猫と犬と米国暮らし(旧 猫に寄せて)

米国カリフォルニア州/フロリダ州/ニューヨーク州/マサチューセッツ州と移動を続けてきた動物中心一家、E家の生活記録。

トトに寄せて ー 出会いと別れ…

2018-11-13 20:08:36 | 家族のこと
15年前の初夏、
トトとその兄弟の
フォスターケアを終えて
彼らを里親会へと連れて行く
車中でのこと。

子猫たちはみな
キャリーの扉にしがみつき
中からこちらに手を伸ばして
大騒ぎをした。

ところが、4匹の中の一匹だけは
キャリーの奥からじっとこちらを見ながら
「どこにも行かない!」
というオーラを放っていた。
それが、トトだった。




私が世話をした4匹の中でも
一番の美猫だったトト。






最初に家族が決まるのはトトだろう、
という私の予想は外れ、
里親会終了後に残ったのはトトだった。

トトは、
ケージの中に設置した
ベッドの裏に隠れて
里親会のあいだ中、
気配を消していたのだった。

こうして、彼は自ら
私の猫になることを決めた。
つまり、私はトトに選ばれた。





私はこの時、
アメリカに来て初めて、
自分の存在価値を見つけたと思った。
そして、トトに尽くした。





トトのために家を買い、
トトのために
エイジア&ケイティを迎え、
私はトトのために生きた。

猫のために生きたい、
と思った。





でも、
そんな「誰かのために生きる」
という考え自体が間違っていた。
自分は自分のためにしか生きられない。
自分のために生きて、そして初めて、
誰かのためにも生きる事ができる。

トトは、
それを私に教えるために
やってきた。

そう思うことで
不思議な安心感に包まれた。





5月10日木曜日の午後、
トトにとっては最後の訪問となる
動物病院へ向かうため
車のエンジンをかけ
助手席にのせた
キャリーの中をのぞいた。

普段のトトであれば
キャリーの扉から私の方を見上げるのに
この時は
キャリーの奥から
じっとこちらを見ていた。
その瞬間、15年前に私を選んだ
あの時の子猫がよみがえった。





あの時、
「どこにも行かない!」
と主張した子猫は
その主張どおり
その身体が寿命を迎えるその時まで
どこにも行かずに、
私の傍にいてくれた。


そして、この15年間
外出したトトの帰りを待ちながら

「どこかで野垂れ死になど
絶対にさせない」

「トトの最後は必ず看取る」

という
私の信念を貫く瞬間へと
向かっていることに気が付き、
全身が震え、涙が溢れ出てきた。





お互いが出会ったその時から
それぞれが抱き続けた思いを
同時に叶える初めての瞬間。
それが、皮肉にも別れの時だった。