ブラックアウト

数年前の話だ。

信号待ちをしていた時だった。
車の流れを何となく眺めて立っていたら、次の瞬間に空を眺めていた。

何が起きたか分らなかった。
どれくらいの時間が経過したのかも分からない。
とにかく、倒れていた。

「大丈夫ですか？」って声で起きた。

信号待ちしていた人が声を掛けてくれたのだ。
何がなんだか分からないけども、「すいません！大丈夫です！」と答えて、
すぐに起き上がって信号を渡ろうとしたら、声を掛けられた人に呼び止められた。

振り返るとヘッドフォンを持っていた。倒れた時に外れたのだろう。
それを拾ってくれた。
「ありがとうございます！」と言って、足早に信号を渡った。

ただ恥ずかしいという思いで。

歩いている時に脳をフル回転させた。
何が起きたのか？

きっと意識を失って倒れたのだろう。
貧血か？おそらくは酸欠の方だな。
歩いてる時も呼吸が苦しかったので。

酸欠で意識が飛んでしまった。
酸欠になる理由はあったので、病気ではないことに安心した。

マスクをしている状態だったので余計に苦しい。
そのまま駅に向かって電車に乗ったのだが、電車の中がとても辛かった。

呼吸が上手く出来ないような感じがするのと、
マスクの息苦しさで、意識がまた飛ぶような感じがした。

が、当時はコロナ全盛期だったのでマスクを外すというのも出来ない状況。
とりあえずは鼻だけマスクから出して、少しでも意識が飛ばないように集中した。

本当に限界だった。
あと1分か2分ぐらい電車に乗る時間が長かったら、意識が飛んでたと思う。
顔の血の気が引いていくのが分かった。
意識が飛ぶ寸前でドアが開いて、ホームに出た。

駅にあったベンチに座って、呼吸を整えた。
20分ぐらいは座ってたと思う。

初めて酸欠になったのだが、かなり危険な状況だ。
酸欠を甘く見てた。

マスクって意外と酸欠になるもんだね。