リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第78回 追加された魚道 せせらぎ魚道 長良川河口堰

2018-04-08 18:50:00 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

工事が開始された後の長良川河口堰。川を知る魚類学者の証言から追加で設置された「せせらぎ魚道」が大きく機能することになった。もし「せせらぎ魚道」がなかったなら、長良川河口堰の影響はさらに大きくなっただろう。水野信彦先生についてです。

後付けの魚道

「早瀬式の、中流域の早瀬に似せたような魚道をあそこに設置するのが一番いいんじゃないかというふうに思うんです。」

 1991年11月25日、第122回国会、参議院環境特別委員会。水野信彦教授(愛媛大学当時)は、長良川河口堰にどんな魚道が適しているかという質問についてそう証言した。

河口堰の建設は88年7月に始まった。その時点で、両岸に「呼び水式魚道」と「ロック(閘門)式魚道」を各一基設置する計画だった。参院委員会の議事録をみるとこれら二種類の魚道の有効性について議論されているから、「早瀬のような魚道」はこの証言以降に計画されたということだ。

呼び水式魚道とロック式魚道。河口堰の建設に先立つこと25年前に実施された「木曽三川河口資源調査(KST)」。64年から5年間発行された報告書をみると、三年目にすでに二種類の魚道の項目がある。

水野教授は、呼び水式などの階段状の魚道は「一様な流れ、一様な水深」であること、対して自然な川を模した「水路式魚道」は水深、流速に多様性があり、流量が変化しても生物は自分の体力に合わせた流れを選ぶことが出来ると証言している。「水路式魚道」は「せせらぎ魚道」として右岸側に設置された。

河口堰運用開始後5年となる2000年。私は建設省(当時)が公開した魚道のデータを分析して学会誌に発表した。この時、魚道を流れる水量について河口堰管理所に問い合わせたのだが、意外な事実を知る。せせらぎ魚道は、河口堰と一体となって管理されているのだが、水資源公団(当時の)に属する施設ではなく、建設省の管轄だという。

川を知る魚類学者の証言がきっかけで、河口堰建設中途から追加された「せせらぎ魚道」。多様な水深、流速をもつ自然の川を模した魚道は、アユの遡上数も多く、アユ以外の多くの生き物にとっても大切な通り道として機能している。

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