新・南大東島・沖縄の旅情・離島での生活・絶海の孤島では 2023年

2023年、11年振りに南大東島を再訪しました。その間、島の社会・生活がどのように変わっていったかを観察しました。

本祭・一般相撲 (2)

2023-04-29 19:38:37 | 旅行

  土俵脇には机が設置され、村長を始めとする役場の三役が陣取っていた。大相撲のロイヤルボックスのようなもので、取り組みを一番前で観戦できる特等席である。豊年祭の主催者は村役場であることから、三役が臨席する必要があるのではなかろうか。両国で開催される大相撲では、都知事が最優勝力士を表彰する慣習がある。南大東島でも同じように、村長が優勝選手を表彰するのかどうかは知りませんが。
  一般相撲の各取り組みでは、勝った選手に必ず賞品が渡されていた。賞品はいずれも大きな箱であり、行司が高々と掲げて選手に渡していた。控えの場所には、これから渡させる賞品がずらりと並べられていた。賞品の提供者は地元の企業や商店のようで、熨斗紙には提供した企業の名称が印刷されていた。それぞれの賞品は段ボール箱に入っていて、中身はトイレットペーパー、清涼飲料水、缶ビールなどの値段の割りに嵩が大きいものであった。箱が大きければ見栄えが良く、渡す方も受け取る方も「賞品」といった感じが出るからでしょう。溜まり場で待機している選手の横には勝ち取った賞品が積まれ、その日に獲得した賞品の数が一目で判る。
 一般相撲では賞品の他に「懸賞」も出されることがある。場内アナウンスで、「次の取り組みでは○○株式会社さまより金5万円の懸賞が出ます」と放送されることがある。すると、場内では「ウォー」という歓声が上がる。「待ってました」と言うような感じである。懸賞が出る取り組みは、その試合に出場する選手が務めている企業からのようで、自社の従業員への励ましのためではなかろうか。こうして、相撲場は盛り上がることになる。

 


本祭・一般相撲 (3)

2023-04-27 13:05:06 | 旅行

  土俵の周りには試合を進行する裏方が待機していた。選手の入場を案内する係、勝敗を記録する係、賞品を準備して行司に渡す係などである。一段目の写真は表彰状に氏名を記入する係の女性である。二段目の写真は優勝者の氏名が記入された賞状で、筆ペンによる書き入れでしたが、達筆な筆跡で書き込まれていた。
  会場入口には優勝廻しが飾られていた。廻しの下部には刺繍で、「南大東村豊年祭奉納相撲」と文字入れされ、図柄の右下には村章が描かれていた。この相撲大会が村を挙げての大事業であることを示しているようであった。また、相撲場の近くには、優勝を讃えるため、歴代優勝者の氏名を掲げた掲示板が設置されていた。江戸相撲は昭和32年以降、沖縄角力は昭和38年以降の優勝者の名札が嵌め込まれていた。不思議なことに、いずれの相撲でも平成30年の優勝者で記録が終わっていて、令和の時代の記録は見かけられなかった。掲示を忘れたのか、後でまとめて掲示するのかは不明であるが、なるべくなら最新の優勝者名も掲示して戴きたいと思うのですが。
 五段目の写真は、土俵に置かれた籠である。沖縄特産のクバの葉を編んで手提げの籠に加工し、中には清めの塩が盛られていた。本州の相撲場では、清めの塩は竹製の籠に盛られるのが通例である。この独特の籠を見ると、ここは沖縄なのだ、という実感が湧いてきた。

 


NHK・小さな旅

2023-04-25 16:53:06 | 旅行

 今回の豊年祭には、NHK沖縄放送局の取材班が来島していた。島のあちこちで住民を撮影する姿が見かけられた。聞いてみたら、毎週日曜日の午前8時に放映される「小さな旅」のための取材であった。撮影クルーは、ディレクター、カメラ、音響、照明の4名であり、豊年祭の前後2週間滞在して取材するのだそうである。民放であれば予算の関係でディレクターとカメラの2人で、2泊3日くらいの短時間で取材を終えるようだ。大人数で長期に取材するとは、資金力のあるNHKでしかできないこと。どのような内容に編集するかは教えてくれなかった、取材する前には大体の台本が出来ていて、その線に沿って撮影するはずなのだが、筋書きは絶対に教えない。取材の前に筋書きを教えてしまうと、被取材者の対応が変わってくるからだ。
 さて、「小さな旅」とは、日曜日の朝に「オニャーラオニャオニャ」と何とも間延びした音楽で始まる紀行番組である。1983年より始まったが、最初は首都6県が取材の対象であった。その後、取材エリアがどんどん広がり、現在は全国の地方(要するに、田舎町のことである)が取材の対象地域となっている。日頃は事件や目立った出来事も無く、テレビ番組では絶対に取り上げられないド田舎に出掛け、そこに住んでいる人達の生活や風習を紹介する番組と考えればよい。このため、取材する場所は農村漁村が大半で、聞いたことの無い町名、村名が出てくることもある。つまり、大きな事件が無かったので、今までどのマスコミも取り上げなかったような地方に光を当て、全国の聴取者に紹介する番組と言える。
 なぜ、このように地方を取材するのかと言えば、NHKの放送受信料にからんでくると思われる。現在、NHKは全視聴者から放送受信料を徴収することが困難となっている。大都会では、放送受信料を支払っているのは全世帯の半分以下ではないか、と囁かれている。しかし、人口の少ない地方では、ほぼ全ての世帯が放送受信料を支払っている。つまり、NHKの経営は、地方に住む人達の負担で成り立っているようなものである。こうしたことから、「小さな旅」は日頃からNHKに経済的な支援をして頂いている地方の住民へのサービスである、と考えて良いのではなかろうか。
 こうして豊年祭はNHKのクルーにより取材され、その映像は2023年10月22日の朝、「島づくりの心 つないで~沖縄県 南大東島」とタイトルして放映された。番組は、奉納相撲における親子相撲と島歌を伝承する民謡教室を軸として、島の人達が伝統をどのように承継していくかという内容であった。再放送される可能性は薄いが、現在、NHKオンデマンドで視聴することができる。視聴できる期限は2025年10月1日までとなっているため、ご覧になりたい方は今のうちでしょう。

 


演芸会・プログラム

2023-04-23 13:57:06 | 旅行

 2日間にわたって開催された豊年祭の締めくくりは、村民が出演する演芸会である。正式な名称は「豊年祭奉納演芸」である。本州の地方で開催される村祭(秋祭)では、境内で各種の演芸が行なわれていて、それを鑑賞するのが住民の楽しみとなっている所も多い。福島県の村歌舞伎、島根県や宮崎県の村神楽などがある。特に、福島県檜枝岐村で開催される村歌舞伎は著名で、多数の観光客が集まってくる。それら演芸は村の神様に捧げることから奉納歌舞伎、奉納神楽と呼ばれている。しかし、南大東島の演芸会は大東神社の境内ではなく、別の場所で開催されている。村役場が主催しているので、「村民親睦会」とか「演芸おさらい会」と称してもいいのだが、お祭の一環であることから奉納の文字を入れたのであろう。
 この日の演芸会は、2023年9月23日の午後6時15分から午後9時までの3時間強であった。少し涼しくなった、夏の夜のお楽しみである。
 別表は当日のプログラムで、演目には南大東島特有の拘りが見かけられた。南大東島は八丈島からの開拓者と沖縄本島などからの移住者により成り立っていて、大和文化と沖縄文化が混在している。このため、プログラムにはそれぞれの文化に影響を受けた演目がみかけられた。舞踊では日舞と琉舞が、太鼓演奏では大東太鼓と八丈太鼓がそれぞれ別々の演目となっていた。民謡については沖縄のものが多かったが、これも伝統的な沖縄民謡ではなく、大和文化が混じった沖縄民謡ではないかと思われた。
 ステージに立つのは、地元の民謡教室、三線教室の生徒や小中学生で、日頃の練習の成果を発表する場、といった雰囲気もあった。前回の旅行の時は、英会話の発表をする中学生も見かけられた。なお、カラオケによる演歌熱唱のような俗っぽい演目は無かった。カラオケならスナックでやってくれ、ということでしょう。

 


演芸会・会場と場所取り

2023-04-21 18:52:14 | 日記

 演芸会の会場は、村立ふるさと文化センター前の広場で、「ふれあい広場」と呼ばれている場所であった。広場は芝生で覆われ、その一角にはコンクリート造りで常設の屋外ステージが設置されていた。屋根はあるが壁が無く、吹きさらしである。島の日比谷野外音楽堂と言ったところであろうか。島では、年に何回か大きな行事があり、その行事にも利用されていて、この演芸会だけのために設置されたのではなさそうである。
 前回と今回の旅行では天候は快晴で、2回とも星空の下で演芸を鑑賞することができた。もし雨天になったらどうなるであろうか。多分、隣接する「地域スポーツセンター」で開催するのではないかと思われた。そこは床面積が1千7百平米あり、人工芝が敷かれた巨大な運動施設である。日頃はゲートボールなどに利用されているらしいが、もし雨天になった場合、この屋内運動場を利用するであろう。屋外の芝生の広場に比べると狭いが、多少混み合うのを我慢していただいて実施するのではなかろうか。この屋内運動場は村の人口に比べると立派過ぎるが、災害時には避難所として利用されるのではなかろうか。
 夕刻前の未だ日が明るい内から、芝生の上では場所取りが始まっていた。二段目の写真では、家族や知人のために先発がビニールシートを広げ、陣地を確保していた。丁度、春の花見の季節に、桜の木の下で宴会場所を確保しているような光景であった。
 三段目の写真は、演芸が始まる前に宴会が始まったグループである。演芸会が終了するまでには未だ3時間があり、その前に酒で出来上がってしまうのではないかと心配した。しかし、前夜も飲み会があり、連日の飲み会続きでは料理を作らなければならない家族の負担は大きいのではなかろうか。