川の町 郡上八幡には川から飛び込みをする少年少女がいる。彼らに引き継がれて来た「川との決め事」があった。最初の原稿は話をお聞きしたお母さんの視点 で書きました。でも彼女からダメ出し。されて、大人一般としての視点からの文章に変えました。 初稿の方ができが良いのです。
郡上踊りで知られる郡上市八幡町。町の中心を長良川の支流吉田川が流れる川の町でもある。はじめて町を訪れた人はたぶん驚くことになるだろう。町なかの橋から、子供らが10m近い川へ飛び込むのを目にするからだ。
大人が監視しているわけではない。危険はないのか。
「川には暗黙の決め事があるんよ。」
郡上八幡に生まれ育ち、橋から飛んだことのある大人たちはそう言う。
学校橋から飛び込むには、橋の下の、三角岩から始める。低いところから飛び、徐々に高いとこから飛ぶ。子供らは互いに、あの場所は危ない、など飛び方を注意しあうのだという。
「自分で判断するんや」三角岩から飛べるようになったら、学校橋から飛ぶ。
小学校4年位から吉田川の岩から飛び、毎年繰り返して高学年で橋から飛び込めるようになる。学校橋は町で二番目の高さ、学校橋で自信がついたら、いよいよ町の中心にある新橋からの飛びこみだ。
一人で川に行く子供が心配ではないのか。
「心配やで。川は生きとるでな」大人たちは川は毎年同じではないことを知っている。出水があると川底の石が動き、深さや流れが変化する。今年できたあの渦は危ない。あそこは浅くなっている。川を大人たちは見ているのだという。
「どこの子が、どこで遊んどったか。みんなが見とる」
すこし水かさが増しても川の様子は変わる。大人は、川を見て、子供と川の話をする。経験を伝えることで、子供の川をみる目が育まれる。そして、今日は水が高いから川に行かないなどの判断も、子供が自らするようになるのだ。
吉田川が有名になり、観光客が水難事故を起こすこともあるが、地元の子供たちは何十年も死亡事故を起こしたことはないという。
「この町にいて、川に行くな、は死ねと同じや」川の町が世代を超えて、守ってきた川との決め事があった。
(魚類生態写真家)
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