風と光の北ドイツ通信/Wind und Licht Norddeutsch Info

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東(ひがし)洋(ひろし)FB詩集「輝く闇に反逆せよ」I

2025-02-16 03:10:30 | 日記
また、書き溜めた彷徨う青春の拾遺を曝け出す。ドイツでももう一年半が経つと、それもまた日常の日常が戻り、異国の街に溶け込んでいく中で私は最後に燃える反逆の炎を辛うじて見つけた。その灯りを手に捧げ、迷わされた輝く闇を暴く作業に取り掛かった。あまりにも安易な日常が私を不安にさせ、憎悪せよ、牙を剥け、馴致されることを断固として拒否せよ、と絶望の叫びをあげていた。それが救いだったのだ。

“ワンダ・マイヤー”

ネブラスカの小さな村に誕まれ、
銀色のポニーに乗り
白い雲と二匹の蟻を従え
負けない楽園に発った
優しかった幼稚園
ママの手を振り切って飛び出した小学校
初めてのボーイフレンドを招待した夜
影のように寂しいそうな両親に
“ママ、パパ!人生は楽しむものよ
苦しむものじゃないわ“
十歳の少女が哲学する
銀色のポニー“リンカーン”に乗り
小蟻のムッシュと見上げた自由の女神
白い雲が鮮やかすぎる青空を行進する
“OK、ムッシュ、リンカーン
ここでお別れよ、私はもう十五歳!“
いつも熱かったハイスクール
恋人と呼ぶには早すぎるかも知れない
それでも初めての夜泣きはしなかった
“人生なんてそんなものよ”
十八歳の娘が宙に舞う
“さあ、急がななきゃ、今まで早すぎた
ことが、これからは遅すぎる“
‘ワンダー!“と呼びかけた男に
一人の女にされた
珍しいことじゃないし、驚くことでもない
“だって、彼はとってもうまく口笛が吹けたんだもの”
悲しむよりは
楽しむことを考えよう
“人生なんてそんなものよ”

”ハンス・マグヌス・エンチェンスベルガーの捧ぐ詩“

いつでもいいから
思い出した時に
反逆と狼について
短い物語を作ってみてほしい
狼は
きっと一人でメタセコイヤの森よりは
中央アジアの草原を駆けているだろう
地平線に燃え移りそうな
赤金の夕陽に向かって
どこでもいいから
例えば
東京でもニューヨークでも
パリだってさしつかえないのだけれど
敵意に充ちた目を
赤さびた夕陽の前で
曇らせている少年がいたら
話しかけて欲しんだ
”君の反逆を安売りしないよう
狼と連帯したまえ“

“恐怖し、絵具をとれ”

越えなければならない
肩を怒らせ
眉間に力を込めて
試してみなければならない
裏が出るか
表が出るか
他人に根無し草と言われようと
恋人にカイショ無しと言われようと
未来に絵を描くことをやめて
真新しい絵具をとって
一筆一筆
塗り込めてゆくんだ
絵は完成されたものではない
完成するもの
未来は
夢見るものではなく
建設するもの
使い古しの絵具だっていいんだ
一秒一秒
自分の手で
自分の意思を塗り込めるんだ
絵は観賞するものではなく
描くもの
敗北の恐怖に慄く
自然を虚わる必要はない
恐怖し
そして
絵具をとるんだ

“明日が匂う”

花が咲く
ここかしこに
美しい花が咲く
昨日気づかなかった
娘の胸もとに
黄色い花が咲く
繊細に輝く花弁に
力強い意思を映し
黄色い花が
娘の胸もとに咲く
公園の
広場で
サッカーに興じる少年達
の中に
ただ一人の少女
金髪のポニーテイルを
紅いハチ巻きでなだめ
思い切り蹴ったボールが
春を越えて
夏に飛び込み
快活に
転げまわる公園の広場
昨日は思い切り走った
今日は思い切り蹴った
花が咲く
息づく土に手を触れ
指先についた小さな塊まりに
舌を触れ
花びらに顔を近づけ
世界を感じ
明日を匂う

“止まらない回転木馬”

うるさいと思うことが良くある
とりわけ煙
そして思い出
単純明快な美しさを犯す
それは
透明度の敵だ
台所のゴミ箱の臭いだって
愛することが出来るのに
彼らがそれを許さない
それが僕だから
それを知っているから
僕は絶望しない
見えないものより
見える物が恐い
知らないことより
知っていることが
僕を曖昧にする
だから
煙と思い出が
僕を希望させる
それが
僕にはうるさいことなのだ
絶望はできない
希望は信じられない
そして
僕はいつまでも
回転木馬に乗って
泣きながら
降りようとは思わないのだ

“尼崎”

初めて化学消毒した水を口にした日
むかつく亜硫酸ガスと交換した
故郷を吐き出した
校庭の端に蹲り
世界も
愛も知らなかった少年は
目に泪を浮かべ
瀕死の太陽を映した
兄さん!
故郷の山河を背負って
早朝のバス停に佇み
まさか
永遠にガラス張りの都市に
亡命を希望するなんて
弟よ!
都市の夜について
一通
手紙を書いてくれ
都市は今 酷寒
夜はありません
街灯が真昼のように
ああ 兄さん!
あなたはもう泥沼のような世界も
売僧の爽快な偽善も
知っているはず
都市の夜は
真昼のように明るく
ただ寂しいだけです
時折思い出したように街に出かけて
ニンゲンを恐怖する
立体交差する群衆の中で
ある時
飛び出しナイフを構えて
共同行為を哀願する
なにしろ
未熟者で
それに久し振りにの恐喝なので
娼婦一人
道連れにできなかった
尼崎は今日も少年を拒否して
スモッグの中にうっすらと沈んでいます

“反逆とはとっぽい”

血は?
真っ赤な反逆の血は?
おお 君!
反逆とは今どきとっぽい
血はない!
血は泣きながら漂泊された
君が書斎で
快心のラブレターを書きあげたとき
私は
愛を捨てたのだ

“正方形の竜巻”

公園にはいかないことにした
ガイコツどもの狂宴に招かれて
飽き飽きする程呆けてみたが
やっぱり
千年の巨樹に囲まれて
手淫する少年の方が
破れた心に
縫込むにしくはない
ややもすると
公園の野外音楽会が
あまりにも捩れているので
心!などと
つい口走ったりする
風伝えに
風を聞く
公園は
正方形の竜巻を駆り
揺れ続けている

“黙殺刑”

噂が立つ
あの人は気が狂っている
近づくと火傷をするような
熱い情!
人を憎む困難さを
おまえに説明したところで
私の決意に
漣が立つわけでもない
黙殺刑
刑場に響く
音を喪った地鳴りこそ
抑圧された
私の呻吟だと
円く
端正にたたずむ
色街のやりて婆に耳打ちする
“僕は声です”
聞こえますか僕が・・・
千キロを超えてなお白いハンカチを振る
あなたの車窓が
今こそ
今こそ
垂直に切り落ちた断崖の底へ
今こそ
あざやかに黒く
消えてゆかぬものかと
私は叫ぶ
私の内へ
黙殺刑!
それは
おまえが生涯をかけて償う
私からの判決だ

“発条仕掛けの微笑製造器”

微笑みが飛び込んできて
いきなり
僕の傍に膝を投げ出した
ああ なんと
無防備に
世界がこんなに病んでいるというのに
君の素朴は
世界を救えないことを
まるで知り尽くしているように
君の微笑みが清んでいる
“できるだけのことをやるの”
清冽な湧き水に
疲れた反逆の足を浸し
戯れに君の胸に触れたら
おお なんと
君の胸は大きく開き
発条仕掛けの
微笑製造器が
僕を嘲笑いながら
轟音をひびかせている
思わず駆け出した僕が
ついに嬉びのあまり
小さな石に躓き
腕で支えることなく
顔面を大地に叩きつけたこと
思いもよらぬことでは
今はない

“押し込められた時”

時を押し込めて
後手にドアを閉める
薄い溜息をもらす
四面、天井、床
全て文字盤で被いつくし
二百六十度の傲慢が
心地よく
打刻する
ふてくされ あぐらをかいて
押し込められた時が
世界史のパラドックスを
今さらながら嘲っている
お前!
お前を置いてきぼりにして
私が今
時の無い世界を
デジタル時計の伴を許し
新しい文明開化の波高く
深く
遠く
優しく旅行く
目指すはもちろん
世紀末に気のふれた
物持ち僕の
博覧会だ




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