リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

メコンオオナマズは生き残れるか?本流ダム建設が進むメコン川の未来

2010-11-26 12:00:58 | メコン川研究所(メコンの目改題)

こちらで話します

 

 

 

メコンオオナマズは生き残れるか?本流ダム建設が進むメコン川の未来 

フォトエコロジスト 新村安雄 

 

     世界で一番豊かな魚の川 

メコン川はチベット高原を源流とする総延長4425km(4023kmという説も)、インドシナ半島の6ヶ国(+チベット)を流れる国際河川です。流路延長では世界第10位。流域面積では世界最大のアマゾン川の十分の1に過ぎません。ところが、世界最大の生物多様性をもち流域におよそ2000種の魚類が生息するというアマゾン川についで1200種類以上もの魚類が生息しています。そして、メコン川を特徴付けているのは流域に暮らす数千万の人々が、魚類などメコン川の豊かな自然の恵みを受けて生活しています。

     建設が進む本流ダム

メコン川の流域ではこの十年の間に、少なくとも1068種類、2008年わずか1年間で163種もの動植物の新種が発見されたと世界自然保護基金(WWF)は報告しています。一週間に2種の新しい動植物が発見されているということは、もちろんメコン河流域の豊かさ=生物多様性を示しています。しかしながら新たに発見された動植物は、ダム建設を目的に行われた生物調査によるという現実があります。

メコン川の支流にはすでに多くのダムが建設されてきましたが、国際河川であるメコン川の本流にダムは建設されてきませんでした。しかし、上流に位置する中国でのダム建設に続くように、今、メコン川本流では多くのダムが建設され、また計画が進められようとしています。

     メコンのおさかな回廊 フーサホン

メコン川では雨季と乾季では大きく川の水位が変動します。それに伴って、雨季には下流に、乾季となると上流へと多くの魚たちが移動をします。メコン川ではこの大きな魚の移動経路が上流から3つの地域に分かれるといわれています。主に中国に属する上流部分を除いて、下流側の2つの地域が分かれているのは、その場所でメコン川は大きく「折れ曲がっている」つまり、大きな滝によって落差が生じていることが理由の一つです。

ラオス国内、カンボジアと国境を接するこの地域は、4000を越えるという島(川中島)が連なり、メコン川を数え切れない流れ(分流)に分けています。その流れにはそれぞれ落差があり、大小の滝となって流れ落ちて下流で再び一本のメコン川となります。

 

その数え切れなく分かれた中の、たった1本の流れが今日紹介するフーサホンです。

ラオス語でフーというのは、水路、分流という意味、サホンというのはその水路に面した島の名前です。落差がほとんど無いフーサホンはまさに「魚たちの回廊(かいろう)」、自然が創り出した「天然魚道」です。この「回廊」によって、魚たちは産卵する場所に移動し、また生息の場所を広げ、おおきく成長して豊かなメコン川を形作ってきました。しかし、このフーサホンにもダムが計画されています。

もしダムが完成すると、メコン川を移動する魚たちが通ることが出来るほとんど唯一といえる回廊が無くなってしまいます。そして、広くメコン川の上下流域を生息の場所としているメコンオオナマズにとっては、まさしく、生存の危機が迫っています。

昨年私は、まさにダム建設計画の場所で、メコンオオナマズと出会いました。

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