リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

腸内細菌に食文化の多様性

2010-04-09 15:25:34 | たべる記
日本人の腸だけに存在?:海藻を消化する細菌(WIRED VISION) - goo ニュース

 藻類しかも紅藻類という限られた物質の分解について焦点を当てている。人間が栄養源とすることが可能な食物については「汎用的な」分解酵素を人類として共通に持っているだろうから、こういった民族に特異的な事例はみいだせないのだろう。

 この研究、米国在住の日本人を対象に行ったみたいだけど、紅藻をよく食べる日本海側 おきゅーといごねりえごいぎす文化圏と、他の地区とか、比較したら面白いだろうね。

☆テキスト版

日本人の腸だけに存在?:海藻を消化する細菌
WIRED VISION2010年4月9日(金)12:24

Brandon Keim

「海洋細菌の中で、藻細胞壁の分解を行なう酵素を特定した」とフランスのStation Biologique de Roscoff(ロスコフ海洋生物研究所)の生物学者、Mirjam Czjzek氏は述べている。「この酵素が見つかる他の場所は1つしかない。それは日本人の腸に見られる細菌の中だ」

科学雑誌『Nature』の4月7日号に掲載されたこの発見は、Roscoff研究所の生物学者 Jan-Hendrik Hehemann氏によるZobellia galactanivorans(ゾベリア・ガラクタニボランス:一般的な海洋細菌)の分析から始まったものだ。この研究の中でHehemann氏は、ポルフィランを分解する酵素を見つけた。ポルフィランとは、紅藻類の細胞壁で見つかった炭水化物だ。

この酵素をコード化する遺伝子は、他の場所で発見されていた――人間の腸で見つかった微生物、Bacteroides plebeius(バクテロイデス・プレビウス)のゲノムだ。だが、すべてのB. plebeius菌株が、藻を分解する酵素を生成するわけではない。そういった菌株は、日本人にしか見つかっていないのだ。

研究者たちによると、この酵素はZ. galactanivoransが紅藻類を食べるのを助けるという。紅藻類の中で西洋人にとって最もなじみが深いのは、巻き寿司の周りに巻かれている海苔だろう。[紅藻類は、セルロースと厚いゲル状多糖からなる細胞壁を持っており、これが海苔や寒天など、紅藻から作られる製品の原料となっている]

日本人の過去において、どこかの時点の誰かの腸で、この酵素をコード化する遺伝子が、Z. galactanivoransからB. plebeiusに入り込んだのだ。この幸運なB. plebeiusは、紅藻類を処理するという新しく得た能力を活用して腸環境に広がり、最終的には日本人の集団に広がって、彼らの海藻をたくさん食べる食事習慣から、さらに多くの栄養を得るようになったのだろう。

人間の腸内には無数の細菌がいて、彼らが生み出す消化酵素の利点を人間は得ていることは知られているが、「このような民族的な違いを示した研究はこれまでにないと思う」と、Emory大学の免疫学者Andrew Gewirtz氏は語っている。

ただし、この研究は18人の北米人しか対象にしていない[日本人では13人のうち5人がこうした腸内細菌を持っていたが、18人の北米人は持っていなかったという]。この腸内細菌が人の海藻の消化にどれほどの影響を与えているかについては測定されていない。また、海藻を食べない人の中でこの細菌がどうなるかについてもわかっていない。

「2年前から寿司を食べるようになったが、自分もこの酵素を持っているのだろうか、とよく聞かれる。その答えは、その可能性は非常に低いというものだ」と、Czjzek氏は語る。「昔は海藻は殺菌されていなかった。現代では海藻は、火を使って準備され料理されるので、こういった移転が起こる可能性はかなり低い」

この論文に対するコメントを書いたスタンフォード大学の微生物学者、Justin Sonnenburg氏は、「現代の先進国では、非常に衛生的になり、大量生産され、加工度が上がり、カロリーも高い食品を食べている。これは、環境における腸内細菌の遺伝子プールが減少するなかで、個々人の腸内細菌群がどれだけ適応できるかをテストしているようなものだ」と述べている。

一方で、食事がグローバル化したことによって、人々は、それまで食べていなかったような食物を食べる機会を得ている。「次に知らない物を口にするときは、一緒に摂取するかもしれない微生物のことを考えてほしい。最も親しい10兆の友人[腸内細菌]の1人に、新しい食器を提供することになるかもしれない」とSonnenburg氏は述べている。

参考論文: “Transfer of carbohydrate-active enzymes from marine bacteria to Japanese gut microbiota.” By Jan-Hendrik Hehemann, Gaelle Correc, Tristan Barbeyron, William Helbert, Mirjam Czjzek, & Gurvan Michel. Nature, Vol. 464 No. 7290, April 8, 2010.

“Genetic pot luck.” By Justin L. Sonnenburg. Nature, Vol. 464 No. 7290, April 8, 2010.

WIRED NEWS 原文(English)

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ナショナルジオグラフィック

 ☆テキスト版
日本人の腸はノリの消化に最適
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト2010 年4月9日(金)13:55

日本人の腸はノリの消化に最適
(Photograph by Natalie B. Fobes, National Geographic Stock)
 最新の研究によると、はるか昔から海藻を食べる習慣を持つ日本人の腸内細菌から、ある海洋微生物の遺伝子が発見された。この遺伝子の性質を考えると、日本人の腸がノリ(海苔)の消化に適していることになるという。

 ゾベリア・ガラクタニボランス(Zobellia galactanivorans)という海洋微生物は通常、アマノリ属の海藻を栄養源としている。寿司を始め日本料理で広く使われるノリもアマノリ属の一種である。

 研究チームは、この微生物がアマノリ属の海藻に豊富に含まれる炭水化物を分解する際に使う酵素を究明するために調査を進めていた。グリコシドヒドロラーゼと呼ばれるこの酵素の遺伝子の配列を突き止めたとき、思いがけない事実が浮かび上がった。この海洋微生物の遺伝子が日本人の腸に共生する細菌のものと一致したのだ。日本人の被験者13人と北米に住む被験者18人の腸内細菌の遺伝子を比較したところ、海洋微生物に由来する遺伝子は日本人の腸内からしか発見されなかった。

 海藻は、長い間日本人の食文化に欠かせないものとされてきた。8世紀の文献には、海藻を税として納めることが認められていたという記録も残っている。現在でも日本人は1人あたり毎日14.2グラムの海藻を食べているという。

 寿司のように海藻を使った料理を食べることを通して、長期間かつ習慣的に海洋微生物を摂取することで、腸内に数兆個が住むとされる細菌の一種が海藻を消化する遺伝子を取り入れることができたと研究チームは考えている。

 日本人の腸内細菌は海洋由来の酵素に恵まれたために、例えばアメリカ人の腸内細菌には抽出できない微量のエネルギーを海藻から抽出することができる可能性もある。しかし研究チームによれば、そのエネルギーは宿主である人間のためというよりは、細菌自身の栄養となっている可能性が高いようだ。

 今回の発見は、人間の腸内細菌に体外の細菌の遺伝子が取り込まれたことが初めて確認された例でもある。さらに、「私たち人間が周囲の生態系と予想よりも密接に関わっていること、そして細菌レベルにおいてさえも生物の多様性に大きく依存していることを示している」と、研究の共著者でカナダにあるビクトリア大学の糖鎖生物学者ヤン・ヘンドリク・ヘヘマン氏は話す。

 今後、現代の狩猟採集民族の腸内細菌、さらには人間の排泄物の化石についても調査すれば、地域固有の食物嗜好が長い年月をかけて腸内細菌にどのような変化をもたらしたか、そして人類の進化にどのように影響したかについての理解が進むだろうとヘヘマン氏は語っている。

 今回の腸内細菌の遺伝子に関する研究は、2010年4月8日発行の「Nature」誌に掲載されている。

Charles Q. Choi for National Geographic News
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