今年のサツキマス漁はいつ始まるのか。
それは、毎年この季節になるとボクの最大の関心事となる。五月、まさにサツキの季節だが、ボクの時間割はサツキマス漁によって動き始めるからだ。
サツキマス漁は、時期が来たから始まるというものでない。また、そのときにすぐに始められるというものでもない。
その前に漁師さんには、過酷な労働が待っている。河床のゴミ掃除である。
長良川の河口から38kmの漁場には上流から様々なものが流れてくる。それは、空き缶1ヶであっても、網が引っかかるとサツキマスはたちまち逃げる。
大きなものは100kgを超えるような切り株が、河床の埋まっている。そんなものを、船上からノコギリで挽き、船上に持ち上げ、岸まで運ぶのだ。
掃除の終盤には、試験的に網を流す。どこか、不具合がないのか、その場所を見るためだが、そのときにもサツキマスは掛かる。でも、漁師さんはそんなマスの漁獲を漁の開始とはしていなかった。
彼らはサツキマス漁の漁師なのだった。
1本、2本のマスで生計を立てているわけではない、ボクが現認した限りでも、一月弱の漁期で1000匹近くを採補する、長良の大漁師だった。
ただ、ここ2,3年というもの、一番最初の漁に立ち会うという、幸運な時に出会えないでいる。つまり、漁師さんが今日から漁をすると宣言して(といってもボクに対してだが)それから最初にサツキマスを採る瞬間に会えない、ということだ。
いつから漁が始まるのか、毎晩電話して聞くのはつらいものだ。もし、漁があれば、真っ先に電話をくれる。そういった関係を続けてきた。
こちらから電話するでね。そう聞いて、待っていたが、待ちかねて、電話をした。5月4日のことである。
どうですか、とボク。
もう。マスが捕れて、捕れてまってしようがありません。 大橋亮一さんがいった。
そんな、具合ですか。 あー。今年もだめなんだなぁ。たぶんそう感じたボクの気持ちが伝わってしまったようで。亮一さんが言った。
毎日(漁に)でとるよ。こまいのがちょこちょこ揚がっとる。まー、今日は仕舞いだで…。
時間は午後8時。この時間に漁を終えると言うことは、捕れていないということでもあった。
とりあえず、明日 伺います。 そう言ってボクは電話を切った。
翌、5月5日。
夜の漁場に向かった。午後8時を過ぎ、船着き場に二人の姿は無かった。
今日は漁があったのかもしれない。しばらくして、下流から明かりが上ってきた。ボクは船に乗せてもらおうと、カメラやらの用意をして待つことにした。
あんたも、熱心やなぁ。暗闇から声がして二人が帰ってきた。
あかん、今日はおしまい。
夕方、3回流して、1匹だけだという。
ニイムラさんに持たせてやれ、大橋修さんがそう言った。
今年、5匹目のサツキマス。そして、一番大きなマスだと、修さんは言った。
それは、毎年この季節になるとボクの最大の関心事となる。五月、まさにサツキの季節だが、ボクの時間割はサツキマス漁によって動き始めるからだ。
サツキマス漁は、時期が来たから始まるというものでない。また、そのときにすぐに始められるというものでもない。
その前に漁師さんには、過酷な労働が待っている。河床のゴミ掃除である。
長良川の河口から38kmの漁場には上流から様々なものが流れてくる。それは、空き缶1ヶであっても、網が引っかかるとサツキマスはたちまち逃げる。
大きなものは100kgを超えるような切り株が、河床の埋まっている。そんなものを、船上からノコギリで挽き、船上に持ち上げ、岸まで運ぶのだ。
掃除の終盤には、試験的に網を流す。どこか、不具合がないのか、その場所を見るためだが、そのときにもサツキマスは掛かる。でも、漁師さんはそんなマスの漁獲を漁の開始とはしていなかった。
彼らはサツキマス漁の漁師なのだった。
1本、2本のマスで生計を立てているわけではない、ボクが現認した限りでも、一月弱の漁期で1000匹近くを採補する、長良の大漁師だった。
ただ、ここ2,3年というもの、一番最初の漁に立ち会うという、幸運な時に出会えないでいる。つまり、漁師さんが今日から漁をすると宣言して(といってもボクに対してだが)それから最初にサツキマスを採る瞬間に会えない、ということだ。
いつから漁が始まるのか、毎晩電話して聞くのはつらいものだ。もし、漁があれば、真っ先に電話をくれる。そういった関係を続けてきた。
こちらから電話するでね。そう聞いて、待っていたが、待ちかねて、電話をした。5月4日のことである。
どうですか、とボク。
もう。マスが捕れて、捕れてまってしようがありません。 大橋亮一さんがいった。
そんな、具合ですか。 あー。今年もだめなんだなぁ。たぶんそう感じたボクの気持ちが伝わってしまったようで。亮一さんが言った。
毎日(漁に)でとるよ。こまいのがちょこちょこ揚がっとる。まー、今日は仕舞いだで…。
時間は午後8時。この時間に漁を終えると言うことは、捕れていないということでもあった。
とりあえず、明日 伺います。 そう言ってボクは電話を切った。
翌、5月5日。
夜の漁場に向かった。午後8時を過ぎ、船着き場に二人の姿は無かった。
今日は漁があったのかもしれない。しばらくして、下流から明かりが上ってきた。ボクは船に乗せてもらおうと、カメラやらの用意をして待つことにした。
あんたも、熱心やなぁ。暗闇から声がして二人が帰ってきた。
あかん、今日はおしまい。
夕方、3回流して、1匹だけだという。
ニイムラさんに持たせてやれ、大橋修さんがそう言った。
今年、5匹目のサツキマス。そして、一番大きなマスだと、修さんは言った。
申し訳ありません。
今年は、長良川に注力するつもりです。