辛汁師匠の「駅から近い蕎麦屋」という今年の方針に触発されて、今日は駅の近くの蕎麦屋に行ってみた。いや、今日はとにかくまだ身体が治っていないので、ちょっと食事を手抜きしてお腹によいもの、と思ったら蕎麦になったわけで。
ここでは店の名前は出さない。仕事帰りに店の前を通ることもあって、ざるが480円なのに注目していたのだ。手打ちでこの値段というのはないが、しかし蕎麦屋と看板にはあるので、これは何だろうと思っていたのだ。ちなみに、200メートルほど離れたところにあった、もっと駅よりの蕎麦屋は先週閉店した。そこは確か手打ちと書いてあったような気がする。ざるが700円はしていたように思うが、西日だけがさんさんとあたるし、客の足だけが外から丸見えという立地だったので、どうも入る気にならずにいてしまったのだった。で、駅のこちら側で蕎麦屋といえば、この2軒ぐらいだったから、1軒がつぶれれば、もう1軒に客が入りそうだと思いきや。
暖簾をくぐったら、客はひとりもいない。時間は夕方6時前。ご主人はテレビに見入り、女将は新聞を読みふけっていた。ねこやしきは食欲があるわけでも何でもないので、「ざる下さい」だけ言って、カウンターにかけた。客が入ってきた途端色めきたった2人が、ちっ安い客だ、ぐらいに思ったのが伝わってきた。だめだどう考えても蕎麦屋がつぶれるような場所にようやく立っている店だと、私は思った。リピーターになるかどうかは、ざる食べて決めるのだよ。ケーキだとチーズケーキ。アイスだとバニラ。体力落ちてるのもあって、そんなにかっかすることもなく、というか、気力が多分なくて、ぼーっと店の中を見回す。正面にある機械。どう考えたって臼ではない。何だあれは。初めて見る機械。でかい。その横に粉と思しき袋が見える。
女将がお茶を持ってくる。蕎麦茶だ。ご主人は蕎麦をどこかから取り出し、湯立っている大なべの中に入れた。ゆでること、多分1分はあった。その間につゆをつぐ。客が私しかいないので、丸見えである。おかみは蕎麦湯をつぐ。蕎麦がゆであがって、粗く水切りされたあと、ざるに盛られる。白い蕎麦だ。ざる480円也。蕎麦湯があるところからして、スーパーの100円蕎麦とはまあ違うんだろうからと期待はした。
つけ汁をまずなめる。かつおだしの濃い味。かつおの取り方がえげつない。これはほんとうにだしをとったのか、それともだしの素を使っているのか。だしの素の甘さではなくて、えげつなさがする。だしのとり方だな、これは。次に蕎麦。何もつけずに口に含む。味はない。1すべ、2すべ。だめだ。あきらめて、つけ汁につけて食べ始めた。きれいにつながっている麺。細い。白い。食感だけはよい。テレビは相変わらずがんがんかかっていて、イージス艦やら道路やらの話が聞こえる。そうして半分ほど食べた頃、何だか口の中に薫りがあるのに気づいた。蕎麦だ。遅い。で、残り半分を食べているときは、ほんとうに蕎麦を食べている気になった。おおと思ったら、途端にお腹が一杯になったのに気づいた。福岡の一心でもそうだったが、香りでむせるというか、香りでお腹が一杯になるのだ。でもここのは、えげつなくない、ひなびていない、それなりの蕎麦屋で楽しむ、あの薫りである。蕎麦湯はうまかった。
帰りに「あれは何ですか」とご主人に聞くと、蕎麦打ち機だと教えてくれた。「あんなの初めてみます。こちらは手打ちではないのですか」と聞くと、ご主人は困ったような顔をした。女将が代わりに「全部うちでやってますんで」と答えた。まあ、要するに粉を仕入れて、それを機械にかけて蕎麦を作っているということなんだろう。さっきの質問ですでにノックアウトの感があったので、さすがにそば粉の産地までは聞かなかった。480円でこれなら、まあ仕事帰りにへとへとになったときにちょろっと寄るにはよいと思った。ここは手打ちのKちよりも評価は高いなあ。値段が200円も違うのに、この差はなんなのだろう。不思議だ。
ここでは店の名前は出さない。仕事帰りに店の前を通ることもあって、ざるが480円なのに注目していたのだ。手打ちでこの値段というのはないが、しかし蕎麦屋と看板にはあるので、これは何だろうと思っていたのだ。ちなみに、200メートルほど離れたところにあった、もっと駅よりの蕎麦屋は先週閉店した。そこは確か手打ちと書いてあったような気がする。ざるが700円はしていたように思うが、西日だけがさんさんとあたるし、客の足だけが外から丸見えという立地だったので、どうも入る気にならずにいてしまったのだった。で、駅のこちら側で蕎麦屋といえば、この2軒ぐらいだったから、1軒がつぶれれば、もう1軒に客が入りそうだと思いきや。
暖簾をくぐったら、客はひとりもいない。時間は夕方6時前。ご主人はテレビに見入り、女将は新聞を読みふけっていた。ねこやしきは食欲があるわけでも何でもないので、「ざる下さい」だけ言って、カウンターにかけた。客が入ってきた途端色めきたった2人が、ちっ安い客だ、ぐらいに思ったのが伝わってきた。だめだどう考えても蕎麦屋がつぶれるような場所にようやく立っている店だと、私は思った。リピーターになるかどうかは、ざる食べて決めるのだよ。ケーキだとチーズケーキ。アイスだとバニラ。体力落ちてるのもあって、そんなにかっかすることもなく、というか、気力が多分なくて、ぼーっと店の中を見回す。正面にある機械。どう考えたって臼ではない。何だあれは。初めて見る機械。でかい。その横に粉と思しき袋が見える。
女将がお茶を持ってくる。蕎麦茶だ。ご主人は蕎麦をどこかから取り出し、湯立っている大なべの中に入れた。ゆでること、多分1分はあった。その間につゆをつぐ。客が私しかいないので、丸見えである。おかみは蕎麦湯をつぐ。蕎麦がゆであがって、粗く水切りされたあと、ざるに盛られる。白い蕎麦だ。ざる480円也。蕎麦湯があるところからして、スーパーの100円蕎麦とはまあ違うんだろうからと期待はした。
つけ汁をまずなめる。かつおだしの濃い味。かつおの取り方がえげつない。これはほんとうにだしをとったのか、それともだしの素を使っているのか。だしの素の甘さではなくて、えげつなさがする。だしのとり方だな、これは。次に蕎麦。何もつけずに口に含む。味はない。1すべ、2すべ。だめだ。あきらめて、つけ汁につけて食べ始めた。きれいにつながっている麺。細い。白い。食感だけはよい。テレビは相変わらずがんがんかかっていて、イージス艦やら道路やらの話が聞こえる。そうして半分ほど食べた頃、何だか口の中に薫りがあるのに気づいた。蕎麦だ。遅い。で、残り半分を食べているときは、ほんとうに蕎麦を食べている気になった。おおと思ったら、途端にお腹が一杯になったのに気づいた。福岡の一心でもそうだったが、香りでむせるというか、香りでお腹が一杯になるのだ。でもここのは、えげつなくない、ひなびていない、それなりの蕎麦屋で楽しむ、あの薫りである。蕎麦湯はうまかった。
帰りに「あれは何ですか」とご主人に聞くと、蕎麦打ち機だと教えてくれた。「あんなの初めてみます。こちらは手打ちではないのですか」と聞くと、ご主人は困ったような顔をした。女将が代わりに「全部うちでやってますんで」と答えた。まあ、要するに粉を仕入れて、それを機械にかけて蕎麦を作っているということなんだろう。さっきの質問ですでにノックアウトの感があったので、さすがにそば粉の産地までは聞かなかった。480円でこれなら、まあ仕事帰りにへとへとになったときにちょろっと寄るにはよいと思った。ここは手打ちのKちよりも評価は高いなあ。値段が200円も違うのに、この差はなんなのだろう。不思議だ。