの銃撃はブラックタイガーのミサイルが沈黙させていった。
対戦車ミサイルの攻撃によっていくつかの戦車が行動不能になるが、まだ奥から戦車が現れ、その主砲が抵抗する者を薙ぎ払う。
まるで陸の王者だ。陸と言う王道を闊歩する。
火星軍の迫撃砲と共に突撃隊が現れるが、車輌や装甲車に備え付けられた機関銃が無慈悲に薙ぎ払う。
郊外の戦況はほぼ絶望的だ
火星軍の兵士たちは尻尾を巻いて逃げ出している。
その撤退を援護しようとパワードスーツの機関銃が戦車に対して牙を向く。
しかし主砲が指向した時がそのパワードスーツの終焉であった。
主砲がパワードスーツの薄い装甲に穴を開け、爆散する。
郊外を突破し、中心部へ兵をすすめる。
中心部へ入ると戦闘は激しさを増し、
パワードスーツの強固な防御陣地が敷かれ、バリケードも堅いものになった。
しかしそれをものともせず、破竹の勢いで進む姿はまるで地獄からの使者のようだ。
屍体を平らげ、無限軌道が廻る。
トーチカで対抗してくるものに対しても火炎放射器を浴びせ、降伏しようとする兵に対しても鉛玉が額を貫く。
フィラデルフィアと呼ばれる地域にも遂に進撃したが、既に大統領府はもぬけの殻になり、作業員が残っているのみだった。
軍はフィラデルフィアホールと呼ばれる、3年前、ジャックエメラルダスらが独立宣言に署名していた建造物に立てこもり、最後の抵抗を続ける。
銃声鳴り響く建物の中は地獄の様相で火炎放射器や手榴弾で破壊しつくされた。
そして戦闘開始から約45時間。ホール内での最後の抵抗も虚しく、フィラデルフィアホールの屋上の火星共和国旗が降ろされ、国際連合旗が掲揚される。
ライヒスタークの赤旗ならぬ、フィラデルフィアの国連旗とも呼ばれ、その記録写真は後世の歴史の教科書等にも掲載された。
尤も、平和の象徴である国連旗が、戦勝の証として掲揚されるのはなんとも皮肉な話である。
こうしてアルカディア市街戦は多数の死傷者を出しながら決した。
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